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認知症、災害への備え…アルツハイマー国際会議

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地域・施設で支え合い

認知症、災害への備え…アルツハイマー国際会議

国際会議では、熊本地震や東日本大震災の経験を報告するポスター発表も行われた(京都市で)

 4月下旬に京都市で開かれた「第32回国際アルツハイマー病協会国際会議」では、テーマの一つに「認知症と災害」が取り上げられた。自治体や地域社会、介護施設などにも、過去の災害を教訓にした備えが求められている。

 2004年以来2度目の日本開催となった国際会議では、東日本大震災や熊本地震の時に認知症の人が置かれた状況が報告され、各国からの参加者が災害時の認知症の人への対応について意見を交換した。

 スピーチした東京都健康長寿医療センターの粟田主一研究部長は、東日本大震災時、認知症疾患医療センターに指定されていた仙台市立病院で治療にあたった経験を語った。避難所で大声を出したり 徘徊はいかい したりしてトラブルとなり、家族と車中生活をせざるを得なかったケース、介護に疲れた家族に虐待され、救急搬送されたケースもあったという。

 粟田研究部長は「認知症の人は環境の変化に敏感で、避難所で状態が悪化しやすい。在宅でも、電気などライフラインが途絶えれば、一人で暮らすのは難しい。認知症支援を含めた防災計画や福祉避難所の整備はもちろん、地域の人の協力が欠かせない。日頃から顔の見える関係にあることが大切だ」と話した。

 国際アルツハイマー病協会は、大地震があった日本やパキスタンなどの経験をもとに、行政や介護職に向けた災害時の行動指針を、年内にもまとめる方針だ。

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  ■震災を教訓に

 震災を教訓に、すでに備えを進めている地域もある。

 横浜市のグループホーム「そまやまの里」のホーム長、塚田明人さんは、「一人暮らしなどで心配な人がいれば、災害時には受け入れたい。そのときは連れてきてほしいと、日頃から民生委員らに伝えている」と話す。

 東日本大震災後は、地域で避難訓練が行われるときには、入居者らとともに参加するようにした。ホームで行う訓練には、地区の老人会や婦人会のメンバーなどが参加し、入居者の避難を手伝っている。また、ホームの備蓄食料は、近隣住民用を想定して1割ほど増やした。

 このほか、芋煮会などのイベントや講習会に、地域住民を招くなど、つきあいを深めている。塚田さんは「普段のつきあいの積み重ねが大切。一方的に『助けてください』ではなく、地域に対してできることをしていきたい」と話す。

 こうした例がある一方、一般的にグループホームは小規模なところが多く、単独で十分な備えをすることが難しい実情がある。そのため、日本認知症グループホーム協会理事の佐々木勝則さんは、「他の事業所と協力関係を作ることも重要だ」と指摘する。

 実際に東日本大震災では、被災したグループホームの入所者が、別のグループホームで避難生活を送った例があった。佐々木さんが勤める社会福祉法人「桜井の里福祉会」(新潟県弥彦村)は、近隣のグループホームなどと協力し、互いに職員を派遣し合う交流研修を続けている。

避難所「3日が限界」…東北3県調査

 避難所では、認知症の人に対する配慮が課題となる。

 認知症介護研究・研修仙台センター(仙台市)が、宮城、岩手、福島3県の避難所へ支援に入った介護事業所などに対し、2012年に行った調査では、認知症の人が避難所で生活できる日数について、7割が「1~3日」と答えた。長くいられない理由には、「(本人が)イライラして落ち着かない」「周囲の苦情」などが挙がった。

 センターは調査結果をもとに、「個室や間仕切りで専用スペースを確保する」「顔見知りの人が近くにいる」など、認知症の人が避難所で生活するために必要な工夫をまとめたガイドブックを作成し、自治体や保健所などに配布している。

 東京都青梅市の「認知症家族の会 青梅ネット」は13年、市防災課の職員を招いて勉強会を開催し、避難所で使う仮設トイレを実際に見て調べたり、福祉避難所の整備などについて要望を出したりした。今後も定期的に開く予定だ。

 代表の長谷川正さんは、「仮設トイレは狭くて介助者が入れず、認知症の高齢者にはとても使えないことなど、勉強会で初めてわかったことがたくさんある。当事者ももっと情報収集し、主体的に備えていくべきだ」と話している。

 (小沼聖実)

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