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コラム

がん治療の“武器”はどう探す? 不安な患者の情報戦

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意外と知られていないがんの知識

がん治療の“武器”はどう探す? 不安な患者の情報戦

診断を受けて不安な時に、がん治療の正しい情報を探すのは難しい

 いまや国民の2人に1人が、生涯の間にがんに かか るのだそうです。そんなにがんは身近なのかと思われるかもしれません。自分自身ががんになるばかりではなく、大切な家族や友人ががんになり、ともに手をとって立ち向かうこともあると思えば、一生がんと無縁で過ごせる人はよほど幸運と言えそうです。一方、多くの人ががんになるものの、治療もまた進歩しています。いまだにドラマや映画にがんの登場人物がでてきたら、その人はエンディングまでに(たいていは)亡くなってしまいますが、実際にはがんを克服し、治癒、もしくはがんが検査で見つからない寛解となって、社会復帰する人もたくさんいるのです。

 がん、と一口に言っても、どの臓器の、どのステージのがんなのか。どんな性質のがんなのか。その患者さんの年齢や体力、生活習慣病などほかの持病の有無、などなど、一人一人の病状はさまざまです。その様々な病状にあわせた幅広い知識となると、がんが“身近”だというわりには、がんに関する知識はそれほど知られているとは言えないかもしれません。

玉石混交の情報で右往左往

 私自身、自分ががんになるまでは「がんと言ってもいろいろで、自分の病状に即した知識が必要である」ことなど、わかっていませんでした。人間ドックで精密検査の必要を告げられた時、初めて「えっ?わたしが、がん、かもしれないの?」と衝撃を受けました。その後、専門病院を紹介されて、予約を取り、また一からあれこれ検査をし、その結果を待って、と、がんが疑われてから確定診断が出るまで、それなりに時間がかかります。その間、まさか自分がという不安を抱えた状態で、あわてて、やみくもに、付け焼き刃で情報を探しました。

 いまはネットなどもあって、その気になれば情報量だけはいくらでも出てきます。大きな本屋さんにいけば、「がん」という棚があり、がん関連の本があれやこれやと並んでいます。が、基礎的な知識もないまま、しかも不安な精神状態で玉石混交な大量の情報に触れてしまうのは、いま思い返すとあまり良いことではなかったと感じています。なにしろ不安で心が弱っていますから、あるときは悲観的な情報ばかりにのめりこみ、暗い気持ちになってしまいます。かと思うと今度は「これ一つで治った!」という類いの、楽観的な情報ばかりを見て自分を慰めたりします。情報の取捨選択が、客観的な基準によることなく、主観的なものに偏ってしまうのです。テレビやラジオの情報番組の仕事をいくつもさせていただき、それなりに情報の選び方に自信があるつもりでいましたが、 もろ いものでした。不安で不安定な精神状態の時には、そんなにクールに客観的にはなれないものなのです。「自分で思うほど自分は強くなかった」。いま、しみじみ思います。

 そうやって雑多な情報に触れながら、素人判断で「ああでもない、こうでもない」と 悶々もんもん としていた私でしたが、主治医の先生の丁寧な説明を聞くことで、やっと得心がいきました。主治医は「その患者さんのデータをもっとも詳しく知る専門家」です。本やネットには「がんはこう治せ」「がんにはこれが効く」「がんにはこの治療」という類いがあふれていますが、それはいったい誰の、どんな病状のがんのことを言っているのでしょうか。もちろん参考になることもありますが、「私のがん」をもっとも良く知るのは「私の主治医」なのです。

主治医、書籍、友人、医療サイト――何を信じれば?

