予防医学研究者・石川善樹の「続けたくなる健康法」
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なぜ女性の方がつながり作りがうまいのか?
こんにちは。
予防医学研究者の石川です。
わたしは「つながりと健康」の研究をしているのですが、そのせいか繰り返し次のような質問を受けます。
「どうして男性は、女性に比べて、つながり作りが下手なのか?」
おそらく、みなさんもそのような印象があると思います。
どうも調べてみると、この背景には「ストレス状況下における男女の振る舞い」が影響していることが分かってきました。とても面白い話なので、できる限り詳しく見ていきたいと思いますが、まずは「そもそもストレスとは何か?」についてみていきましょう。
男女で違う ストレスへの反応
1915年、米ハーバード大学医学部教授であったウォルター・キャノンは、当時としては驚くべき研究を発表しました。
「人は恐怖や怒りなど、ストレスの多い状況に置かれると、呼吸や脈拍が増え、血圧も上昇する。これは、牙をむき、襲いかかる動物から身を守るため、人類が進化の過程で獲得したメカニズムである」
つまり、目前にせまった危機を回避するために、体は心拍数や筋肉への血流を増やして、「闘うか逃げるか」に適した状態を作り上げるのです。キャノンは、それら一連のストレス反応を「闘争・逃走反応」と名付け、初期のストレス研究における金字塔を打ち立てました。
ただ、キャノンが研究対象としたのは主に男性であり、女性はストレスにさらされると男性とは違った反応を示すことが分かったのは、なんと21世紀になってからのことです。
女性により働く「癒やしのホルモン」
ストレス研究の権威である、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のシェリー・テイラー教授によると、人間はストレスを感じると、男女を問わず結びつきを求めるオキシトシンというホルモンが分泌されると報告しています。
オキシトシンは、「癒やしのホルモン」といわれることもあり、友達や身近な人とのつながりを求める作用があります。特に女性の場合、オキシトシンの作用に加え、女性ホルモンの影響と相まって、ストレス下でより強くつながりを求めることが知られています。
つまり女性は、ストレス研究で伝統的に言われていた、「闘争・逃走反応」ではなく、「人とつながりたくなる(しゃべりたくなる)」という第3のストレス反応を示すのです。一方男性は、オキシトシンの働きが男性ホルモンによって弱められてしまうため、女性ほどはつながりを求めないようです。
年を重ねれば重ねるほど、苦労は増えます。たとえば、体が動きにくくなったり、親しい人が亡くなったり、あるいは大病をしたりと、大きなストレスがたくさん待ち構えています。そのとき、女性は「人とつながっておしゃべりをする」ことで乗り越えようとしますが、男性はどちらかというと「引きこもって酒などに逃げる」という行動をとり、健康を崩しがちです。
そのような男女差があるのだということを考慮に入れた上で、まずは「身近にいる人たちを大事にする・感謝する」というところから、つながり作りを始めてみてはいかがでしょうか?!
それではまた次回!
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