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貧困の子ども、広がる支援…NPO学習塾に「居場所」

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講師の大学生と信頼関係

 「貧困状態」にある子どもたちの学習を支援する動きが広がっている。NPO法人などが学習塾を開いている。子どもたちが、安心して過ごせる居場所としての役割を担う。

貧困の子ども、広がる支援…NPO学習塾に「居場所」

中学生に勉強を教える大学生。「Learning for All」では、講師の大学生は指導の前後に計50時間の研修を受ける(都内で)

 2月下旬、東京都内の集会所で中学生6人がそれぞれ、講師の大学生と向き合っていた。男子中学生の英語の発音に女子大学生は「いい発音だね」と励まし、最後は「長い時間頑張ってくれたのがうれしい」と喜んだ。NPO法人「Learning for All」(東京)が、経済的な困難を抱える家庭の子どもを対象に開く無償の学習支援教室だ。

 中2の男子生徒は学校の授業についていけず、勉強嫌いになった。母親の勧めで約1年前、教室に通い始めた。当初緊張したが、休み時間に大学生と、ペットの犬などの話で盛り上がり、通うのが楽しくなった。

 同じ質問を何度しても大学生は丁寧に教えてくれた。おかげで勉強の面白さを感じられた。今は自宅で1日4時間勉強し、学校の試験の点数も数学や理科を中心に伸びてきた。「好きな動物に関係する仕事に就ければいいな」と思い描く。

 同法人の教室では、信頼関係を築けるように、講師の大学生は3か月間、同じ子どもを受け持つ。図形や色など関心事を探り、その関心事をからめて教える。「難しい」と漏らす子どもには「そうだね」と寄り添い、上達や達成の内容をきめ細かにほめる。広報担当の石神駿一さんは「子どものペースに合わせてやる気を引き出し成績向上につなげている」と語る。

 貧困状態の家庭の子どもは意欲や自己肯定感が低い傾向にある。東京都大田区の小5を対象にした調査では、「頑張れば報われると思うか」という質問に24%が「思わない」と答え、非貧困の子供の16%を上回った。「価値のある人間と思うか」との問いにも47%が「思わない」とし、非貧困の子供の36%を超えた。

 自らも学習教室を開く、愛知工業大学基礎教育センター准教授の川口 洋誉ひろたか さんは「進学競争が激しくなる一方、貧困状態の家庭の子どもは参考書を買えない、学習机がないなど勉強に不利な環境に置かれている」と指摘する。

 成績が悪かったことなどをきっかけに投げやりになり、将来の夢も失われていく。一人親の家庭では、夜遅くまで働く親に、学習に関心を払う余裕がない場合もある。大人から「頑張りが足りない」と責められた子供は、分からないことや悩みを誰にも明かせなくなっている。

 生活困窮者自立支援法が2015年に施行されたことで、学習支援教室が増えている。川口さんは「多くは、子供たちが自分の気持ちを大学生に素直に伝えられる『居場所』の機能を持っている。安心できる環境で少しずつ勉強を進めることで自信ややる気が培われる」と説く。

 日本財団は小学校低学年を対象に、平日の放課後、学習支援や読書会などを行い、5~20年後の自己肯定感ややりきる力の伸びを調べる事業を進めている。

 ただ、事業委託元の自治体が消極的だったり、講師の大学生が不足していたりする地域もある。川口さんは「NPOなどが学校や行政と連携し、学校で子ども一人ひとりに目を配れる体制を作ることが重要」と強調している。

  ■メモ  国の2012年の「子どもの貧困率」(国民の所得を多い順に並べて真ん中の数値の半分・122万円に満たない世帯で暮らす17歳以下の子どもの割合)は16.3%で、6人に1人になる。生活困窮者自立支援法の学習支援事業は、厚生労働省が費用の半分を助成する。同省によると、事業を行う自治体は14年度の184が16年度には423になった。(米山粛彦)

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