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元ちゃんハウスより~がんと生きる医師・西村元一の手紙

コラム

患者は科学的根拠に基づいた標準治療+αを求める!

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患者は科学的根拠に基づいた標準治療+αを求める!

色々お参りに行った時にお守りを集めています‼ これで闘病の気合いを入れます

 病気が見つかる前、大腸がんの治療は基本的にはエビデンス(科学的根拠)に基づいた標準治療の順守を基本として、年齢や生活状況、そして患者・家族の思いなど患者さんの背景を考慮して医療を行ってきました。

 しかしながら、患者さんにいろいろ聞くとわらにもすがりたいという思いから標準治療に加えて“がんに効く”とされる寺社やラジウム温泉などに行ったり、様々なサプリメントや健康効果をうたう水などの代替医療的なものを手に入れて服用したりする患者も少なくありませんでした。

 代替医療的なものに関しては患者自身が興味を持って手に入れる場合もありますが、家族や親戚がいろいろな情報をもとに手に入れた場合も少なくありません。そのような場合には、患者さん本人が「できれば服用したい」と言う場合もありましたが、逆に、本人は服用したくないのに板挟みになってしまい困惑しながら相談してくることもありました。

 代替医療的なものに関して、自分自身のスタンスとしては、治療の妨げにならず、また特別高価なものでなければ、基本的に口を挟むことはありませんでした。当然、それらの効果を期待したということではなく、認めることにより本人や家族、親戚の思いが達せられることは決して無駄ではないと思っていたからです。

 上記のような申し出に関しては頭ごなしに否定する医師もいますが、治療の妨げにならないのであれば認める、もしくは話(もしくは思い)を聞いた上でやんわりと自分の否定的な意見を伝えるくらいの配慮があっても良いような気がします。頭ごなしに否定されたことがトラウマとなり、医師に隠れて様々なことをしてしまい、結果として治療の妨げになることも少なくないと思います。

 一番の弊害は患者が治療をやめてしまうことであり、そうならないように医療者側は患者がどのようなことをしたいのか? そしてしているのか?を気軽に話せる雰囲気を作ることも重要だと思います。

免疫療法に対するスタンス

 さて、最近話題となっている効果が科学的に証明されていない「免疫療法」に関しても、自分が担当していた患者にはほぼ上記と同じように「標準治療に加えて免疫療法をするのであれば、費用や効果についてしっかりと説明を聞いた上で自分たちで決めてください。ただし、標準治療をやめて免疫療法をするということだけは決してやらないでください」と告げていました。実際に免疫療法を併用された方、説明を聞いて受けられなかった方と、いろいろいましたが、少なくとも標準治療を止めて免疫療法だけを受けた方はおられなかったと思います。

 最近は情報インフラが発達し、玉石混交であるがんの治療情報が簡単に手に入ります。どれが正しいか、どれが誤っているかの判別は非常に難しいものがあります。

 人間は弱い生き物で、「同じ効果がある」と言われると楽な方へ流されます。そして、がん患者は「効く」とうわさされるものがあれば何でも試したい気持ちを持っているような気がします。そのような状態の時に、単に頭ごなしに否定されると、その後のコミュニケーションにも影響が出ることもあり得ます。否定する場合も患者や家族の話をよく聞いた上で否定することが必要ではないでしょうか?

 状況がちょっと異なりますが、同じように主治医と患者のコミュニケーションの重要さが治療結果に如実に表れるのは、手術後の抗がん剤治療だと思います。抗がん剤治療を乗り切れるかどうかには、主治医の考え方が直接影響してしまいます。

 例えば、主治医から「根治を目指すために治療を半年間頑張りましょう!」と言われた患者は結構、やり通せる傾向にありますが、「やってみて副作用がひどかったらやめればいいから!」と言われて始めた患者は結構な割合で脱落しています。「何のための治療か?」「誰のための治療か?」をしっかりと考慮して説明すべきだと思います。

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西村 元一(にしむら・げんいち)

 金沢赤十字病院副院長、第一外科部長。1983年、金沢大学医学部卒業。同大学病院胃腸外科教授を経て、2008年4月より金沢赤十字病院外科部長、09年副院長に就任。2012年より、石川県医師会理事。専門は大腸外科。日本外科学会、日本消化器外科学会、日本消化器病学会など複数の学会の専門医・指導医。がんとむきあう会代表。2015年3月、肝臓に転移した胃がんが見つかり、現在も治療中。闘病前から温めていた「街中にがん患者が医療者と交流できる場所を」という願いを実現し、2016年12月、金沢市内に「元ちゃんハウス」をオープンした。がんとむきあう会のウェブサイトはこちら

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2件 のコメント

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がんサバイバーの楽しみ

すずめの父

西村先生は,短期間で抗がん剤治療を見直していて,少しびっくりです。 私,FORFILINOXを十数回投与し,6ヶ月ほど粘っています。抗がん剤治療...

西村先生は,短期間で抗がん剤治療を見直していて,少しびっくりです。
私,FORFILINOXを十数回投与し,6ヶ月ほど粘っています。抗がん剤治療開始から丸二年になろうとしています。抗がん剤との相性が良いようで,幸運ながんサバイバーと自覚しています。

しかしながら,副作用(特に下痢)は強く,ほとんど外出できません。責任ある仕事はできず,家の中で動き回るのが中心です。紹介させてください。
・昼食は自分で作る。(妻に気兼ねなく仕事・外出してもらう)
・ネットで,がんに困っている人がいれば,正しい(できるだけ)情報を提供する。
・テレビで勉強(Eテレ,放送大学)する。
・家に来る孫と遊ぶ。(孫に教えられること多々)

副作用により,できないことが増えました。逆に,できることも増えました。
どのような状態でも,より良い人間になることは(少しづづでも)できる。確信できるようになりました。永く生き続けることが,意味のある事とは思えないようになりました(治療は続けます)。
がんサバイバーとして,責任感を持って生きたいです。社会的貢献は微細ですが。

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がんと共に生きられるということ

エンジェル

西村先生のエッセーが始まってから毎回拝見しています。初めての記事を拝見してから心配性の私は、元ちゃんハウスHPや他のエッセーも拝見していました。...

西村先生のエッセーが始まってから毎回拝見しています。初めての記事を拝見してから心配性の私は、元ちゃんハウスHPや他のエッセーも拝見していました。

古い海外ドラマではがんのステージIVは末期と訳されたり、紙面でも末期と表記されることがあります。実際はステージIV=末期ではありません。再発、治療期と終末期に分けられます。病期をAとBに分けるか末期と表現しないだけで、患者さんの闘病意欲はだいぶ変わると思うのです。

ステージIVの西村先生ががんと共に生きていることを知るだけで、励みになる患者さんは大勢いると思います。心のサプリメントですね。

治療を受ける決定をするのは患者さん自身です。がんの治療は苦しいものです。治療が効いた時はほっとするでしょう。治療が効かなかった時は落胆や後悔があるでしょう。けれど、あなたやご家族の苦しみや涙が無駄になることは決してありません。その喜びや涙の積み重ねが他の患者さんを救う道へとつながっているからです。

「幹細胞に効き、副作用のない新薬できるといいなあ。ついでにお値段もお手頃だと嬉しいな」
夢のような私のつぶやき。西村先生の初めての記事以降、ヨミドクターの編集者や執筆者の優しさを私は強く感じました。

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