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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

合理的な視覚障害の認定基準があるのに…時代遅れの法律に固執する矛盾

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合理的な視覚障害の認定基準があるのに…時代遅れの法律に固執する矛盾

 現在、視覚障害の認定基準に関する検討が厚労省で行われています。根拠となる法律は1949年(昭和24年)にできた、身体障害者福祉法だから、70年近く前の法律です。

 この間、医学の進歩も著しく、人々の身体障害や障害者に対する考え方や、取り巻く環境も劇的に変化しています。にもかかわらず、今回の検討会も、法律自体は変えないで認定基準をさわっていこうとするのですから、無理なところが出てくるのも当然でしょう。

 そもそも、法律が実践的裏付けなしに、視力と視野の評価だけで視覚障害を決めているところに大きな問題が存在します。

 1949年の、当初の法律では視力だけが対象でしたが、やがて視野も基準に入りました。ただし、視野においての中心感度の低下(中心暗点という用語は、ゴールドマン視野計での用語として残っているが、同義ではない)は、視力に反映されるから問題にしなくてよいと考えてきたことが、矛盾点として今も残っています。

 つまり、視力が中等度低下、視野も中心感度は低下しているものの、それは判定基準に入らないから、不自由さは認定された視覚障害者と同等かそれ以上になのに、障害者手帳がもらえないケースがかなりの数、出てしまうのです。

 これを、もし国際的にも推奨されている、米国の機能的視覚スコア(FVS)を利用すれば、視力と視野の判定基準がうまく統合されているので、救われることになります。

検討会ではこの基準を合理的であると評価しながらも、身体障害者福祉法では視覚障害と他の身体障害とを重複認定して障害等級を上げることができる法律となっているため、視覚障害だけを国際基準にするために判定方法を変更することは困難としています。

 視野については、日本の判定基準と大幅に異なるため、「両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの」「両眼による視野の二分の一以上が欠けているもの」という法律の条文を削除変更しないといけない、つまり法律を変えないとできないという観点から「事実上導入できない」と結論しています。

 しかし、FVSでは視力、視野には含められない内容の視覚障害については、15点の範囲で最終スコアから引き算できるオプションがあり、両眼視機能、色覚障害、 様々な理由での眼球使用困難 などが考慮される余地があり、明らかに日本の基準より実践的で、合理性が高いと思われます。

 今回の検討会では、日本盲人会連合の参考人の要望として、「現行制度の 狭間(はざま) にある視覚障害者の救済」が述べられおり、それには、「片目を失明した者をはじめ、 (まぶ) しさ、 眼瞼(がんけん) 下垂、眼瞼 痙攣(けいれん) など」を含めています。

 さらに当日の配布資料には、上記の眼球使用困難症についてのヨミドクターのコラム原稿コピーがついていましたが、これについての発言は一切なく、机上にはあったが、検討からは無視された形でした。次回検討会では、正面から検討していただきたいと思います。(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」、「健康は眼に聞け」「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、医療小説「茅花流しの診療所」(同)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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