文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

性とパートナーシップ

妊娠・育児・性の悩み

孤立した少女を支援する仁藤夢乃さんインタビュー(1)性に無防備な女の子に向けられる暴力

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
id=20170310-027-OYTEI50002,rev=3,headline=false,link=true,float=left,lineFeed=true

 ――知識がなく、無防備な状態で街に出ると危険ですね。

 「売春している女の子に、『それって売春だよね』と聞いたら、『え? そうなんですか?』と言われたこともあります。教科書では『売春』という言葉を使ってはいけないことになっているようで、売春とはどういうことなのか、何が性暴力で、どんな危険性があるのか、それによってどんなトラウマを持つ可能性があるのかということは誰も教えてくれません。『そういう仕事だと思っていた』という子もいます。特に、家族からも大事にされていない状況だと、売春をして自分が傷ついているということにも気付いていません。不特定多数との避妊をしない性行為を自傷行為のように繰り返している人もいます。それで病気になったりして心身共に傷を深めていくということもあります」

 ――そんな無防備な状態の女の子が街中に出ると、性的な視線を浴びますね。女子高生というだけで、どういう視線を向けられるものなのでしょうか?

 「私自身も10代の頃は、渋谷の街に10分ほど立っているだけでも、『僕とホテルに行かない?』と毎日のように誘われていました。電車でも痴漢にしょっちゅう遭っていましたが、怖くて『やめてください』と言えなかったし、あきらめていた気がします。10代の頃は、『胸ぐらい触られても減るもんじゃないし、どうでもいいや』と友達に話していました。本当は傷ついているのですが、傷ついていると思うのはいやだから、『自分は大丈夫』と思い込むためにそう言っていたのだと思います。電車に乗っていてもおじさんにじろじろ脚や胸を見られたり、学校の周りに露出狂が出たりということもよくありました」

 「私は当時、キャミソール1枚とか、すごく短いミニスカートなど、露出度の高い服装をしていました。それがかわいいと思って着ていた部分もありますが、『そういう自分っていいでしょ?』と性的な価値を意識していたこともあります。今、出会っている女の子たちも、女子高生であるということはすごく性的に高い価値がある、若いことに価値があるという意識を強く持っています。JK(女子高生の略語)という言葉も今では普通に使われていますが、あれは元々買春業者の人が、摘発されないように隠語としてネットで使い始めたという説があります。でも今は、女子高生自身も使っていて、高校3年生になると、『ラストJK(LJK)』とツイッターのプロフィル欄に書き込んだりもします。つまり、自分自身が女子高生でなくなることを惜しむような意味合いで使っているのです。大人の価値観が子供たちにも刷り込まれてしまっているんです」

 ――異常なことですが、日本ではそれが普通になってしまっていますね。

 「JKビジネス(女子高生であることを売りにマッサージやカフェ、散歩、観光案内などと称して、男性相手に少女に外出の同行などをさせる店。児童買春の温床になっていると国連からも指摘されている)を通してレイプされた高校生が、それをきっかけに自傷的に売春行為を繰り返していたこともありました。その時、たまたま海外のメディアがコラボに取材に来ていて、『なぜ日本では中高生に対してこんなことをしているんだ。おかしい!』と怒った時、女の子が当たり前のように『日本ではJKということに特別な価値があるんですよ』と答えました。それを聞いて、海外メディアの人は『ジーザス!』と言って天を仰いでいましたが、そういう感覚は多くの女子高生にあると思います」

 ――彼女たちに性的な視線を向ける男性はなおさらですね。

 「私と同年代の男性の知り合いと話をしていても、『若い女の子がいい』とか『女子高生と遊んだ』ということを自慢するように言っているのをよく聞きますし、コラボの男性スタッフも、男性の友達から『女子高生と関われるのはいいな』と言われたことがあるそうです。そういう男性たちの感覚が子供たちにも刷り込まれていると思います。最近ではJKビジネスで女の子を買っているのはおじさんだけでなく、高校生や大学生も多くなっています。高校生はお金もないのでまれですが、大学生は普通に買っているし、武勇伝にもなっている。先日、電車に乗っていた時に、若い男性が3人でしゃべっていて、『17歳の女の子とセックスした。若いから違うのかなと思ったけど、大して違わなかった』と笑いながら話しているのを聞きました。そんな話を公共の場で堂々とできてしまうのが日本の現状です。若い女の子とのセックスが自慢になるというのは本当におかしいと思うのですが、日本ではそれが当たり前になり過ぎて、誰も不思議に思っていません。そしてかつての私も、今付き合っている女の子たちも、自分にそういう価値があるということをいいことのように思い込まされてきたのです」

 ――なぜいいことだと思わされちゃったのでしょうね。

 「いいことと思うしかないというか、結局、利用されちゃっていたのでしょうね」

 ――女子高生に性的なイメージを重ね、若い女性の方が性的に価値があるとする価値観はどこで作られていると思いますか? 何によってその価値観は刷り込まれていくのでしょう?

 「メディアの影響も大きいと思います。雑誌やテレビも若い方がいいという価値観で作られていますし、アイドルもそう。若い女の子を応援するという形でアイドルを作っていますよね。実は買春している男性も『若い女の子を応援している』という意識でやっている人がたくさんいる、とこの活動をしていて気付きました。日本では児童買春のことを『援助交際』という言葉で呼んでいますが、あんなのは援助でも交際でもない。援助のつもりになって、買うことで自己肯定感を持つ男性がたくさんいます。本当に支えるなら、見返りなしでお金だけあげればいい。そこにあるのは、暴力と支配の関係性です。しかし、お金を介することで、子供への性虐待や暴力を正当化する人がたくさんいることを、『私たちは「買われた」展』を通して知りました。そういう人たちは、『売っていたから買った』『売るのが悪い』と、売る・売らない論に話をすり替えます。女の子たちが好きでやっているのだと考える風潮も根強くあります」

2 / 3

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

性とパートナーシップの一覧を見る

最新記事