 第一の情報源は主治医。主治医の言うことを理解し、ときには適切に質問するためには主治医以外の情報源も必要。場合によってはセカンドオピニオン(ほかの医師の意見)もとっていいでしょう。ですが「がんの多様性」を無視したような情報、がんにはこの治療をすべきとか、すべきでないとか、「がんは……」とがんをひとくくりにしたような情報は頼りにはならないと思います。とある本屋さんの「がんの棚」の前でため息がでたことがあります。残念ながら、「がん治療はこうしろ」「これをするな」「これで治る」というものがほとんどでした。本屋さんもたいしたもので、「〇〇治療をせよ」という本と「〇〇治療はするな」という本が並んでいたりします。あわよくば2冊売れるということでしょうか。

 友人知人が自分の家族のときはこうだった、と教えてくれることもあります。が、それが5年前、10年前の話となると、情報としては少し古くなっている可能性もあります。がん治療も日進月歩なのです。

 手術すべきか、しないべきか。抗がん剤を使うべきか、使わないべきか。放射線治療はどうか。副作用にどう対処するのか。治療後のリハビリはどうなるのか。自分の場合はどうなのか。いやはや、考えることが多くて大変です。まずは情報収集の初めの一歩として、信頼できるがん専門医療機関の情報サイトを活用することをおすすめします。たとえば国立がん研究センターなら、がん対策情報センター「 がん情報サービス 」というサイトがあります。がんの「標準治療」(科学的根拠のある最良の治療法)がどういうものかを、まず知る。それを基準にしてほかの情報を見ていく。がん治療の拠点病院などには相談窓口が設けられていることもあります。その病院にかかっていなくても相談に乗ってくれる場合もありますので、問い合わせてみるといいかもしれません。

不確かな情報で寄り道はしないで

 比較的に早期にがんを発見して標準治療で十分な効果を期待できる状態だったのに、どんな情報に触れたのか「違う治療をします」といって病院にこなくなってしまい、悪化してから戻ってくるという例もあると聞きます。克服する人が増えたとはいえ、がんが私たちの命を脅かす手強い病気であることに変わりはありません。不確かな情報のために寄り道をしたことで治療の機会を失ってしまうことほど残念なことはないと思うのです。

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asagi

麻木久仁子(あさぎ・くにこ)
 1962年、東京都生まれ。学習院大学法学部中退。テレビ、ラジオ番組で司会者、コメンテーターとして活躍するほか、読書家としても知られ、本の紹介サイトHONZや新聞で書評を書いている。2010年に脳梗塞を発症。12年には両胸に発症した初期の乳がんの手術を受け、現在もホルモン療法中。講演会や取材などで闘病体験や検診の大切さを伝えている。2016年には国際薬膳師の資格を取得した。

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1件 のコメント

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意外と知られていない癌の医師と組織

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

文章からすると、凄く医療知識と一般常識に優れた先生に当たられたのですね。 ただ、医療不信を煽るのと同様に医療依存を煽るのも良くないと思います。 ...

文章からすると、凄く医療知識と一般常識に優れた先生に当たられたのですね。

ただ、医療不信を煽るのと同様に医療依存を煽るのも良くないと思います。

残念ですが、医師にも賢い人から愚かな人、腕のいい人から悪い人、性格の良い人から悪い人まで様々です。

かかりつけ医も、主治医も、当たり外れや相性の問題はデリケートです。

また、ニュースを賑わす如く、様々な構造問題があります。

だからこそ、がん治療の科学的不完全性の域を超えて、反医療団体が幅を利かせている側面があります。

患者と医師がある程度の知識を共有しなければ、最後は宗教戦争みたいなものです。

そういう意味でも、本文が医師への信頼ではなく、一部の患者の被害者意識を煽ってしまうリスクがあります。

また、お金や政治が絡めば科学に「毒」が混ぜられる可能性もあります。
バルサルタンの捏造論文事件はそのリスクを気づかせてくれました。

治療も診断も格差があれば、そこに利害と政治が発生します。

最近何かとうるさいCOI(利害相反)ですが、社会を仲介とした間接な利害は必ずどこかあります。

普通の人にとって、医師は特別な建物の中で、特別な服を着た人だと思いますが、所詮は専門教育を受けただけの人間です。

残念ですが、倫理は教育だけでどうにもなりません。

より良い人生を生きるために、適切な医師や理論選び、医師との適切な距離感や関係性を考える必要があります。

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