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虹色百話~性的マイノリティーへの招待

yomiDr.記事アーカイブ

第79話 子どもを育てる同性カップルたち

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同性カップルの養育里親が投げかけるもう一つの問題

 本件はもう一つ、同性カップルも「ふうふ」であり「家族」であると公的に承認していく点で、貴重な問題提起をしてくれています(ご本人たちの思いとは別に)。

 日本は事実婚に関する法理が世界的にも発達している国で、法律上の登録(いわゆる入籍)がなくても事実上の夫婦関係が保護され、いくつかの法律にも反映されています。それが同性間でも適用されるのか? この連載でもいくつか紹介してきました。

 たとえば、千葉市役所で介護休暇の取得を同性パートナーにも認めた件( 第63話 )や、犯罪被害者への親族給付金を、同性パートナーが申請した件( 第70話 )、不法滞在となった同性パートナーの在留特別許可を求めている件( 第77話 )です。

 こうして一つ一つ、同性パートナーが法制度のなかで事実婚パートナーに当たるのかどうかが確かめられつつある現在、養育里親においてもそれが肯定された事実は、極めて大きな一歩であると私には思えるのです。

子どもをもちたいという思いと現状

 養育里親の件は、社会的な養護を同性カップルも担おうと手を挙げた例ですが、一方で、同性カップルが自ら子どもをもとうとする動きもあります。

 まず、すでに子育てをしている同性カップルは少なくありません。前の結婚で異性の配偶者との間にできた子どもを、現在の同性パートナーとともに育てるという「連れ子」型です。母子家庭にもう一人、どこか気風のいい女性が同居していたり、双方に連れ子がいて母子家庭が2組同居しているように見えたり……。レズビアンたちは何とか愛と子育てを両立させて生きてきたようです。ゲイの場合、私の知人に、息子にカミングアウトしているゲイ男性と住み始めたゲイがいました。残念ながらこの3人暮らしは長くは続かなかったようですが、同様の家族は他にもいるかもしれません。

 同性カップルで養子を取りたいという声がありますが、未成年者を養子にするには家庭裁判所の許可が必要で、その判断は予想がつきません。パートナーの連れ子と養子縁組する場合、実親の親権が養親に移ることにもなります。赤ちゃんポストなどで話題になる、6歳未満の子を実子として育てる特別養子縁組は、民法に配偶者とともに行うことの規定があり、同性カップルには壁が高そうです。

 すでに生まれている子を共同で育てることにとどまらず、近年、女性カップルが知人ゲイなどの協力で私的な人工授精で子どもを作るケースを聞くようになりました。日本では産んだ女性と子どもとの母子関係は証明されますが、母親のパートナーの女性や精子提供者の男性との法的関係はどうするのか、法律に携わる身としては気になります。「子どもと会わない」とか「認知はしない」という旨の書面を精子提供者と交わしたり、逆に共に子育てをしたりするなど、関係はまちまちのようです。相手の法的立場をはっきりさせるための委任契約や、実母に万一のことがあった時にはパートナーを未成年後見人に指定するとする遺言など、第三者にも効力のある書面を作成するのが大事です。

 昨年1月には、ゲイカップルのための代理出産セミナーが、米国のエージェントを招いてレズビアンの活動家によって開催されました。代理出産には倫理的にも費用的にもさまざまな問題が指摘され、賛否両論から大きな話題になりましたが、セミナー後の目立った動きはないようです。

 このように、同性2人の「挙児」「子育て」には、社会に付託される里親から、みずから方法を講じて子を授かるものまで、さまざまな方向や方法が併存しています。生物学的に子をなしえない同性間の挙児にも、「方法はある」と言われれば使いたく思うのは人情かもしれないし、それは「神の領域」として畏れるべきという意見もあるでしょう。

 今回、養育里親に先に結論が示されたことが、同性カップルと「挙児」「子育て」をめぐる議論にどう方向を与えていくか、注目したいと思います。

 (おわり)

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永易写真400

永易至文(ながやす・しぶん)

1966年、愛媛県生まれ。東京大学文学部(中国文学科)卒。人文・教育書系の出版社を経て2001年からフリーランス。ゲイコミュニティーの活動に参加する一方、ライターとしてゲイの老後やHIV陽性者の問題をテーマとする。2013年、行政書士の資格を取得、性的マイノリティサポートに強い東中野さくら行政書士事務所を開設。同年、特定非営利活動法人パープル・ハンズ設立、事務局長就任。著書に『ふたりで安心して最後まで暮らすための本』『にじ色ライフプランニング入門』『同性パートナー生活読本』など。

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2件 のコメント

最高の両親と親族と友人に恵まれる確率

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

「異性を好きになって結婚できない」という悩みを見かけました。 異性のみならず他人を好きになれない性格なのか、自分が好きなのか、都合のいい出会いが...

「異性を好きになって結婚できない」という悩みを見かけました。

異性のみならず他人を好きになれない性格なのか、自分が好きなのか、都合のいい出会いがないのか、妥協ができないのか、人を好きになる余裕がないのか、分かりませんが、そもそも、他人を好きになることと発情(恋愛)することと結婚することには相関する場合もしない場合もあります。

自由な言論と行動と同じく、自由な恋愛というのは平和やその他の前提の上に成り立つものです。

「愛はお金では買えませんが、お金で愛は潤います」という名言を昔見かけましたが、一方で、過剰なお金が愛を歪めたり、壊したり、別のトラブルを生むこともよくあります。

誤解を恐れずに言えば、家庭円満で血の繋がる両親や祖父母に恵まれた子供の方がいいでしょう。

でも、残念ながら、人間社会はそんな人ばかりで構成されていません。

一方で、当たり前の何かが欠けているということは、当たり前でない何かを手に入れたということであり、その辺の認識を肯定的に考える仕組みが必要と思います。

いつも、自分本位の願望を押し付ける両親や異性なんかよりも、見知らぬ同性愛者の方がいいかもしれません。
一方で、過剰な同性愛者やその他の犯罪被害の温床にならない仕組みを考えていく必要はあるでしょう。

「つつきの順位」を小学校で習いますが、いじめや偏見は動物社会の宿命で、だからこそ、エスカレート防止に向かい合っていく必要があります。

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親とは血のつながりが重要か

カイカタ

ちょっとした小話を紹介します。私がアメリカに大学留学していた90年代のお話し。同性婚とそのカップルが子供を持つことについて議論を同じ大学生とした...

ちょっとした小話を紹介します。私がアメリカに大学留学していた90年代のお話し。同性婚とそのカップルが子供を持つことについて議論を同じ大学生とした時、私は反対の立場で「子供は生物学的な親によって育てられるべきだ」と発言したあとに、ある女学生が「私はステップ・ファーザー(継父)によって育てられたのよ。どうしてくれるのよ」とひどい顔をされいわれました。

考えさせられます。

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