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血管は若返る!…生活習慣・食生活を改善、健康寿命を延ばす

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 日本人の死因の上位10位のうち、心臓病や脳卒中など四つの病気に関わるのが血管だ。BS日テレ「深層ニュース」では、心身の健康につながる“血管力”の向上を推奨する循環器専門医の池谷敏郎・東京医科大学客員講師に、血管の若々しさを保つ 秘訣(ひけつ) や、血管の状態を知る簡単チェック法について聞いた。

(構成 読売新聞専門委員・松井正)

ストレスにさらされる血管

 全身に栄養を送るという重要な役割を担う血管は、「最大の臓器」とも呼ばれます。季節の変わり目の寒暖の差や、生活環境の変化といったストレスは、どんな負担を血管に与えるのでしょうか?

 人は「寒い」と思った瞬間、自律神経の交感神経が緊張します。交感神経は車で言えばアクセルのようなもので、血管がギュッと締まって血圧が上がったところに、心臓が強く血液を押し出すので、血管の負担が大きくなります。天気が崩れる前の気圧の変化も、交感神経を緊張させますので、注意が必要です。

 寒い時にはそれなりに血圧に注意しますが、春などは寝る時に暖かいので、油断すると、朝に思わぬ冷えを感じます。その刺激が血管をいじめるのです。血圧も天候と同じように変動し、血管のストレスになります。

 一方、環境の変化も血管に影響します。環境が変わると、夜の睡眠が浅くなったり、寝るのが遅くなったりします。すると、次の日の血圧が10から20、ひどい人は40ほども上がってしまいます。

 血管の不調が原因で起きる主な病気としては、以下のようなものがあります。

図1 BS日テレ「深層NEWS」より

図1 BS日テレ「深層NEWS」より

 血管が詰まったり破れたりする病気が多く、人体は全て血管で養われているため、血管がトラブルを起こすと、これだけ多くの病気を引き起こすのです。

図2 BS日テレ「深層NEWS」より

図2 BS日テレ「深層NEWS」より

 私は血管の不調を予防するキーワードとして、「血管力」という言葉を使っています。血管力とは、まずは血管のしなやかさ。それから、血管の内側が滑らかであること。例えば、動脈硬化でコブができるような傷つきやすい状態ではないことです。血流がスムーズに流れる状態を、「血管力がある状態」と私は呼んでいます。

セルフチェックで血管を知る

 血管を開いて見るわけにはいかないので、血管の状態を知るために、セルフチェックとして8項目を用意しました。ぜひご自分でも、チェックしていただきたいと思います。

図3 BS日テレ「深層NEWS」より

図3 BS日テレ「深層NEWS」より

 8項目のうち一つでも当てはまれば、血管力低下の可能性があります。三つから五つあれば、低下の可能性はかなり高く、六つ以上の人は、完全に低下していると考えていいでしょう。

 セルフチェック項目の3番目に、「満腹になるまで食べないと気がすまない」というものがあります。こういう人は早食いが多く、お (なか) いっぱいになったと思った時には、既に食べ過ぎてしまっています。内臓脂肪をためこむメタボリック・シンドロームを引き起こしやすく、血管力を低下させやすいので、注意してほしいですね。

 また、5番目には「完璧主義で、負けず嫌い」という項目がありますが、こういう人は常に交感神経が緊張しがちで、「タイプA」と呼ばれます。血液型ではありませんが、この行動パターンの人は脳血管疾患を起こしやすく、血管力が弱りやすいといわれています。

 一方、8番目では親や兄弟について聞いています。「三つ子の魂」と言うように、親と同じような食習慣や喫煙習慣、また遺伝的なものも、血管力に影響する可能性があると思います。

 また、これに加えるべき要素があります。喫煙の有無と、健康診断で高血圧や糖尿病、またコレステロールや中性脂肪値が高い「脂質異常症」と診断された方は、3点を加える必要があります。

図4 BS日テレ「深層NEWS」より

図4 BS日テレ「深層NEWS」より

血管で何が起きている?

  (けい) 動脈のエコー検査を使えば、血管を見ることはできます。下の画像は、左側が正常な血管で、中を血液が流れています。上下が血管の壁で、ここに動脈硬化が起きると、血管力が低下して右の画像のようになります。

図5 BS日テレ「深層NEWS」より

図5 BS日テレ「深層NEWS」より

 血管に傷がついたりすると、悪玉コレステロールなどがたまって、プラークというコブになります。これが大きくなる前でも、交感神経の緊張で血圧が上がると傷がつくのです。コブに血栓という血の塊ができて血管が詰まったり、血栓が流れてもっと先の細い血管に詰まったりします。これが脳に起きれば脳梗塞を引き起こし、心臓を養う冠状動脈で起きれば心筋梗塞ということになります。

血管は若返る!

 血管にコブができてゴツゴツしたり、血管壁が厚くなる過程で硬くなったりすると、血管力は低下してしまう。でも実は、一度老化した血管年齢も、若返ることがわかっています。硬くなった血管が、生活習慣を改めることでしなやかさを取り戻し、内側にできたコブも、治療で小さくなることがあるのです。

 大事なのは、コブに傷がつきにくい状態にすること。コブを小籠包に例えると、薄皮で中が脂ぎっていて、破れて事故を起こしやすい。それを、肉まんのような破れにくい状態に変えればよいのです。悪い生活習慣を正せば、肉まんのように皮が厚く、中の脂身が少ないコブに変化するのです。

 自分でできることは、まずはチェックが入った項目を改善すること。「日頃、歩くことが少ない」に当てはまる人は、歩くようにする。お腹が気になる人は少しやせていただき、満腹になるまで食べないと気が済まないなら、少し食べ方を遅くして量を減らし、腹八分目を心がける。まずはこんなことから始めてほしいと思います。

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