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主な精神疾患の治療指針を作成…薬の処方などに統一性

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患者側も疑問払拭に

 精神科ではこれまで、医師が代わると治療方針や処方内容が大きく変わる例が珍しくなかった。患者に不信感や不利益を与えかねないため、近年、主要な精神疾患の治療指針が相次いで作成された。

 現時点で適切と考えられる治療や、推奨されない治療などが分かるので患者や家族にも一読と活用をお勧めしたい。

主な精神疾患の治療指針を作成…薬の処方などに統一性

精神科医がうつ病の治療指針の活用法などを学んだ講習会(昨年10月、九州大学で)

 治療指針は、治療ガイドラインとも呼ばれる。精神科では作成が遅れていたが、2011年に日本うつ病学会が双極性障害の治療指針を、12年にはうつ病の治療指針をそれぞれホームページで公開。15年には日本神経精神薬理学会が統合失調症の薬物治療指針をホームページで公開した。

 16年秋には治療指針を有効に活用してもらおうと、精神科医を対象とした「EGUIDEプロジェクト講習会」が始まった。全国の主要な大学が手を組んだ長期的な取り組み。受講者は、うつ病の治療指針と統合失調症の薬物治療指針のポイントや生かし方を1日ずつ学ぶ。今年度は北海道大学や東京大学、慶応大学などで計18回行われる。

 九州大学で昨年10月に行われたうつ病の治療指針講習会では、約30人の受講者を前に講師が「精神科は各大学で独自の薬の使い方が伝承され、出身校ごとに処方が異なることもあった。統一的な治療指針の普及が大事だ」と強調した。

 プロジェクトを率いる大阪大学病院神経科・精神科准教授の橋本亮太さんは「受講者が全国の医療機関に広がれば、精神科医療の質は飛躍的に上がる。指針を学ぶことで受講者の処方内容がどう変わったかを調査し、公開したい」と話す。

 統合失調症の薬物治療指針が強調するのは、幻聴や妄想を抑える抗精神病薬の使用を原則1種類にする単剤化だ。日本では、複数の抗精神病薬を併用する多剤大量処方が科学的根拠もなく習慣的に行われ、患者は重い副作用に苦しむ例が多く指摘されている。指針は、症状が再度悪化した患者にも「抗精神病薬の併用治療を行わないことが望ましい」と明記した。

 うつ病の治療指針は、軽症患者に対して「まず薬ありき」でなく、患者の背景を理解し支える「支持的精神療法」を最優先の治療として挙げた。うつ病患者にも処方されやすいベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬は、適正量でも長期使用で薬物依存に陥る恐れがあることなどから、安易な処方を戒めた。

 これらの指針は医師向けだが、患者や家族が目を通しておくと不適切な治療から身を守ることができる。

 うつ病の治療指針の作成にあたった九州大学病院精神科神経科教授の神庭重信さんは「治療に疑問を感じたら、指針を主治医に見せて質問してほしい。治療は納得して受けることが大切で、患者と医師の信頼関係が深まり、より良い効果につながる」と話す。

 分かりやすい治療指針も求められている。神庭さんは「精神科以外の医師や一般の人向けに、患者や福祉関係者らの意見を盛り込んだ治療指針づくりを検討したい」と語る。治療指針を核に、精神科医療は変わろうとしている。

  治療指針  世界中の研究論文などを基に推奨される治療法などを明示した文書。最新情報を盛り込み、数年で改訂されることが多い。日本では各種のがんで作成が進んだ。がんの治療指針は患者向けも出版されている。(佐藤光展)

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