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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

障害者基準から「視野」を除いた結果、せっかくの福祉サービス制度が台無しに

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障害者基準から「視野」を除いた結果、せっかくの福祉サービス制度が台無しに

 「目の障害」は社会からも医療からも軽視されている。

 これが、私がものを書いて一般の人たちへ伝えたいと思う、きっかけとなった感慨です。

 病気やけがなどで、片手の親指と人さし指が欠けてしまった人は、身体障害者福祉法では4級となります。それに対し、どちらかの目が失明していて、良いほうの目は矯正して(一番良く見えるレンズで見て)0.1であれば、これも同法律では4級です。

 もし、あなたが会社の人事部で、障害者枠でどちらかの方を採用するとしたら、どちらの方を採るでしょうか。もちろん、その他の能力は同等であり、人格も円満であるとします。会社でいかなる仕事をするかということにも、多少関係はするかもしれませんが、ほとんどの人は視覚障害者より、片手の肢体不自由の障害者を採用すると言うでしょう。

 このことだけをみても、視覚障害が日本社会において、不当に軽く扱われていることを、如実に表しているといえないでしょうか。

 米国の視覚障害の基準は国際基準として推奨されているものです。これは、視力と視野という主たる視機能評価を別々にしてそれぞれを判定するという日本の方式と違い、どちらもスコア化して統合するという方法です。視機能の二つの主たる属性のいずれも同時に考慮して判定するという意味で、大変合理的だといえます。

 つまり視力に偏った方式や視野に偏った評価法は、真に日常視機能を反映しているとはいえません。

 このように、視力の基準と視野の基準のどちらかが重く評価されることは、明らかに不合理ですが、実際そのことが、福祉サービスが利用できない原因となった事例が私の患者さんにありました。

 彼女は都内に在住する30歳代の女性で、網膜色素変性による視野異常のために、視覚障害2級を有しており、児童を養育しています。

 東京都には「児童育成手当」や「ひとり親家庭等医療費助成制度」という独自のすばらしい制度があります。

 前者では父または母が死亡した児童を筆頭に、9項の支給対象者があり、その2番目に「父または母が重度の障害を有する児童」(身体障害者手帳1級・2級程度)とホームページに記載されています。後者はもともと一人親家庭の児童の母または父への医療費助成制度ですが、この方が在住する区での基準は拡大されていて、「父または母に重度の障害がある」場合にも助成されます。

 彼女は、この二つともに該当するので、申請したのです。

 ところが、いずれも却下されてしまいました。却下理由を見ると、視覚障害は視力によるものとこの制度を決めた条例に書かれていることを挙げ、本例では視野にて2級になっているので条例に該当しないということでした。

 国の法律で決められている障害者基準から、都や区は、この制度運用に限って「視野」を除いてしまったのです。ダブルスタンダードであり、国の法律を勝手に曲げたともとれます。さらには、とうきょう福祉ナビゲーションのホームページには(身体障害者手帳1級・2級程度)と明記されていることから、看板にいつわりありです。

 不服申し立てをしましたが、再度却下されたそうです。

 せっかくの温かいすばらしい制度が、これでは患者さんに冷たい仕打ちをしているようなもので、どうにも納得がいく話ではありませんでした。(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。北里大学医学部客員教授、日本神経眼科学会理事長などを兼務し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ、副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」(春秋社)、「健康は眼に聞け」(同)、「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、医療小説「高津川 日本初の女性眼科医 右田アサ」(青志社)、「茅花流しの診療所」(同)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・執筆活動のほか、NPO法人などのボランティア活動に取り組む。

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