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介護・シニア
話に耳傾けて充実感…孤独や不安、謙虚に受け止め
相手に寄り添い、話に耳を傾ける「 傾聴ボランティア 」として活動する高齢者が目立つようになった。人生経験を生かせて、自分も充実感を得られることが魅力になっている。専門家は「高齢化が進むことにより、傾聴の役割は今後も大きくなる」と話す。
「お話を聴かせていただいてもよろしいですか」。さいたま市の
折茂さんは、同市シルバー人材センターの傾聴ボランティアグループ「あゆみ」のメンバーで、4年前から参加している。「いろんな話を聴けて楽しいし、『また来てね』と言われるとうれしいですね」と話す。
あゆみで事務局を務める太田順治さんによると、現在、60歳以上の男女約320人が登録し、高齢者施設や個人宅を定期的に訪れて、話を聴く活動を続けている。特別な資格は必要ないが、あゆみのメンバーは全員、シルバー人材センターが開催している40時間の養成講座を受講している。「家族の介護などをきっかけに、傾聴ボランティアに関心を持つ人も多い」と太田さん。
ただ、相手の話にじっくりと耳を傾けることは案外難しい。全国各地で傾聴ボランティアの養成講座を開いているNPO法人「ホールファミリーケア協会」(東京)事務局長の山田豊吉さんは、「傾聴は話し相手になることではない。話をじっと聴きながら共感を示し、相手の孤独感や不安を和らげ、心の整理を促すことが目標。漫然と耳を傾けるだけでは十分に役割を果たせない」と指摘する。
桜美林大教授の長田久雄さん(老年心理学)によると、まず重要なのは、寝たきりや認知症の人であっても相手を尊重すること。話す内容について「正しい」「正しくない」と評価しない。相手を否定せず、聴くことに徹する。
また、「きっと大丈夫ですよ」「元気を出してくださいね」などと安易に励まさない。根拠のない慰めは逆効果になることもあるからだ。同じ話を繰り返す人もいるが、相手のプライドを傷つけないよう、丁寧に対応する。
傾聴は、ボランティアを行う高齢者側にも良い効果がある。仲間ができるほか、社会に貢献しているという充実感も得られる。
ボランティアの希望者はまず、ホールファミリーケア協会などの民間団体や、社会福祉協議会が各地で開いている養成講座に参加するのがお勧め。講座の卒業生らがグループを作り、活動していることも多い。
長田さんは「高齢者同士ならば、生きてきた時代背景が理解できるので共感しやすい。今後一人暮らしの高齢者が増えることも予想され、『聴いてほしい』という需要は今後も高まるだろう」と話す。
傾聴ボランティア 独居の高齢者や認知症の人らを訪ねて、話をじっくりと聴き、相手の心を癒やす活動。米国で高齢者に対するカウンセリングの一種として考案され、約20年前に日本にも導入、広がってきた。
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