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働き盛りなのに、がん判明…子どもにどう伝えるべきか

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働き盛りなのに、がん判明…子どもにどう伝えるべきか

 働き盛りでがんが判明。仕事や子どもの将来で不安だらけなのに、相談相手はいない――。そんな経験をした男性が昨年4月、インターネット上に悩みを共にする仲間が集まれる場を作った。試行錯誤で始めた取り組みは、孤独だった患者たちの受け皿となり、1年あまりで会員は900人を超えた。(森井雄一)

子を持つがん患者らのサイトで情報交換

 東京都の会社員、西口洋平さん(37)が胆管がんと告げられたのは2015年2月だった。最も進行した段階の「ステージ4」。頭の中が真っ白になった。なんとか事態をのみ込み、落ちついてくると、家族や仕事のことで不安が募った。

 「妻や娘とはどう向き合えばいいの?」「治療費はどうなるの?」「仕事は続けられるかな。そもそも会社にどう伝えるの?」

 分からないことだらけだった。相談できる人を探そうと患者会に顔を出しても、年配の人ばかりで同世代は見かけない。抗がん剤治療を続けながら仕事に復帰したが、病気について気軽に話せる相手はいなかった。

 「こんな孤独な思いで闘病しているのは、自分だけではないはず」。経験を基に、同世代の患者同士が気軽に情報交換できる場としてネット上に開設したコミュニティーサイトが「キャンサーペアレンツ」だ。

 このサイトを通じて、患者が孤独から抜け出し、前向きになってくれたらいい。患者の置かれた現実をもっと知ってもらいたい。西口さんが「最後の仕事」と位置付けて取り組む姿は、電子書籍の漫画「晴れ ときどき末期がん」で紹介されている。売り上げの一部は、会の活動費に充てられる。

 同世代の患者にとって大きな悩みの一つが、子どもにどう伝えるかだった。そこで、昨年12月には、調査会社と協力して会員にアンケートをした。

「伝えて後悔なし」

 30~60歳代の男女133人の回答を見ると、73%にあたる97人は子どもに告げており、84人は「伝えてよかった」と答えていた。伝えたことの是非に悩んでいる人はいるが、後悔している人はいなかった。

 子どもへの対応に男女で差があることもわかった。伝え方や時期について、男性の方が苦労しているようだ。自らも一人娘(8)に伝えられなかった西口さんは「やはり男性の方がコミュニケーションがうまくない。仕事以外でのつながりが少なく、孤独になりやすいのも特徴で、男性目線の悩みを解決するのも重要だ」と語る。

 東京都の自営業の男性(44)も、こうした活動に救われた一人だ。今年1月に大腸がんが判明。すでに肺や肝臓にも転移していた。入院中にスマホで検索するのはがんのことばかり。体験談を読み進めると、最後に健康食品の案内が出てくることもあり、「何を信じていいか分からなかった」。

 そんな中でキャンサーペアレンツに出合い、共感した。「だんらんの最中にも、急に病気のことが頭に浮かんで家族と距離を感じ、つらくなることがあった。そんなとき、同じ境遇の人たちのコメントは素直に受け入れられた」と話す。

 サイトを見ると、30~40歳代が多いことに気づく。仲間がこんなにいるんだと知るだけでもホッとする。不安は尽きないが、間違いなく気持ちは楽になった。

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