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ヨミドクターセミナー「ロコモ予防!健康な足腰をつくる運動の効果と方法」

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ロコモ予防! 健康な足腰をつくる運動の効果と方法(2)“ロコトレ”を紹介

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自分の状態がわかるロコモチェック

ロコモ予防! 健康な足腰をつくる運動の効果と方法(2)“ロコトレ”を紹介

インストラクターと一緒にスクワットを実践する石橋・伊奈病院整形外科部長(2月9日、読売新聞東京本社で)=高梨義之撮影

 ロコモは知らないうちに進んでいきます。痛みが出たりすれば気がつきやすいのですが、徐々に運動機能が落ちてくるのはわかりにくいのです。一般的に、若く元気なときに比べて、運動機能が3割ぐらいにまで落ちないと、生活に支障を感じないようです。生活で困ったら「何とかしなきゃ」と考えますが、困らなければ「年のせい」で済ませてしまいがちです。

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 ただ、生活で困るほどにまで落ちてしまうと、運動しようと思ってもなかなかできず、回復が難しくなります。だからこそ、運動器が弱くなってきたことを早めに察知することが大事です。

 早めの察知法には、ロコモーションチェックとロコモ度テストがあります。まず、ロコモーションチェックについて説明します。

 これは、ロコモのリスクの自己チェックリストで、7項目のうち1個でも該当項目があるとロコモの可能性があるとされています。

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 〈1〉「片足立ちで靴下がはけない」…普段、できているかを考えてみてください。

 〈2〉「家の中でつまずいたり、すべったりする」…この半年間程度でそういうことがあったか。

 〈3〉「階段を上がるのに手すりが必要である」…下りるときは念のためなので、手すりを使うのはいいのですが、上がるときも必要だったらちょっと弱っています。

 〈4〉「家でのやや重い仕事が困難である」…掃除機をかける、布団の上げ下ろしをするというような家事が簡単にできるかどうかです。

 〈5〉「買い物をして、2キロ・グラム程度の荷物を持ち帰るのが困難である」…2キロ・グラムは牛乳パック2本分ぐらいなので、元気な人だったら何でもない重さですね。それもちょっと難しくなってきたら心配です。

 〈6〉「15分くらい続けて歩くことができない」…スタスタ歩いて1キロ・メートルぐらいの距離です。

 〈7〉「横断歩道を青信号で渡りきれない」…歩く速度が遅くなっていないかどうかですが、ここまで遅くなっている人は少ないですね。

 中高年を対象とした調査研究では、7個のうち1個でも当てはまったグループは、「そうではない」という人と比べて、いろいろな運動機能が低下していることが統計学的にもはっきりしています。

 例えば、バランス能力をみるために、「片足で何秒立てるか」というテストをすると、該当項目がないグループの人は平均1分間の片足立ちができます。該当項目が1個以上あるグループは約30秒です。このように、1個でもある方は、すでに運動機能が落ちているわけです。骨や筋肉は年齢とともに弱って、減ってくる。これは仕方ない。ただし、すでに運動機能の衰えている人は、先々がさらに心配なので、すぐに対策を始める必要があるわけです。

 次が、「ロコモ度テスト」という運動機能評価や質問票によるロコモの判定法です。

「立ち上がりテスト」「2ステップテスト」「ロコモ25」という三つのテストで構成されています。

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 「立ち上がりテスト」は下肢の筋力を評価するテストです。10センチから40センチまでの高さの椅子などに座った状態から、それぞれ片足、または両足で立ち上がれるかどうかで下肢の筋力を評価します。両足ならほとんどの人が40センチから立ち上がれますが、片足ではそう簡単ではありません。まず、片足で40センチができれば30センチ、20センチと条件を厳しくしていく。片足40センチでできない方は、両足で10センチとか20センチなどでやってみる。

