副鼻腔炎で嗅覚低下?
66歳の妹が昨年7月末に風邪を引きました。風邪は治ったのですが8月初頭からにおいを感じなくなり、味もわからなくなりました。耳鼻咽喉科で副鼻腔炎と診断され、治療を受けていますが回復しません。味覚、嗅覚は元には戻らないのでしょうか。(77歳男性)
細菌性か好酸球性か、異なる治療法
石井 正則 JCHO東京新宿メディカルセンター 耳鼻咽喉科診療部長(東京都新宿区)
嗅覚と味覚は全く別の神経の働きですが、互いに脳の中で関連づけをしています。例えばコーヒーを飲んだとき、脳の中でコクのあるにおいと苦味がリンクします。嗅覚が低下するとこの関連が薄れ、味覚が低下したような感じになります。
嗅覚低下が副鼻腔炎で起きた場合は診断が大切になります。コンピューター断層撮影法(CT)で副鼻腔に粘膜の腫れや粘液がたまっているかが検査できます。これで 膿 性鼻汁が見つかれば細菌性の慢性副鼻腔炎です。治療はマクロライド系抗生剤の少量長期療法、嗅覚低下には漢方薬の長期内服療法があります。
最近、 喘息 と合併する特殊な副鼻腔炎が増えてきています。好酸球性副鼻腔炎と呼ばれ、嗅覚低下の多いことが知られています。嗅神経のそばの 篩骨洞 という空洞に炎症が起こり、嗅覚が低下するのです。
これによる嗅覚低下は、ステロイド薬の内服が効果的ですが、長期間の内服による副作用に問題があります。さらにムチンという粘液が副鼻腔にこびりついて病変を悪化させます。
内視鏡下鼻内手術療法は細菌性でも好酸球性でも副鼻腔を一つの空洞にするのが目的です。術後に自分で鼻洗浄ができ、副鼻腔にたまった細菌やムチンや好酸球を洗い流せます。
一度、鼻の専門的な治療を行っている病院を受診してみるとよいと思います。