初めての介護
連載
[初めての介護](1)まずは相談→自治体に申請
認定の調査へ家庭訪問
ある日、突然直面するのが介護だ。親や配偶者、自分に支えが必要になった時、どうすればいいのか。いざというときに慌てないよう、基本的な知識は身に付けておきたい。新連載「初めての介護」の第1回は、介護サービスを受けたいときの相談先や、手続きの仕方などをまとめた。
■地域包括支援センター
「自宅で暮らすことが難しくなった親のために、介護施設に申し込みをしたいがどうすればいい?」「足腰が弱くなったので、家に手すりを付けたいが、補助を受けられる制度はないのか」。東京都武蔵野市の桜堤ケアハウス地域包括支援センターには、こうした電話が月50件ほど寄せられる。
家族や自分に介護が必要になった際、まず相談するといいのが、こうした地域包括支援センターだ。厚生労働省によると、2015年度で全国に約4700か所ある。介護保険の制度や介護サービスの内容に詳しい主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)に加え、保健師、社会福祉士といった専門職が配置され、介護に限らず幅広く相談に乗ってくれる。
自治体による直営型と委託型があり、桜堤ケアハウス地域包括支援センターは、市の委託で社会福祉法人武蔵野が運営している。3月末までセンター長を務めた桜堤ケアハウス施設長の村田学さん(51)は、「地域包括支援センターは、助けが必要な人を、適切な支援機関につなげる交通整理役。土日に開いているところも多く、平日は仕事をしている人も利用しやすい。気軽に訪ねてほしい」と話す。
■主治医が意見書
特別養護老人ホームへの入所や、ヘルパーによる訪問介護などの介護保険サービスは、住んでいる自治体が必要と認めた人が受けられる。利用したいときは、地域包括支援センターを通して、自治体に申請することができる。直接、自治体の窓口へ行ってもいい。
サービスを受けるための申請書には、主治医の名前などを記入する欄がある。主治医が書く意見書は、その人にどの程度の介護が必要かを、自治体が判定するための判断材料となる。普段から通院しているかかりつけ医がいれば、その名前を書けばよい。いないときは、同センターなどで紹介してもらえる。
■暮らしぶり把握
申請すると、認定調査員が自宅などにやってくる。身体機能や認知機能などの74項目について、実際に本人に動いてもらったり、聞き取りをしたりして調べる。
この際に大切なのが、家族の同席だ。例えば、排せつがうまくいかず本人が言いたがらない場合や、記憶力などの低下があり、うまく伝えられない場合などがあるからだ。状態を正確に伝えないと、必要な介護サービスが受けられず、自立した暮らしを続けられなくなる恐れがある。
都内で数多くの認定調査を手掛けている東京都介護支援専門員研究協議会の井上研一理事(67)は、「一日の過ごし方を尋ねれば、大体のことはわかる」と話す。例えば、「朝は自分でベッドから起き上がることができるか」「食事は自分で口に運べるか」――などだ。井上さんは、「認定調査には、本人の暮らしぶりを把握している人が立ち会うのが望ましい」と助言する。
■判定受け利用
訪問調査の結果は、まずコンピューターで分析される。さらに、医療や福祉などの専門家による介護認定審査会が、この分析結果や主治医の意見書などを基に総合的に検討。介護が必要ないとされる「自立」、「要支援1、2」、「要介護1~5」のうち、本人がどの段階に該当するかを判定する。
結果は申請から1か月程度で本人に通知され、その後はケアマネと相談しながら、事業者と個別に契約を結び、サービスを受ける。判定結果に納得できない場合は都道府県に不服の申し立てをすることもできる。
サービス利用496万人
介護保険は、家族だけでなく社会全体で高齢者の介護を担う仕組みとして、2000年度にスタートした制度だ。原則65歳以上が介護サービスを使えるが、がんや認知症など、特定の病気の人の場合、40~64歳でも利用できる。利用者は16年4月現在で、496万人。高齢化の進展で、00年度から約3倍に増えた。
費用の自己負担は原則1割で、収入の多い一部の人は2割。介護サービスには、訪問介護や通所介護などの居宅型と、特別養護老人ホームなどの施設型などがある。認知症の人に入居者を限定した施設もある。
(板垣茂良)
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