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性とパートナーシップ

コラム

孤立した少女を支援する仁藤夢乃さんインタビュー(1)性に無防備な女の子に向けられる暴力

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仁藤夢乃さん

仁藤夢乃さん

 この連載「性とパートナーシップ」では、セックスやパートナーとの心のすれ違いについて探ってきましたが、それぞれの体験談を伺うと、幼い頃からの家族関係や性教育(性についてどのように学んできたか)が自身のセックス観やパートナーシップにも色濃く影響していることが感じられました。そこを掘り下げて考えてみようと、家庭や学校などとのつながりを失い、街をさまよう少女たちの居場所作りをしている「一般社団法人 Colabo (コラボ)」代表の仁藤夢乃さん(27)にお話を伺いました。

 【略歴】仁藤夢乃(にとう・ゆめの) 一般社団法人Colabo代表

 1989年、東京都生まれ。中学生の頃から東京・渋谷の路上をさまよう生活を始め、高校2年で中退。高卒認定の予備校での一人の講師との出会いをきっかけに、ボランティア活動を始め、明治学院大学に入学。東日本大震災の被災地支援活動を経て、家族や学校とのつながりを絶たれた若者の居場所作りをするColaboを設立。支援している少女たちが買春に至った背景や思いを文章と写真で訴える「私たちは『買われた』展」(2016年8月~)は全国を巡回し、大きな反響を呼んでいる。著書に『難民高校生』(ちくま文庫)、『女子高生の裏社会―「関係性の貧困」に生きる少女たち』(光文社新書)がある。

 ――まず、仁藤さんがどのような活動をなさっているのかご紹介いただけますか?

 「虐待やいじめなどに苦しんでどこにも居場所がなく、街をさまよっている少女たちに安心して相談できる居場所を提供し、支援する活動をしています。そういう女の子は性的な搾取の対象になりやすいという問題を社会に発信し、彼女たちが再び社会につながるきっかけ作りの事業を行って、自立支援もしています。昨年8月からは、東京や横浜、滋賀、京都などで、女の子たちが買春されるまでの背景や思いを自分たちの言葉や写真で発信する『私たちは「買われた」展』を行い反響を呼びました。私自身も家族仲が悪くて、家に帰らずに渋谷の街をさまよった経験があります。むしろ被害者である少女たちの方が、『非行に走った』などと非難されることも多いのですが、こうした少女たちが生まれる社会的な背景を広く伝え、見直すことが必要だと考えて活動を始めました」

 ――ご自身や今支援している女の子たちは、どのように社会から性的な働きかけをされてきたのでしょうか?

 「私が出会う女の子は、家や学校に居場所がなく、特に虐待や貧困があって、家にいられない状況になった時に性被害に遭ったという子がほとんどです。家でも殴られたり、性的な虐待を受けたりするので安全や安心を感じることができず、公的な福祉や教育からもこぼれ落ちて、中にはその日食べる食事や寝る場所のために売春せざるを得なかったという子もいます。そして、そのほとんどの子に性の知識がなく、セックスしたら妊娠することを、わかっていない人もいます」

 ――女の子たちは、性についてどのように学んできたのでしょうか?

 「聞いてみたのですが、『ほとんど教わったことないよね』という感じです。私自身、小学校高学年ぐらいで月経や、卵子と精子が出会って妊娠するという話を先生からされ、お母さんが子供を産む映像を見せられた記憶があります。それを男子が『うわー、気持ち悪い』とはやし立てたイメージが強く残っています。親から性に関する話をされたこともなく、もっとも両親との関係が悪かった中高生の時、夜遊びして家に帰らなくなって、『妊娠だけはしないようにね』と言われたぐらいです。今関わっている女の子たちは、学校にも行けていなかったり、学校で習うことが頭に入らないような精神状態にあったり、そもそも大人への不信感が強いから、偉そうな先生が話しに来ても、『そんなの知らねえよ』と聞く耳を持たない子がほとんどだと思います。『なんでコンドームつけなくちゃいけないの?』と聞かれたことがありますが、避妊のための知識だけでなく、性病のことはもっと知りません。実際に性病にかかった子が、焦って『こんなブツブツができた』と電話をしてきて、病院に行ってきた方がいいよと伝え、ほかの子も『やばい』『うちもそれになったことがある』と気付くという状況です。知識があったとしても、自分を大切にしたいと思えない状況にあると、避妊しようとか、身を守ろうと思えません」

 ――望まぬ妊娠や中絶も多いそうですね。

 「高校生と話していた時に、その子が『今月生理が来た。良かった』とつぶやいたことがあるんです。男性とコンドームなしでセックスして不安に思っていたようで、一緒にいた友達も『え? 生理来なかったらだめなの?』と聞いてくる。『生理が始まっていれば、中学生でも妊娠する可能性があるんだよ』というところから説明しています。そもそも、コラボに来る女の子たちは、生理不順の子が多いです。ちゃんと栄養のあるものを食べていなかったり、昼夜逆転したりしているから、不健康な状態です。私も高校生の時に半年間生理が来なかったことがあります。今なら知識があるから婦人科を受診しようと思えますが、中高生で親とそういうことを話せる状況にない子もいるし、虐待や貧困もある中でそもそも病院に行けません。保険証を使ったら親にばれるかもしれないし、生活保護を受けていたら医療券がないと受診できないので、役所のおじさんのところで手続きをすることがハードルが高い。アフターピル(緊急避妊薬)をもらいに行ったとしても説教する医者に当たったりして、またそこでいやな思いをする可能性もあります。『よく来たね』と言ってくれる病院が増えてほしいです」

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岩永直子(いわなが・なおこ)

社会部、医療部を経て、2015年5月からヨミドクター担当(医療部兼務)。同年6月から2017年3月まで編集長。医療部ではがん全般や感染症、遺伝子医療、セクシュアリティーなどを担当。夫と二人暮らし。趣味は居酒屋巡りとダイエット。

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