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介護・シニア

「自立支援」が要介護度改善…施設のケア、自治体から報奨も

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「自立支援」が要介護度改善…施設のケア、自治体から報奨も

職員から「立ったり座ったりするときに使う動きですよ」と説明を受け、マシンに取り組む山本さん(左)(大阪府八尾市で)

 本人ができないことだけを助けて、生活の質を上げることを目指す「自立支援型」のケアが、特別養護老人ホームやデイサービスで広がっている。利用者の要介護度が改善されると報奨金を出すなど、事業所の取り組みを評価する自治体も出ている。

  ■マシンで歩行訓練

 大阪府八尾市の「ポラリスデイサービスセンター八尾 老原おいはら 」では、高齢の男女約10人がマシンを使ったトレーニングに取り組んでいた。昨年7月から週に2回通う山本富子さん(74)は、ウォーキングマシンで歩きながら、「以前は、はうようにして家の中を移動していたのよ」とほほ笑んだ。

 数年前、交通事故で脊椎を損傷。トイレに行くのも介助が必要だったが、今では自宅の庭で草むしりをし、支えがあれば洗濯物も取り込めるようになった。「できることが増えるのはもちろん、私を介助していた夫が、自分の時間を持てるようになったこともうれしい」

 ポラリスでは、自立した生活を送るために、歩行を重視する。トレーニングマシンを壁際にぐるりと配置し、休憩用のいすは部屋の中央に固める。トレーニングを1回終えていすに戻り、腰を下ろして再び立ち上がる過程も、歩く練習だ。

 トレーニングに取り組む前に、歩けるようになったら何がしたいかを聞き、「墓参り」「近所のスーパーで買い物」など生活に即した具体的な目標を設定する。「本人の意欲をいかに引き出すか、職員の働きかけが大事」と、ポラリスの森剛士社長は説明する。

 同社は全国で約70か所のデイサービスを運営しており、2013~15年に要介護認定の更新があった利用者5032人のうち、927人の要介護度が改善。改善した人の割合は約2割で、同時期の全国平均の2倍にのぼる。

  ■介護報酬見直しへ

 自立を目指す取り組みに熱心な施設は増えてきている。ただ、現在の介護保険制度では、要介護度が上がるほど、サービスの対価として介護事業者に支払われる報酬も高くなる。介護事業者にとっては、要介護度が高い人を介護する方が、報酬を多く得られる仕組みだ。

 ポラリスでは、要介護度の改善により、13~15年で計約1億円の減収となった。利用者の評判が高まり、利用者が増えたことで減収分を多少補っているというものの、森社長は「介護給付費の削減に大きく寄与しているはず。国にはその一部でも 補填ほてん してもらえれば助かる」と話す。

 国は18年度の介護報酬改定に向け、自立支援のための介護に加算する仕組みを検討する方針だ。

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  ■評価基準に難しさ

 一部の自治体は、自立支援に取り組む施設を、表彰や報奨金で独自に評価する取り組みを進めている。

 東京都品川区は、特養などの入所者の要介護度が改善した場合、施設に報奨金を支給する事業を13年度から行っている。入所者1人の要介護度が、前年と比べて改善すると、1段階ごとに月2万円を12か月間支給する。現在、特養や介護老人保健施設など15施設が参加しており、16年度は、71人の要介護度が新たに改善。うち、1段階の改善が51人、2段階が17人、3段階が2人で、要介護5から1と4段階改善した人もいた。

 川崎市も、報奨金や表彰で評価する事業に16年度から取り組む。評価は施設単位ではなく、利用者を中心とした「チーム制」で、状態が改善・維持できた場合、デイサービスや訪問介護、特養など、その人に関わった介護事業所すべてに各5万円を支給したり、表彰したりする。

 同市は、2年間のモデル事業で評価方法を検討し、要介護度のほかに、起きあがりや片足立ちなどの日常生活動作( ADL )の改善状況も、評価項目にした。品川区も、事業に参加する施設には、介護サービスの質の向上を目指す勉強会への参加を義務づけるなど、試行錯誤を重ねている。

 ただ、評価基準の尺度作りは難しい。同じ要介護度でも、状態は人により様々だ。心身の状態が良くなっても、要介護度が改善するとは限らない。介護現場からは、要介護度の数字を改善しただけで「自立」の尺度として評価することに懸念の声もある。

 ※ ADL =Activities of Daily Living

 (小沼聖実)

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