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新治療…胸腔鏡手術で負担軽減

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小澤壯治さん

  町永  がんにはどんな治療が行われていますか。

  小澤  まず手術です。がんを局所的に切り取ります。がんの種類によっては、すでに転移したリンパ節や、転移の危険のあるリンパ節を切り取ります。

 また、抗がん剤を投与する化学療法があります。血液がんの治療や、手術や放射線治療と組み合わせる治療、再発したがんの治療などで使います。

 そして、放射線治療。局所的に放射線を当ててがん細胞を攻撃する治療です。

  町永  分子標的薬はどんな薬ですか。

  小澤  がん細胞が増殖する仕組みがわかってきました。その部分をピンポイントで攻撃し、増えないようにする薬です。現在、約40種類が使われています。

  町永  免疫療法とはどんな治療法ですか。

  小澤  免疫療法は第4のがん治療と考えられ、大きく分けて2種類あります。一つは元々の免疫能を高める治療です。もう一つはがんが抑えている免疫能を回復させるという治療で、こちらの方が現在、脚光を浴びています。

  町永  患者の負担が軽い新しい手術法が登場しました。

  小澤  例えば食道がんではかつて、 肋骨(ろっこつ) と肋骨の間を背中から右側の前の胸まで切るなど、手術が大がかりで、患者にかなりの負担がかかっていました。

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  町永  それが現在は 胸腔鏡(きょうくうきょう) 手術に。

  小澤  そうです。胸に5~12ミリの穴を五つほど開けて、胸の中に3次元のハイビジョンカメラを入れます。奥行きがはっきりわかり、画像を拡大することができるので精密な手術ができるようになりました。

  町永  入院日数は減りましたか。

  小澤  傷が小さいので出血が少なくて痛みも軽く、入院日数が短くなるなど色々なメリットが報告されています。

  町永  ほかのがんにも使われていますか。

  小澤  この内視鏡の技術は、胃や大腸などの消化器がんや、前立腺がん、腎臓がん、胸部では肺がんなどの手術にも使われています。

  町永  抗がん剤の使い方も随分変わったのですか。

  小澤  食道がんの場合は手術前に使うようになりました。手術後は体力が弱っているので十分に投与できないというのが理由の一つです。

 直腸がんなどでも最近は手術前に投与し、放射線治療とも組み合わせて、がんをできるだけ小さくして、手術で切り取る部分を減らそうという方法に変わりつつあります。

副作用抑える

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西口洋平さん

  町永  ただ、抗がん剤には副作用があります。西口さんは患者の立場からどう思いますか。

  西口  副作用は 倦怠(けんたい) 感や便秘、肌荒れ、吐き気、体重の増減などがあります。一つ一つは大したことないと思われるかもしれませんが、それらとずっと付き合っていかなければなりません。

  町永  天野さんが治療された時は今とかなり違う環境だったのではないでしょうか。

  天野  私が最初に治療を受けたのは17年前。血液がんだったので大量の抗がん剤を投与しました。その過程で間質性肺炎になって肺の機能がかなり落ち、視力が一部失われるという経験もしました。

  小澤  最近では副作用がなぜ起きるのか仕組みも明らかになってきました。なるべく副作用を小さくし、出ないようにする支持療法も進歩しています。

部署、職種超え 集中サポート

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天野慎介さん

  町永  チーム医療が注目されるようになりました。東海大学では小澤先生が周術期管理チームを作りました。周術期とは手術の前後という意味です。

  小澤  外来、病棟、手術室などさまざまな部署の看護師、呼吸リハビリを行う理学療法士、歯科衛生士、管理栄養士などさまざまな職種が1人の患者に集中的にサポートを行っています。

  坂本  チームで関わることでチーム全体の経験値が上がっていきます。国立がん研究センター東病院では、患者が社会から孤立しないよう、患者会につないでいくことなども行っています。後に、患者から「紹介してくれてありがとう」「患者会でこんな活動を頑張っています」などの前向きな返事をいただいた場合、チームで共有し、その後の支援に役立てることもあります。

  天野  本来であれば患者自身もチーム医療の一員であるべきだと思います。そうなれば受動的ではなく、能動的に前向きに治療に臨めるのではないでしょうか。

  丹藤  国は全国の2次医療圏ごとにがん診療連携拠点病院を指定しています。

 体の痛みを緩和する医師だけでなく、心の痛みに向き合う精神科の医師、臨床心理士などがチームで患者に向き合うことがその要件になっています。国としてもこれをしっかり進めていくつもりです。

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