 片足で40センチの台から立ち上がれなくなったら、ロコモの始まりです。家の食卓椅子の高さがおよそ45センチですので、ぜひ試してください。実は、このテストは女性の方ができる人が多いです。同じ高さの椅子なら、小柄な人のほうが有利ですから。このことから、身長に応じてテストする高さを調節する必要はないかと聞かれることはありますが、身長の違いで異なる高さの椅子を使うことは実際の生活ではないので、テストも同じ高さで評価するとお考え下さい。

 まず今の時点で立ち上がりテストをやってみて、「最近、運動しなくなったな」「弱ってきたな」と思ったときに再度やってみると、以前にできていたものができなくなったことに気づいたりします。逆に、運動を続けると、以前はできなかったことができるようになることもありますので、そうした変化に気づくことができます。

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 次は「2ステップテスト」と呼ばれる、歩幅を測る方法です。最大2歩幅を測定することで、下肢の筋力、バランス、柔軟性を見ます。

 運動機能にとって、歩幅は大事な指標になります。歩くスピードは重要で、「歩行速度の遅い人は10年後に要介護になりやすい」との研究結果がありますし、「寿命も短い」とのデータが海外の研究で報告されています。

 人は年を取ると、歩くのが遅くなります。歩行速度は、歩幅とピッチ(歩調)の二つで決まります。ピッチは年を取ってもあまり変わりません。歩行速度が遅くなるのは多くの場合、歩幅が小さくなることが原因です。つまり、歩幅は歩行速度との関連が大きく、さらに運動機能全般の評価になります。やり方は簡単です。両足を (そろ) えて立ち、転ばないように気をつけながら、できるだけ大股で2歩進んで両足を揃えて止まります。進んだ距離(センチ)を測って、身長(センチ)で割ります。割り算の答えが、2ステップ値になります。

 岩永 家庭で歩幅を測定するときは、どうすればいいでしょうか。

 石橋 壁にかかとをつけて立ち、そこをスタートにして大股で2歩進んでください。つまずいたり、ぶつかったりしそうな物は片づけておいてください。止まった場所のかかとの位置にボールペンなどを置いて、壁からの距離をメジャーで測ればいいと思います。例えば身長158センチの人が2歩で224センチ歩いたら、「224÷158」で1.42。これが2ステップ値になります。つまり、2歩で身長の何倍進んだかということです。この方は1.42倍ですが、この値が1.3未満になるとロコモが疑われます。

 詳しくは整形外科学会の「ロコモチャレンジ!推進協議会」のホームページを参照いただければと思います。ここでは説明しませんが、「ロコモ25」という足腰の症状や機能、生活状況に関する質問票の説明も見ることができます。

日常生活に運動を取り入れるメリット

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「歩幅は大事な指標になります」と語る石橋・伊奈病院整形外科部長(2月9日、読売新聞東京本社で)=高梨義之撮影

 ロコモの対策は、まず運動習慣を身につけることです。運動は、大きく有酸素運動と筋力トレーニングに分かれます。有酸素運動はウォーキング、ジョギング、自転車、エアロビクスなどです。有酸素運動では、心拍数が上がって、心臓や血管が酸素を運ぶ能力が高まり、脂肪が燃焼します。一方、筋力トレーニングは、実際に筋肉を使って筋力を高めること。腹筋や背筋、スクワット、ダンベルなどを持ち上げる運動が代表的ですね。

 運動はやれば必ず運動機能が上がります。ただし、やめると必ず悪くなります。だから、続けることが大事なのです。「1か月続けたから、あと10年大丈夫」なんていうことは絶対にありません。

 そこで続けられる工夫をすることが大切になるわけです。何かの運動を仲間とグループで続けるとか、フィットネスやジムなどに行って、知り合いを作りながらやっていくなど、自分にとって続けやすいような運動を見つけるのも大事ですね。

