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麻木久仁子の明日は明日の風が吹く

医療・健康・介護のコラム

健康考える「お年頃」、薬膳を学び資格取得

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私、いま『麻木久仁子の美彩薬膳講座』という薬膳を教える講座を持っています

現在、東京都新宿区にある祐成陽子クッキングアートセミナーで、月1回、「麻木久仁子の美彩薬膳講座」を開いています

 ここ数年、健康について考えさせられる出来事が続きました。

 自分自身は6年前に脳梗塞を、4年前に乳がんを経験し、母親も心臓病を患いました。がんの治療にせよ心臓病の治療にせよ、自分たちの身に降りかかって初めて気づかされることや知ることが多かったと思います。

 常々思うのは、医療は日々進歩しているということです。まだまだ人類が克服できない病はたくさんありますが、かつてなら救えなかった人を治せたり、余命を延ばせたりするようになっています。自分や家族が病気になることで、誰もが等しく医療の恩恵を受けられる国民皆保険制度のありがたさも身にしみました。体のあちこちに大小さまざまな不具合が表れてくるのも、そんな「お年頃」になったということかもしれません。

50歳代で食生活を見直し

 病気の経験を経て50歳代に入り、見直したのが食生活です。若い頃はとにかく仕事と子育てで忙しく、食事にしても座る時間さえも惜しんで立ったまま飲み込むように済ませることもありました。

 育ち盛りの子供のおなかを満たすために揚げ物などボリュームのあるものや肉料理を作り、残った分は私の胃の中へ。何をどう食べるのかなどについては、ほとんど意識していませんでした。

 年齢的な節目に差し掛かったところで、少し食生活を見直し、もっと体をいたわろうと思い立ちました。母との同居も、食事を見直すきっかけになりました。心臓に人工弁が入っている母は、血圧や体重の管理をお医者さまから指導されていました。私自身も、何も考えずにただ食べているという習慣をやめ、もっと食事の内容を意識しようと思ったのです。

 そう思って見渡すと、世の中にはさまざまな食養生法があります。カロリー制限、糖質制限、健康長寿を目指す食事療法のマクロビオティック、徹底した菜食を貫くビーガン、豆やごま、わかめ(海藻類)などの日本の伝統的な食材を積極的に取る「まごわやさしい」――。実践している友人の話を聞いたり、本を読んだりすると、それぞれに理論はありますが、とにかく体に良い食事が大切だという熱意は伝わってきました。

何でも食べられるのが魅力

 さて、私は何をしようか、ずぼらな自分でも続くのはどれかしらと思った時に目にとまったのが「薬膳」でした。薬膳には「食べてはいけないもの」がなかったのです。食事は、日々の営みで、延々と続きます。一生糖質を制限したり、肉を食べられなかったりするストイックな方法を続ける自信はないなと思っていた私にとって、何でも食べられることは魅力的でした。

 よし!とばかりに早速薬膳専門の学校の門をたたき、教えを受けることにしました。

 薬膳では、強弱はあれども、どんな食材でも、体に対して何らかの効果(良いものも悪いものも含め)があると考えます。それを、一人一人の体質や季節などを考慮して組み合わせるのが基本です。「自分の体と対話する」という考えが、自分にはとてもしっくりきました。

 季節の変化に合わせて、寒い冬は体を温め、暑い夏には体を冷ますものを食べる。体力が落ちている時には、負担の少ない (かゆ) やスープを食べる。できるだけ常温のものを腹八分目に食べる。おだやかに、自然に生きる――これが養生の基本です。学べば学ぶほど面白く、1年間学んだ後、昨年の春、国際薬膳師という資格をとりました。

「未病」のうちに養生

 薬膳の基本は、中国の伝統哲学を元に発達してきた中医学で、未病、つまりまだ病気ではない段階で、できるだけ病にならないように養生するのが目的です。でも、残念ながら、どんなに気をつけても病気になってしまうことはあるのです。今の時代なら、その時は西洋医学で治療することが大切でしょう。

 中医学も、西洋医学も、「人がよく生きるために医学が何をできるか」を追求しています。両方の考えを生かしながら、自分でできることをしていきたいなあと思うのです。――自分のためにも家族のためにも。

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asagi

麻木久仁子(あさぎ・くにこ)
 1962年、東京都生まれ。学習院大学法学部中退。テレビ、ラジオ番組で司会者、コメンテーターとして活躍するほか、読書家としても知られ、本の紹介サイトHONZや新聞で書評を書いている。2010年に脳梗塞を発症。12年には両胸に発症した初期の乳がんの手術を受け、現在もホルモン療法中。講演会や取材などで闘病体験や検診の大切さを伝えている。2016年には国際薬膳師の資格を取得した。

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