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在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活

医療・健康・介護のコラム

ゆるっと楽しく離乳食をすすめましょう(2)

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ゆるっと楽しく離乳食をすすめましょう(2)

旅行先の宮城県南三陸町で食べた「南三陸キラキラ春つげ丼」には、緑鮮やかな「めかぶ」が盛り付けられていました。美味おいしい「三陸の春」から東北にも着実に春が近づいていることを実感しました

 仙台市内のある町内会が主催する講演会で「食と健康」をテーマにした講話の依頼があり、「健康な人はこれからも健康になれる食生活、あまり健康でない人は今より健康になれる食生活」についてゆるっとご紹介してきました。普段は在宅医療を受けている、要介護の患者さんを訪問しているので、会場にいらしたような元気に地域を闊歩(かっぽ)している高齢の方々にお話をするのはとても新鮮です。食べることは生活の一部でありながら、健康にも直結しますから、みなさん真剣な面持ちで耳を傾けてくれます。

 このような講演会でいつも締めくくりにお話しするのは、「しっかり噛める口を維持してくださいね」ということです。栄養士が歯の話で締めくくるなんて意外だと思われるでしょうが、幼いころに獲得した「食べる機能」は最期まで使い続けたいものです。

 さて、今回も離乳食がテーマです。

 厚生労働省が発表している「授乳・離乳の支援ガイド」の中に興味深いデータがあります。平成17年のもので少し古いのですが、「子どもの離乳食で困ったこと、わからないこと」について調査した結果です。

 「離乳食で困ったこと」では1位が「食べ物の種類が偏っている」で28.5%。以下、「作るのが苦痛・面倒」の23.2%、「食べる量が少ない」の20.6%と続きます。

 一方、「離乳食でわからないこと」の1位は「食べる適量がわからない」46.4%と約半数を占めます。今現在、離乳食を作っている方には、共感できる項目が多いのではないでしょうか。

 特に「作るのが苦痛・面倒」というのは本当によくわかります。私の場合は、食べ物の種類が偏ることはあまりありませんでしたが、「作るのが面倒」「食べる量が少ない」の項目については同じ悩みをもっていました。

勝手に南三陸宣伝大使に就任(笑)

勝手に南三陸宣伝大使に就任(笑)

 「作るのが面倒」という方の言葉からは、日々育児奮闘する中で時間に追われているお母さんの姿が想像できます。私自身も、ただ面倒というだけではなく、気持ちに余裕がないことも経験してきました。

 近年のレトルト離乳食の発展は目ざましく、しかも1個150円程度です。食材の調達や調理の時間を考えれば、それほど高い値段ではありません。離乳食作りが面倒な時に活用しつつ、非常時用の保存食にもなりますので、少し買い置きがあっても良いと思います。

 また、「食べる量が少ない」という悩みもよく聞きます。我が家の2人の娘もとても小食でした。次女に至っては、「母乳を飲みすぎて離乳食をほとんど食べない」という事態になりました。 

 今でも小食な次女には、あの手この手で食べてもらうように工夫をしています。育児関連の本には、「素材の味を大切に、なるべく調味料は使わないで」と書かれているものもありますが、少し調味料を加えた方が、「素材の味が引き立つ」ということもあります。

 ところでみなさんは「味噌(みそ)汁の適切な塩分濃度」をご存じですか?

 味噌汁の塩分濃度は0.6~0.8%とされています。一般的な淡色辛味噌は塩分濃度が12%ですので、小さじ1(6g)の味噌には塩分が約0.7g含まれています。100ccのだし汁に、小さじ1の味噌を溶かせば、0.7%塩分の味噌汁の出来上がりです。この味噌汁の味を濃いと感じるか、それとも薄いと感じるか。まずは「自分の舌」を確認することから始めてみましょう。もしこの味噌汁が薄く感じるのであれば、あなたの舌は「濃い味好み」、つまり塩味に鈍感になっているのかもしれません。あなたが感じる「薄味」は実際には薄味ではないかもしれないのです。

 おいしくて、しかも適切な塩分量に行き着くために、しっかりとだしを取った「うま味スープ」をベースに、ごく少量の塩や味噌を加えることから始めてみてもいいと思います。

 我が家では、味なし離乳食をやめて、ほんのり味のついた離乳食にしたら、食べる量が増えてとても(うれ)しかったのを覚えています。

 さて、離乳食から幼児食への移行時、特に気を付けたいのが「窒息事故」です。保育園や幼稚園でも、節分の豆やデザートの白玉団子が喉に詰まってしまい、尊い命が失われる事故が後を絶ちません。乳児の最初の奥歯が生えて、上下の歯で食べ物をすりつぶすことができるようになるのは、1歳8か月頃からということですが、歯の生え方にはかなりの個人差があります。離乳食後期から幼児食に至るころには、まだ十分に咀嚼(そしゃく)する力はなく、歯茎や前歯で食べ物を噛んでいるのです。食べ物の形に気を付けることはもちろんのこと、一人で食べさせることはせず、しっかり見守り、声掛けをしながら、食事を楽しんでほしいと思います。我が家の娘たちも、誤って食べ物が気管に入ってしまい、ひやっとしたことが何度もあります。思い出せるものだけでも、干した小魚、(あめ)、グミ、薄切りのお肉などなど…。

 最後に、日本小児呼吸器学会・日本小児救急医学会が公表しているパンフレットから、事故を予防するための注意点について一部をご紹介したいと思います。

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七訂食品成分表2016 本表編 P92 女子栄養大学出版部 香川芳子監修

厚生労働省ホームページより

 

小児の気道異物事故予防ならびに対応」より一部抜粋

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塩野崎顔2_100

塩野崎淳子(しおのざき・じゅんこ)

 「訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術WOCクリニック内)」在宅訪問管理栄養士

 1978年、大阪府生まれ。2001年、女子栄養大学栄養学部卒。栄養士・管理栄養士・介護支援専門員。長期療養型病院勤務を経て、2010年、訪問看護ステーションの介護支援専門員(ケアマネジャー)として在宅療養者の支援を行う。現在は在宅訪問管理栄養士として活動。

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