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コウノドリ先生 いのちの話

からだコラム

[コウノドリ先生 いのちの話]病後も夢を持ち続けて

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 「トム・ソーヤーの冒険」の著者、マーク・トウェーンは「夢を ててはいけない。夢がなくても、この世にとどまることはできるが、それは死んだも同然だ」という名言を残しています。

 最近、「AYA世代のがんサバイバー」という言葉をよく耳にします。15~39歳の若年期にがんを患い、その後を生き延びた人、という意味です。サバイバーのお産に立ち会うたび、苦境を越えて命のバトンが次世代に渡されたのだと、いまだに感動します。

 近年の治療法の進歩で、多くのがんで再発などの兆候のない「寛解」に導ける事例が増えました。「命さえ助かればよい」という認識から、「どう体の機能を温存するか」「社会復帰し、また働けるように」という方向に変化しています。

 治った後の人生の方が長いAYA世代の女性には、病を体験していない同世代の人たちと同様に就学、就職、結婚といった人生の夢を持ち続けてほしい。そんな思いで私も他の診療科と連携し、より良い治療方針を検討しています。

 化学療法や放射線治療を行うと、細胞分裂が盛んな卵子を生み出す細胞とがん細胞を区別せず攻撃してしまいます。その結果、例えば白血病などで造血幹細胞移植を受けた女性の8割超、抗がん剤治療を経験した若年性乳がん患者の1~2割が卵巣機能不全になります。

 一方で、生殖機能の温存のため、化学療法中にホルモン治療で卵巣を眠らせる方法、凍結受精卵の保存、卵子や卵巣そのものを保存する試みも始まっています。

 ひと昔前は「がんは治ったが患者は死んだ」と風刺されました。がんが治る病気になりつつある今、医師もマーク・トウェーンの言葉を肝に銘じ、病後に希望を抱く患者さんとともに闘っていかねばと思います。

 (りんくう総合医療センター産婦人科部長、荻田和秀)

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