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マンモグラフィーに向かない高濃度乳房…自治体が通知、超音波併用も

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マンモグラフィーに向かない高濃度乳房…自治体が通知、超音波併用も

 自治体検診で、国が40歳以上の女性に推奨する乳がん検診法・マンモグラフィー(乳房エックス線撮影)。日本女性にはこの方法だけではがんの有無を判別しづらい、乳腺の密度の濃い「高濃度」の乳房が目立つ。だが、異常が見えにくい乳房でも「異常なし」とだけ受診者に通知する自治体が多い。どう対処すべきか、いま議論が進んでいる。

 今月8日、東京・永田町で開かれた国会議員の勉強会。検診の実態について、野田聖子衆院議員が厚生労働省の担当者に迫った。

 「高濃度乳房だとがんが写りづらいことを、女性は知らされていない。私も知らなかった。知らせないとまずいのではないか」

 厚労省側は「学会で(一律の通知は)時期尚早との意見がある」と答え、今後、国の検討会で議論する方針を明らかにした。

 乳房は乳腺の密度が濃い順に、高濃度、不均一高濃度、乳腺散在、脂肪性の四つに分類される。密度が濃いとマンモ画像では全体が白く写り、同じく白く写るがんを見つけにくい。マンモに不向きとされる高濃度と不均一高濃度は日本女性の5~8割との指摘がある。

 この弱点をカバーするのが超音波検査だ。超音波では、がんのしこりが黒く乳腺が白く写る。国の大規模研究で、マンモと併用することで早期発見率が1・5倍に高まることが分かった。ただ現時点では国の指針では推奨していない。検診に加えることで死亡率が減少するか、まだ不明だからだ。超音波を追加で希望する人は医療機関で、自費で受けることになる。

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 国の乳がん検診の指針では、結果を「異常なし」か「要精密検査」のいずれかで返すよう定めている。自治体検診では、乳腺のタイプや密度は必ず判定され、詳細な結果票には記録されているが、本人にはほとんど知らされていない。

 受診者に、高濃度で見えづらいこと、超音波を加える選択肢があることを、文書や口頭などで通知している自治体もあるが、実態はよく分かっていなかった。問題視した乳がん体験者らは、「結果の詳細を知る権利がある」と、改善を求め、声を上げた。

 現状はどうなっているのか。読売新聞が今月、主要131自治体に調査したところ、対策として通知や超音波検査などを実施しているのは、予定も含めると40自治体となり、昨年3月の前回調査(16自治体)から大幅に増えた。

 和歌山市は医師会と議論し、昨年夏頃から通知を始めた。神奈川県大和市は市民の要望を受け、来年度から通知し、超音波追加の希望者は、市が費用を負担する方針だ。

 多くの自治体の担当者は、「本来は伝えるべき情報」と認める。一方で、「県から通知を止められている」「専門医に、通知すべきでないと言われた」などの嘆きも漏れる。国が方針を示さないために、自治体が板挟みになっている状態だ。

関係学会 課題整理、提言へ

 高濃度乳房への対応を巡り、日本乳 がん 学会などは、昨年設置した作業部会で課題の整理を行っている。

 高濃度と不均一高濃度の全員に通知すると、超音波の追加希望者は膨大な数になる。専門医らは「外来に女性が殺到すると、診るべきがん患者を診られない」と懸念する。ただ実際に通知を始めたある自治体の担当者は、「超音波を加えたことによる医療機関の混乱は見られない」と話す。

 仮に、自治体検診に超音波を加えるとなれば、結果的にがんではない多くの人を再検査対象に拾い上げるなどの不利益がある。検査を行える熟練した技師の数もまだ十分でなく、環境整備に多額の費用がかかる。

 学会などは近く、この問題に関する提言をまとめる予定だ。医療ジャーナリストの増田美加さんは「受け皿の未整備は通知を控える理由にならない。通知を、女性の健康意識を高める機会と捉え、前向きに対策を講じてほしい」と話す。

 (佐々木栄、鈴木希)

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