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コウノドリ先生 いのちの話

からだコラム

[コウノドリ先生 いのちの話]救急年間1700件の内訳

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 「○○は社会の縮図である」という決まり文句に触れるたび、腹立たしく思う自分がいます。○○が公共のものであるほど多様な人が関わっています。ホテル、銭湯、野球場、最終電車、そして病院の待合室ならいろんな人がいて当たり前。「社会の縮図だ」という結論そのものが、結論づけることを放棄しているように思えて腹が立つのです。

 私の勤務先では毎晩2人の産婦人科医が当直勤務をし、救急医療に当たっています。かかりつけのない人、他の病院で手に負えない重症者など年間約1700件に対応します。比較的軽度な1次救急から重度な3次救急まで、ワンストップで地域の産婦人科救急案件を満遍なく受け入れています。

 受診者の3分の2は救急車で来られますが、最も多いのは月経困難症、つまり生理痛です。次いで多いのが妊娠初期の切迫流産で、合わせると半分近くになります。いずれも産婦人科医による診断と治療が必要な疾患なので、症状の軽重はあれど来ていただいてよかったと思う事案です。

 約20%は入院で経過をみることになり、5%ほどで 分娩ぶんべん や手術など高度な治療を要します。異所性妊娠(子宮外妊娠)や産後の出血多量など、命に関わる疾患が数%ずつ含まれます。

 少し驚かれるかもしれませんが、外陰部の外傷の患者さんも数%おられます。痛みや出血が止まらず、やむなく救急要請したケースが大半です。転倒や不慮の事故、性犯罪被害などが原因で、対応時は神経をすり減らします。また、夜間救急外来には未受診妊婦、日本語が話せない外国人旅行者、拘置所や警察の留置場から来る人もいます。

 もちろん全員女性ですが、こうして見てみると、皮肉ですが「社会の縮図」といえるのかもしれません。

 (りんくう総合医療センター産婦人科部長 荻田和秀)

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