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室伏由佳のほっこりスポーツカフェへようこそ

コラム

子供の頃の運動習慣! どんな運動遊びがいいのか?(下)

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 みなさん、ほっこりスポーツカフェへようこそ! 3月になり、少しずつ暖かくなってきました。春が待ちきれませんね。もう少しすると、お花見の計画などされる方もいるでしょうか。気候が良くなると、運動などで体を動かすのもとても気持ちよくなりますね。

 前回は、子供の頃の運動習慣について書きましたが、今回もその続きを書いてみます。しばしば小学校での運動教室や講演などにうかがう機会がありますが、「子供たちの投げる力が落ちている」。そのようなお話を聞くことがとても多くあります。ある時、うかがうことが決まっていた小学校から、「全校生徒を対象に投げ運動を教えてほしい」というお話があったことも。児童数が500~600人ほどでしたので、さすがに一斉に投げ運動はできません(笑)。残念ながら、他の運動遊びにさせていただきました。しかし、何かこうしたきっかけを作る必要性が高いほど、「投げる力が落ちている」ことは、切実なものになっているのだと感じました。

 投げる力の低下は、どうやら「投げる場所がない」ことが要因の一つのようです。たしかに、都内などで「ボール投げ禁止」と書いてある看板はよく見かけます。投げる運動は、全身をバランスよく活用しなくてはコントロールできません。投げる動作は、子供の発育・発達の段階でずいぶん投げ方が変わるはずです。幼児が突然、振りかぶって投球動作をすることはできないでしょう。発育・発達や経験の頻度などに応じて、だんだんと高度な動きを身につけていくのだと考えられます。

 投げる動作は主に、身体の中心を支える「体幹」(胴体や骨盤周り)の安定性がとても大きく関わります。身体をひねりながら、重心を移動させて、力を投げる物体に伝える。コントロールをする。一本の木に例えるとわかりやすいかもしれません。身体が木の幹だとしたら、脚は根、腕は枝葉というように捉えることもできます。投げるのは手ですが、実際は地面を踏ん張る足、 大腿(だいたい) 部(太もも)が実は重要な役割を果たします。複雑な身体の動き、その「巧みさ」をつかむ一つの方法が、投げ運動だとも感じています。

写真1

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 子供たちの投げ運動の環境をどう整備するかは難しい課題ではあると思いますが、やはり、発達の時期を逃さず、運動遊び程度でも触れていくことが大事だと思います。前回のカフェでも紹介しましたが、遠くに投げることが困難な場合、的当てのようなゲームを行うことで、「投げるための体の使い方」を練習することができます。自身の利き手で投げるだけでなく、両手で投げる遊びもいいかもしれません(写真1)。この場合、ボールの大きさはハンドボールぐらいのボールや、もちろんバスケットボールぐらいでもいいでしょう。子供の身長や手のサイズに合わせてボールを選びます。

写真2

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 投げ方の種類としては、踏み出しやすい方の足を一歩前に踏み出しながら、上体を後ろにそらすことを基本とし、頭上で投げ出すオーバースローや、バスケのパスのように手首を使う投げ方なども、タイミングを取りながら投げなければならない複雑な動きです。また、脚の間にボールを構え、下から前方に投げ出すアンダースローや、その後ろ向きバージョンなども脚や胴体をうまく使わなければボールに力が伝わらない複雑な運動になります。子供の運動遊びですので、得点を決めたカラーコーンをめがけて投げるのもとても面白いですね(写真2)。5~10m先にカラーコーンを置き、3回など回数を決めてお友達と勝負をします。狙いを定めた方向に投げ出すことができるか、とても盛り上がりますし、「さっきよりうまくやってみよう!」という期待感も持ちながら楽しめる運動遊びの一つになると思います。

 走る、跳ぶといった運動も同じことですが、一つに定めず、多くの種類の運動をすることが神経系の発達につながります。大人になってからでは獲得するのがとても困難な感覚も多くあると思いますので、子供の頃に身体の機能的動作(腕の上げ下げやしゃがみ込みなどの基本的な機能)を発達させてあげる運動遊びをぜひ積極的に取り入れてみてください。また、こうした内容もチャンスがあれば書いてみたいと思います。それでは皆さん、また次回、お花見の時期にカフェでお会いしましょう!

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室伏由佳(むろふし・ゆか)

 1977年、静岡県生まれ・愛知県出身。株式会社attainment代表取締役。2004年アテネオリンピック女子ハンマー投げ日本代表。円盤投げ、ハンマー投げ2種目の日本記録保持者(2016年4月現在)。12年9月引退。

 アスリート時代には慢性的な腰痛症などスポーツ障害や婦人科疾患などの疾病と向き合う。06年中京大学体育学研究科博士課程後期満期退学(体育学修士)。スポーツ心理学の分野でスポーツ現場における実践的な介入をテーマに研究。現在、スポーツとアンチ・ドーピング教育についてテーマを広げ、研究活動を継続。現在、上武大学客員教授、朝日大学客員准教授や、聖マリアンナ医科大学スポーツ医学講座、徳島大学医学部、中央大学法学部など、複数の大学において非常勤講師を務める。スポーツと医学のつながり、モチベーション、健康等をテーマに講義や講演活動を行っている。日本陸上競技連盟普及育成部委員、日本アンチ・ドーピング機構アスリート委員、国際陸上競技連盟指導者資格レベルIコーチ資格、JPICA日本ピラティス指導者協会公認指導師。著書に『腰痛完治の最短プロセス~セルフチェックでわかる7つの原因と治し方~』(角川書店/西良浩一・室伏 由佳)。

公式ウェブサイトはこちら

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1件 のコメント

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専門バカの否定と発達の多様性

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

前回、今回と、スキャモンの発達曲線理論に基づいたゴールデンエイジでの発達の重要性が書かれています。 幼児教育よろしく、その重要性はもちろんですが...

前回、今回と、スキャモンの発達曲線理論に基づいたゴールデンエイジでの発達の重要性が書かれています。

幼児教育よろしく、その重要性はもちろんですが、それ以外の年代の努力が無意味なわけではないし、しばしば、途中ではじかれた才能や遅れてきた才能が世界を動かすのはサッカーの日本代表だけではありません。

それだけ、人間の心身の発達というのは奥深いものです。

多分、若いころからセレクトされて、競技をトップレベルで続けられた室伏さんの方が実感されているでしょう。

一つのことを突き詰めた強みは、そのまま弱みでもあります。

それが、いくつかのスポーツでのトップ選手の成長の壁になっていますし、医療業界でも過度の専門医療が患者不在の医療の一因になっています。
(それで、総合診療医が新設されました)

休みも、遊びも練習のうち。

世の中、世知辛いですから、目に見えるお金や実績ばかりを追う人ばかりです。

競争や実績も大事ですけど、成長や幸福という概念はもっと大事だと思います。

プロ選手やメダリストよりも、もっと多くの人間が遊びや競技から学び、ビジネスや国家に還元しています。

そういうサイクルで考えると、本来はもっとプロにもアマにもスポーツに投資されてもいいと思います。

サッカーも究極はサーカスですが、ミサイルや飛行機、ドローンがある時代にハンマーを投げる意味はどこにあるのか?

直接金にならなくても、学びはあると思います。

Aiに替えられない人間の存在の本質を知る術かもしれません。

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