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コウノドリ先生 いのちの話

からだコラム

[コウノドリ先生 いのちの話]「神の手」いない医療漫画

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 2012年秋、後輩の医師を介して「荻田先生をモデルに漫画を描いた人がいて、どうも連載になりそうだ」と連絡が来ました。何のことかさっぱりわからず、後日、都内で作者の鈴ノ木ユウ先生にお会いしました。

 鈴ノ木先生の奥さんは大阪で里帰り出産され、私はそのお産を担当しました。まさかその旦那さんが、若手漫画家の登竜門「第57回ちばてつや賞」を受けた気鋭の描き手だなんて初耳です。鈴ノ木先生は元バンドマン、私もジャズピアノを弾くこともあって、その夜は音楽の話を酒の さかな に盛り上がり、漫画の下描きをもらって最終の新幹線に乗りました。

 読んでみると、早産と超低出生体重児をテーマに、産科医療が活写されていました。患者の視点を織り込み、あまりにもリアルに描いてあり、思わず車内で号泣。心配した車掌さんに何度も見回りにこられるという醜態をさらしました。

 そんな経緯で、始まった漫画「コウノドリ」。医療漫画にありがちな「神の手を持つ医師」は出てきません。産科の現場でいざという時に力を発揮するのは、「神の手」ではなく「チーム医療」だからです。

 お産は何が起こるかわからないし、主人公の産科医・サクラ先生だって24時間、ベストな判断ができるとは限りません。周産期医療は究極の救急医療。新生児科医、麻酔科医、救急医、助産師や医療ソーシャルワーカーなど、様々な職種が連携し、安心と安全を担保すべき分野なのです。

 「コウノドリ」は、「周産期医療ってどんな現場?」という素朴な疑問に答えてくれる作品です。未読の方はぜひ手に取ってみてください。ただし電車内では読むべからず。涙腺が崩壊して怪しまれかねないので、ご注意くださいね。

 (りんくう総合医療センター産婦人科部長 荻田和秀)

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