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高齢者が介護ボランティア…自身も体力回復、介護費削減に

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要支援者向け、全市区町村で「総合事業」

高齢者が介護ボランティア…自身も体力回復、介護費削減に

筋肉を鍛える利用者(右)に付きそい、「イチ、ニイ」と声をかける元利用者のボランティア(奈良県生駒市のトレーニング教室で)

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 介護の必要性が比較的低い要支援1、2の人向けサービスの一部を地域住民らが担う「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」が来月から、先行する自治体も含めて、全市区町村で実施される。地域の実情に応じたサービスが可能になり、ボランティアらを活用することで、介護費用の抑制を図るのが狙いだ。先進的な事例と課題を探った。

 一人暮らしの奈良県生駒市の男性(68)は、5年ほどの間に脳梗塞を3回繰り返し、歩くことが不自由になった。買い物に出かけるのも面倒になり、食事も満足に取れず衰弱。ますます歩けなくなった。

 ケアマネジャーの勧めで、2015年秋から同市の総合事業の一つであるトレーニング教室に週2回参加し、体操や筋トレに励んだ。理学療法士らとともにトレーニングマシンの調整などを行うボランティアが、最初は自分と同じ利用者だったと知り、「自分もこうなりたいという目標ができた」という。

 初めは、徒歩で通うのに休憩を取りながら、片道1時間かかったが、3か月間の教室が終了する頃には、同じ道を20分で歩けるまでに回復した。今はボランティアとして教室に参加している。脳梗塞の影響で言語障害もあるが、「利用者がマシンを動かすのに合わせて、大きな声で回数を数えることが、いいリハビリになっている」と笑顔を見せる。

  サービス多様化

 同市は15年度に総合事業を始めた。ボランティアを担い手として、心身を鍛える教室や会食サロンなど、多様な通所型サービスを設けており、来月からは、研修を受けたボランティアによる家事支援も始める。

 事業に取り組んだ結果、介護が必要と認定された高齢者の割合は、14年の15.9%から、16年には14.7%に下がった。同市の試算では、年間約1700万円の費用を削減できたという。「これまでは、加齢とともに状態が悪化し、より多くのサービスが必要になると思われていた。だが、総合事業を充実させたことで、高齢者が、サービスの受け手から、担い手へと変わるなどして、介護を必要としないで暮らせる期間がのびている」と、同市地域包括ケア推進室の田中明美室長は事業の意義を強調している。

  〈介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)〉  本格的な介護が必要になるのを防ぐために行われる事業。これまでは、要支援1、2と要介護1~5のサービスは専門の事業者が行い、価格とサービスは全国一律だった。2017年度からは全ての市区町村で、要支援者へのサービスのうち、訪問介護とデイサービスが切り離されて総合事業に移る。自治体が内容や価格を独自に決めることができ、事業者だけでなく、NPOや市民もサービスの担い手になる。

地域で支える仕組みを

 総合事業は、すでに全国の約4割の自治体で実施されており、残りの約6割でも、来月から一斉に始まる。だが、市民らによる新しいサービスを実施しているのは少数派で、大半は、これまで通り介護の専門事業者が行うサービスが中心だ。

 淑徳大の鏡諭教授(自治体政策論)によると、総合事業で成果を上げている自治体は、地域のネットワークづくりに力を入れてきたうえ、比較的、財政力がある場合が多いという。鏡教授は「人材育成には時間や手間がかかる。その努力をせずに、総合事業を理由に介護サービスの量や質を落として、費用削減を狙う自治体が散見されるのは問題だ」と指摘する。

 介護の人手不足が深刻化する中、地域全体で高齢者を支える仕組みが必要だ。国や自治体だけでなく、市民や団体、企業なども主体的に関わることが求められている。

 (飯田祐子)

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