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小泉記者のボストン便り

コラム

病院で新鮮な野菜や果物を無料提供 注目のフードパントリー

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病院で新鮮な野菜や果物を無料提供 注目のフードパントリー

フードパントリーの外観。病院内でも目立ちにくい場所にあり、室内が見えないように配慮されている。

 ボストンには大規模な医療機関が集まっていますが、その一つ、「ボストンメディカルセンター」では、糖尿病やがんなど様々な病気を患う低所得層の患者に無料で新鮮な野菜などを提供する「 フードパントリー 」を病院内に設置し、注目を集めています。貧困層の患者を積極的に受け入れている同センターの患者の中には、新鮮な野菜を売っているスーパーが近くにない地域に住んでいる人も多く、食生活の改善なしには治療も進まないため2001年に始まった取り組みです。提供する野菜を使った料理教室も院内で開かれ、患者やその家族の生活習慣の改善や健康維持に役立っています。

患者の症状に合わせて野菜や果物を提供

 「新鮮な野菜はとても高くて、頻繁には買えない。妊娠もしているし、子供も小さいので栄養のある食べ物をもらえるのはとても助かる」。同センターの地下1階にあるパントリーで、4歳の長女と順番待ちをしていた女性(31)はそう話します。女性は、夫と長女の3人でボストン郊外に暮らしています。出産を3か月後に控え、健診のために同センターを定期的に訪れてパントリーを利用しています。

 食料の提供が必要かどうかは、医師が患者の栄養状態に加えて、食べ物を十分に買うお金があるかなど生活の状況を尋ねた上で、総合的に判断します。支援の対象になった患者は、最大で月に2回、家族全員分の野菜や果物など3~4日分を無料で受け取ることができます。患者に渡す食料は、近くの「フードバンク」から定期的に提供を受けています。フードバンクとは、包装が破れてしまい賞味期限内でも売ることができず廃棄される食料や、形が不ぞろいで規格外になった野菜を農家や企業などから集めて生活困窮者に配る民間組織です。フードバンクの全国組織「Feeding America(フィーディングアメリカ)」によると、フードバンクは全米に約200か所あり、地域で食料を提供するフードパントリーは約6万か所にも上り広く活用されています。

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一家族分の食料。セロリやパプリカ、イチゴなど野菜や果物が多い

 同病院では、フードバンクのほか、取り組みに賛同する企業からの寄付も多く寄せられています。パントリーには、セロリやレタス、玉ねぎ、ほうれん草、リンゴなどの新鮮な野菜や果物のほか、冷凍の肉や、魚の缶詰、シリアル、牛乳など様々な食品が並びます。患者に渡す食料は、パントリーの責任者で、栄養士のラチャマン・ヒララルさんが、カルテを確認しながら、患者自身の症状や、家族の状態に合わせて決めます。ヒララルさんは、「患者の中には、レンジで温めるだけのパスタや砂糖付きのコーンフレークなど手軽で安価な高カロリー、低栄養の食品ばかりを食べている人も多い。肥満傾向がある人には、新鮮な野菜とフルーツを中心に、低脂肪で、塩分が低い食品を渡すことを心掛けています」と話します。

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フードパントリーの責任者を務めるヒララルさん

 同センターのパントリーは、2001年10月に始まりました。きっかけは、多くの低栄養状態の子どもたちが小児科を受診していたことでした。ヒララルさんは、「栄養状態の良くない子供たちは頻繁に風邪などをこじらせて重症化してから、小児科で治療を受けていた」と振り返ります。医師が母親に「もっと栄養のあるものを食べさせて」と指導をしても、「食べ物を買う経済的な余裕がない」と話し、改善しない例が多かったといいます。病院では、治療をするだけではなく、患者の置かれている社会的な状況にも目を向けて根本的に問題を解決しようと、医師や栄養士らが話し合い、パントリーを病院内に作ることを決めました。小児科と、妊娠している女性を対象に始まった取り組みは、2006年からは、病院のすべての科に広がり、今ではがんやエイズ、糖尿病などの様々な患者が利用しています。当初は月500人程度の利用を見込んでいましたが、現在は月に平均約7000人、年間では平均約8万人から8万5000人が利用しています。

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koizumi

小泉 朋子(こいずみ・ともこ)
2003年読売新聞東京本社入社。金沢支局、編成部を経て、2009年から社会部。10年から厚労省担当となり、生活保護受給者の増加の背景を探る「連載・生活保護」や認知症の人を取り巻く状況を取り上げた「認知症」などの連載を担当。13年から司法クラブで東京地・高裁、最高裁を取材し、「認知症と賠償 最高裁判決へ」「隔離の後に ハンセン病の20年」の連載など担当。2016年7月からハーバード大学公衆衛生大学院に研究員として留学中。

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