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肩・腰の凝りに効く筋膜リリース体操…「平泳ぎ」「シェー」「見返り」の3種類
肩や腰の凝りに、筋肉を包む「筋膜」が深く関係していることがわかってきた。BS日テレ「深層ニュース」では、長年筋膜を研究してきた首都大学東京大学院教授の竹井仁さんに、筋膜をほぐすことの大切さや、独自に考案した「筋膜リリース体操」について解説してもらった。
(構成 読売新聞専門委員・松井正)
筋肉包む5つの膜
肩や腰のつらい凝りと密接に関わる存在として、最近注目されているのが「筋膜」です。例えば、鶏肉の表面を覆う皮をめくると、肉と皮の間に薄い膜があります。これが筋膜で、ちょうど筋肉をストッキングで包んだようなイメージです。

図1 鶏肉の筋膜(BS日テレ「深層NEWS」より)
全身の筋肉をボディースーツのように包み込み、同時に筋肉の中にも入り込んでいるため、第二の骨格とも言える重要な存在です。頭から手や足の先までを、くまなく覆っているのです。

図2 全身を覆う筋膜のイメージ(BS日テレ「深層NEWS」より)
筋膜には5種類あり、まず皮下組織や脂肪層の下に「浅筋膜」、その下には「深筋膜」があります。さらに、筋肉を覆っている「筋外膜」、その中に入り込む「筋周膜」、そして一本一本の筋線維を包み込む「筋内膜」が存在します。

図3 5種類の筋膜の様子(BS日テレ「深層NEWS」より)
筋肉の外側だけでなく、中にも入り込んでいる筋膜は、肩や腰の凝りとも密接に関わっています。長い時間同じ姿勢をとったり、筋肉を使いすぎたりすると、筋肉がギュッとがんばってしまい、その上にある筋膜も硬くなります。それが全身を覆っているため、いろんな経路で様々な場所に影響し、例えば昔の足首のケガが肩凝りにつながったり、ギターを弾く人の 腱鞘 炎が肩凝りになったりと、全身がつながっているのが筋膜の特徴です。
リリースして柔らかく
自由になめらかに動くのが、本来の筋膜の姿です。その状態に戻すため、筋膜を「リリース」してほぐす方法があります。リリースとは解放する、解除するといった意味で、筋膜をはがしたりするわけではありません。
ねじれてよじれた筋膜をじっくりほぐして軟らかくし、それが全身につながって、肩凝りや腰痛など様々な場所に波及して良い効果を及ぼすのです。
超音波を使って、筋肉の様子を見るエラストグラフィーの画像を見てみましょう。これは50歳の女性の肩の画像で、上側が皮膚です。表面近くには「僧帽筋」があり、白い線が筋膜です。
画像の赤い部分は筋肉が軟らかく、緑は中間で、青になるほど硬い状態を示しています。左の肩凝り状態の画像では、上の方に多少赤い部分があるものの、深いところは青くて硬いことがわかります。

図4 エラストグラフィーによる筋肉の硬さの変化(BS日テレ「深層NEWS」より)
そこで、筋膜リリースをご自身でやってもらったところ、右の図のように変化しました。表面に赤みが増え、「肩甲挙筋」という深い部分の筋肉にも赤みが増えています。肩をもむだけでは、ここまで赤くはならず、自分自身で筋膜リリースを行えば、深いところの筋肉までほぐれるという効果が読み取れます。
マッサージに行けば、瞬間的にはほぐれた感覚があり、血液の循環もよくなりますが、翌日などには戻ってしまいます。根本的な解決がなされていないことが多いためです。これに対して、筋膜リリースで全体を通して筋膜がほぐれると、効果は持続します。その部分に原因がない場合でも、広い範囲での改善が期待できるためなのです。
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