 外出すること自体も、よい身体活動になります。生活の中で、できるだけ歩くようにすること。そのときには、ちょっと早めに歩くことを意識してください。買い物に行くと、帰りは荷物があるので難しいかもしれないけれど、行きは駅までできるだけ早めにスタスタ歩くようにしてください。階段も積極的に利用する。エスカレーターと階段が並んでいたら必ず階段を上るようにします。荷物が多かったり、膝が痛かったりなどケース・バイ・ケースではありますが、可能な状況であれば必ず階段を使うようにする。

 社会参加も大切な要素です。仕事を続けるのはいいことですね。ボランティアなんかもいいでしょう。仕事をやめたあと、女性の場合はいろいろな付き合いや出かけるところがありますが、男性は社会性がぐっと落ちると言われています。とにかく積極的に外に出る機会を作るようにしてください。

 運動のメリットは、運動機能の維持や改善だけではありません。

 内科的な病気の多くのガイドラインで、運動の効果が記載されています。ガイドラインとは、ただ「こんなことをしたらいいよ」といった曖昧なものではなく、「臨床試験でこういう介入をしたら、こんな結果が出た」という医学的エビデンスの集大成です。

 糖尿病のガイドラインには、有酸素運動と筋力トレーニングがともに血糖コントロールに有効であると書かれています。

 高血圧のガイドラインには、1日30分程度の中等度の有酸素運動が有効となっています。中等度というのは、軽く汗ばむ程度のややきつめの運動です。すごく頑張らなくてもいいけれども、のんびり歩いているだけではダメ。「ちょっときついかな」と感じるぐらいの強度です。

 脂質異常、高コレステロール症も、ガイドラインによると1日30分以上、週3~7日の中等度の有酸素運動が有効となっています。

 認知症も、運動習慣がある人の方がなりにくいと考えられます。軽度認知障害(MCI)の人が運動習慣を身につけると、認知症への移行が減ることが報告されています。最近ちょっと物忘れがひどいなと思ったら、まずはウォーキングなど運動を始めてみてください。

 ロコモになって体の動きが悪くなると、高血圧、高脂血症、糖尿病など生活習慣病の発症リスクが上がります。生活習慣病はやがて脳梗塞、心筋梗塞などの原因になります。

 さらに、運動機能が落ちてくると外出が少なくなるなどの社会性の低下から、抑うつ傾向が出てきたり、引きこもりのようになったりすることも考えられます。認知症やうつ病の予防のために何をすればいいのかは難しいですが、体を動かすことは取り組みやすい対策と言えます。そして、意欲的に元気に過ごせることで、また運動機能もよくなっていく好循環になります。

 次は栄養のことです。70歳以降は低栄養を回避するため、十分なたんぱく質を取るのが大事です。

 岩永 目安はどのくらいですか。

 石橋 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」におけるたんぱく質の推奨摂取量は、女性は1日50グラム、男性は60グラムです。体重1キロ当たり、だいたい1グラムのたんぱく質です。牛肉や豚肉には100グラム当たり約20グラム、魚なら約25グラムのたんぱく質が含まれています。100グラムの肉を1日3回食べるわけにはいかないと思いますので、1日1回は適度な分量の肉を食べて、牛乳を飲み、魚も同じ分量ぐらい取るようにすること。植物ですが、大豆のたんぱくなどもいいですよ。

 岩永 豆腐などですかね。

 石橋 たんぱく質は、筋肉や骨も含めて人間の体を作る材料になります。たんぱく質はアミノ酸という「部品」が長くつながってできています。人間のすべてのたんぱく質は20種類のアミノ酸からできていますが、そのうち9種類は体で合成されず、食事から取る必要があります。この9種類のアミノ酸のことを必須アミノ酸といいます。動物性たんぱくにはこの必須アミノ酸がたくさん入っていますので、特に重要です。ただし、植物性でも大豆のたんぱくは必須アミノ酸が多く、優れたアミノ酸バランスになっています。

 岩永 卵はどうですか。

 石橋 もちろん、いい食品です。

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