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ネット上のデマ、なぜ広がる…「重要」で「あいまい」に反応

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むごい匿名攻撃の恐怖…スマイリーキクチさん被害

 インターネット上のうわさやデマをよく考えずに拡散させると、深刻な人権侵害につながる恐れがある。なぜデマは広がるのか、ウソの共犯者にならないためにはどうすればいいのか。

ネット上のデマ、なぜ広がる…「重要」で「あいまい」に反応

「ネット上での発信は注意してほしい」と語るスマイリーさん(東京都内で)=池谷美帆撮影

 人気女性アイドルグループのメンバーが2月に急死した。ツイッターなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)では死因として、「インフルエンザ脳症」という情報が拡散した。「熊本地震で動物園からライオンが逃げた」という虚偽の内容の文章と画像がツイッターに投稿され、ネット上に広がった。熊本市の動植物園には100件以上の問い合わせがあったという。

 いずれも、真実と思わせるような公式発表はなかった。なぜ広まるのか。

 うわさを研究する中央大教授の松田美佐さん(メディア論)は「うわさの広がりやすさは情報の『重要性』と『あいまいさ』のかけ算で決まる」と説明する。

 松田さんによると、アイドルの急死のケースでいえば、若者に人気のあるグループのメンバーの急死は重大な関心事で、所属事務所が死因を発表しない「あいまいさ」が急速にデマが広がった理由と分析する。

 ネット社会になり、デマが拡散するスピードは速まった。収束するのも早いという特徴がある。アイドルの急死から2日後に所属事務所が「致死性不整脈の疑い」と死因を発表すると、デマは急速に収束した。

 ウソの共犯者にならない方策として、松田さんは〈1〉不安につけ込む“手口”を知る〈2〉情報元を確認する〈3〉簡単に白黒つけない――ことを勧める。

 災害時はデマが流れやすい。人々の不安が高まっているためで、関東大震災や東日本大震災でも様々なデマが流れた。真偽不明な情報の場合は、官公庁やマスメディアなど信頼のおける情報を調べるといい。松田さんは「反射的にリツイート(転載)するのは危険。一度立ち止まって考えるくせをつけてほしい」と注意を呼びかける。

 「犯罪者に人権はない」「人殺しは即刻死刑」――。お笑いタレントのスマイリーキクチさん(45)は、ネット上に殺人事件の犯人であるかのような文言を繰り返し書き込まれ、中傷を受けた。「匿名の集団が、いかにむごいことをするかを競い合っている状況に、恐怖を感じた」と振り返る。

 この経験から、ネット上のデマの怖さを知ってもらおうと、学校や企業で講演活動を続けており、「小さなウソが、人格を燃やし尽くすデマに発展することもある。僕のような被害者を出さないためにも、ネット上で発信する時には、注意を払ってほしい」と話す。

 スマイリーさんの講演を聞いた学生からは「ツイッターをしているが、デマの加害者になる恐ろしさを知った」「自分だったら自殺していたかも」などの感想が寄せられたという。スマイリーさん自身のブログには、いじめなどで、ネット上にデマを流された人から助けを求めるメッセージが寄せられることもあり、「警察に相談した方がいい」など対応策を返信している。

  ■スマイリーさんの被害  自身のブログなどに、1989年に発覚した女子高生殺人事件の犯人であるかのような文言が書き込まれた。2009年、男女らが名誉 毀損きそん などの容疑で書類送検されると減ったが、ブログに殺害予告が書き込まれて今月のテレビ出演をやめるなど、今も被害は続いている。(加納昭彦)

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