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小林麻央さん、乳がん闘病のブログ…「勇気づけ」が呼ぶ共感

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苦境嘆かず前に進む

 乳がん闘病中のフリーアナウンサー、小林麻央さん(34)のブログが人気だ。開始から半年で読者は180万人を超える。一般的な有名人ブログとは少し違う、共感を呼ぶ力があるようだ。

  なりたい自分になる

 そんなタイトルで2016年9月1日、ブログ「KOKORO.」を始めた小林さん。乳がんがわかったのは14年10月だが、それまで自ら公に語ることはなかった。「がんの陰に隠れないで」という主治医の言葉が、心を動かしたという。

 初日のブログには、こんな一節があった。

  私は

  力強く人生を歩んだ女性でありたいから

  子供たちにとって強い母でありたいから

 終盤には、病気のため子育てが十分にできず心を痛めている母親たちに向けたメッセージも。

  あなただけでなく、私も同じですと伝えたいです。

小林麻央さん、乳がん闘病のブログ…「勇気づけ」が呼ぶ共感

麻央さんのブログには姉でフリーアナウンサーの麻耶さんも度々登場。家族の絆がうかがえる

 「『私一人じゃなかった』と孤独から抜け出し、一歩踏み出す勇気をくれた」と話すのは、3児の母で、2年前からステージ4の肺がんを患う静岡県の女性(39)だ。この女性は、ブログのコメント欄で、病気の人もそうでない人も自身の苦境を告白している例が多いことに着目。「ほかの有名人ブログにはないこと。人間関係が希薄になった今、麻央さんのブログは、多くの人の身近なお姉さんや娘、友だちの役割をしているようです」と話す。

 この半年、ほぼ毎日続いているブログは、診断の経緯や治療に関する内容もあるが、夫で歌舞伎役者の市川海老蔵さんと2人の子どもをはじめ家族と過ごす日常の小さな幸せが、詩のような短い文章でつづられる。「運動会を見に行く」「食事を食べ終える」など、小さな目標を達成した喜びや、周囲への感謝の気持ちが度々書かれるのも特徴だ。

 小林さんと同じ乳がんで、3人の幼い子どもがいる大阪府の女性(38)は「私も、自分を支えてくれる家族への感謝の気持ちがあふれてきました」と読後感を語っている。

 ブログの内容は、昨今、自己啓発の手法として日本でも注目されている アドラー心理学 の実践例という読み方もできるようだ。

 アドラー心理学に基づくカウンセリングや企業研修を行うヒューマン・ギルド代表取締役の岩井俊憲さん(69)は、人気の理由について、アドラー心理学のキーワードである「勇気づけ」にあるとみる。「彼女は、なぜ病気になったのかなどと苦境を嘆くよりも、目標に向け一歩一歩進む。そして、私も頑張っているけど、あなたもそうだよね、という共感のスタンスで言葉を発信していて、それが人を勇気づけ、困難を克服する活力を与えている」と岩井さん。

 静岡県の女性は「彼女は愚痴をあまり書かないから、苦しくないだろうか」と心配もしている。

 岩井さんは「本来は感謝どころではない状況なのに、繰り返し感謝を表明する彼女は、究極の楽観主義者。それは意思的なもので、そのことによって彼女自身も勇気づけられているのだと思います」と指摘している。

  アドラー心理学  オーストリア出身の精神科医、アルフレッド・アドラーが創始した。過去の原因ではなく、自分が今どうしたいかという目的に重点を置いて心理分析する。過去は不変だが目的は変えられるため、その理論が勇気や希望につながる思考法に応用されている。(高梨ゆき子)

→医療大全「乳がん」
/iryo-taizen/archive-taizen/OYTED551/

→病院の実力「乳がん」
/byoin-no-jitsuryoku/archive-jitsuryoku/?has-enquete=has-enquete&disease=OYTED551

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