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リハビリ重視で病床減へ…進む高齢化 2025年の構想

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リハビリ重視で病床減へ…進む高齢化2025年の構想

 団塊の世代が全員75歳以上になる2025年に向けて、医療と介護の提供体制の見直しが始まった。手術患者らが入る急性期のベッドを減らし、高齢化で需要が増えるリハビリテーションや在宅医療の充実を図る方向だ。見直しの成否は、各地域の医療機関の話し合い次第で、その行方が注目される。

 25年の75歳以上の高齢者数は2179万人、人口に占める割合は18・1%に達すると推計されている。15年より533万人増え、医療や介護サービスは必要な量や内容が大きく変わる。

 このため都道府県は、医療の需要見通しを示す「地域医療構想」を定め、25年に必要な入院ベッド数(病床数)を推計。それに基づき、各地域の医療関係者が病床の削減などに取り組むことになった。構想は医療法で策定が義務づけられており、3月末までに全ての都道府県で出そろった。

 構想を基に読売新聞が集計したところ、25年に必要な病床数は全国で119万799床。現状(15年)の133万床から約14万床(10・5%)減らすことになる。都道府県別では、鹿児島、富山など7県の減少率が3割を超える一方、高齢者が大幅に増える東京、大阪などの6都府県は病床を増やす方向だ。

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 機能別の病床の構成も変える必要がある。現在、救急や手術後の患者が使う急性期(高度急性期を含む)の病床は6割を占めるが、これらの病床は4割強となる。入院費が高額な急性期の病床を減らすことは、医療費の抑制にもつながる。リハビリなどで使う回復期のベッドは現状から3倍に増やす。

 手厚い医療を継続的に必要としない患者は必要な治療が終われば、自宅や介護施設に移ってもらう。このため、自宅に医師が往診する在宅医療や介護サービスの充実が欠かせない。

 「病床の削減ありきでは患者は不安になる。住民の声もしっかり反映させて構想を進めてほしい」

 「患者の声を医療政策に反映させるあり方協議会」代表世話人の長谷川三枝子さんは指摘する。

 今後は、地域の特性を考慮して都道府県が設定した全国に341ある構想区域ごとに定期的に会議を開き、具体策を決める。ベッドの増減数や、急性期病床から回復期への転換などについて、病院関係者や医師会、市町村の担当者らが話し合い、病院間で調整することが想定されている。

 ただ、病院にとって病床の削減や転換は収入減につながるとの懸念は根強い。学習院大学教授の鈴木亘さん(医療経済学)は「地元医師会の反発などが予想される。関係者同士の自主的な話し合いだけに期待して、病床再編を進めるのは至難の業だ」と指摘する。

 話し合いが進まない場合は、都道府県知事が調整に乗り出す仕組みで、過剰な機能への転換を止めたり、不足する機能への転換を促したりする。ただ、国公立病院など公的医療機関には命令ができるが、民間病院には要請にとどまる。構想通りに調整できるかは不透明だ。

 鈴木さんは「調整を受け入れて病床の削減や転換を行えば、病院にとって経済的にプラスになるなどの仕組みを作り、国は病床の再編を後押しするべきだ」と話している。

 (西原和紀)

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