宋美玄のママライフ実況中継
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18時に帰る――オランダの家族から学ぶ、幸せになる働き方
息子が、生後1歳6か月にして、ついにはっきりと言葉を発しました。その言葉は、「パパ」でした。初めて娘が言葉を発したのは生後9か月で、「ママ」だったのに……。息子には、毎日「ママだよ」と繰り返し話しかけているのだけれど、今のところ「ママ」と言う気配はありません。
昨年11月、一般財団法人「1more Baby応援団」の調査団の1人として、オランダに行ってきました。私も評議員を務める財団は、家計の見通しや年齢などもろもろの環境を考えると2人目の出産をためらってしまう「2人目の壁」を、多くの人が乗り越えられるよう活動しています。調査団は全11日間の滞在中、約50の施設や会社、それに家庭を訪問し、その内容を「18時に帰る」(1more Baby応援団著、プレジデント社刊)にまとめました。オランダが「世界一子供が幸せな国」と言われる理由が伝わると思います。
日本でも近年、「働き方改革」が注目されていますが、オランダでは以前より仕事を分け合うワークシェアリングをはじめ、自ら働き方を選ぶシステムができています。子育てをはじめとする様々な理由でパートタイム勤務を選んでも、キャリアが積めるようになっています。
また、日本では何時間働いたかが評価されるため、時短勤務の人がいくら効率的に成果を出してもフルタイムの人より軽んじられてしまう、という風潮があると聞きます。しかし、オランダでは勤務時間よりも生産性が重視されます。皆が納得しないような無駄な会議は開けません。さらに、働く場所や時間を問わない、主に在宅勤務の「テレワーク」は、最近日本でも注目され始めていますが、オランダではすでに業界を問わず発達しており、社員全員分の席が会社にないことも、珍しくないそうです。
オランダ式の働き方の詳しい内容は、膨大な取材を基にまとめられた本を読んでいただけるとわかると思います。私が一番日本と違うと感じたのは、オランダの人たちが家族との時間を最も大切に生活をしているということでした。
家族で食卓を囲みたい。だから18時に帰る。18時に帰るためには、どう効率よく働けばいいか。そういった考えが根底にあっての「働くシステム」でした。
日本でもこれまでにサマータイムや、今年始まったプレムアムフライデーなど、早く仕事を終えて帰る働きかけが試みられていますが、残念ながらあまりうまくいっている様子が感じられません。オランダからは、システムだけでなく、仕事や人生についての価値観など学ぶべきものは多いと思います、ぜひ読んでみてください。
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プロセスの見直しと政治家や市民の理解
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二年前の麻酔科学会のメモを発見しました。
帝王切開の出血多量患者の術前検査の止血の値の低さや麻酔の種類の傾向が指摘されています。(さらなる検証が必要ですが、重症リスクのスクリーニングに応用可能かも。)
さて、5月31日、6月1日と読売新聞に無痛分娩の関連記事があり、また、台湾での第三者の卵子の提供の記事もありました。
文化や宗教とのすり合わせもあって、働き方や医療オプションの多様性もなかなか難しいものがありますが、高度な医療技術は日本が先進国であり続けるための生命線の一つなので、そのための学習効率や業務効率および組織の在り方の見直しは大事です。
長時間労働者の優遇は容認としても、今後予測されるテロや大災害のためにも、本来は「余力」が必要です。
そのへんも含めて、経済特区や混合診療の運用が進むのかもしれません。
ところで、トータルフットボールの話は医療と関連性があります。
世界と日本のサッカーのトップレベルの違いは全体の業務プロセスの違いです。
身体のサイズや筋力、決定力や判断の速さと正確さが一般顧客向けの新聞記事ではよく書かれますが、そもそも、DFと呼ばれる後衛選手の狙っていることや技術のベースの部分から大きく違います。
だから、マニアから見ると、ボールや人の流れが全然違う場合もあります。
目に見える瞬間の前から思考や実行プロセスの違いがあるからです。
同様に、一人前の医者や充実した医療チームの定義とは何で、その構成要員とゴールは何か、動線も含めて見直しされていくでしょう。
産科救急、脳卒中、急性冠症候群など、ハイリスク群のキャッチから搬送時間の短縮に繋げていくことは大事です。
おのずと、多くの人の住む場所の医療体制の充実とそうでない地域の連携は大事になります。
スポンサーである政治家や一般市民の理解まで含めて医療ですから、難解なのはサッカーにも似ています。
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ヨハン・クライフと現代サッカーと医療の解
寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受
オランダと言えば、ヨハン・クライフというオランダとバルセロナの神様が有名です。 彼が提唱したトータル・フットボールは、ポジションを守る仕組みと対...
オランダと言えば、ヨハン・クライフというオランダとバルセロナの神様が有名です。
彼が提唱したトータル・フットボールは、ポジションを守る仕組みと対立しながらも融合し、彼の孫弟子世代で世界を席巻しています。
往年のライバルのドイツ皇帝ベッケンバウワーの所属したバイエルン・ミュンヘンが彼の愛弟子グアルディウラを監督に呼んだほどです。
医療に通じる名言も多く、ぜひ、お子さんに読み聞かせながら学んでいただきたいと思います。
「近年、試合中に最も多くの距離を走った攻撃陣の選手が賞賛される傾向にあるが、私のサッカー観とは相反している。中略、攻撃陣の選手が走り回り、体力を消耗することは重要な局面での瞬間的なひらめきや、判断力がにぶり、チームに悪影響をおよぼすことに繋がる」
さて、日本には古来よりの文化や伝統があります。
太平洋戦争からの月月火水木金金、長時間労働の伝統があり、新潟の看護助手からたたき上げの女性後期研修医の過労死事件も最近ありました。
(「よくある話で、適性がなかっただけ」とかいうバカも目にします。自分の子供や友達が死んでも言えるのでしょうか?)
文化や習慣は一朝一夕では変わりませんが、学ぶことは異文化を理解し、取り入れていくことであり、住み分けを知る事であります。
自分は初期研修で自分のタフネスの無さや医療への興味の無さ、高度のサッカーを知りたい思いに気付き、大学院を消極的に選びました。
(興味がなくても、プロ意識で、医療内外の勉強はしましたが。)
一日押しかけ留学で知りましたが、欧米の放射線科では、24時間カバーのための早番や遅番などの勤務シフトなんかもありますが、日本では存在しません。
意識も古く、人員も減った外科系はもっと大変でしょう。
他の分野や海外が絶対ではありませんが、それを見て何を考えるかが問われていると思います。
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