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ぎっくり腰は「動かして治す」…腰痛の改善と治療の新常識

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わずか3秒で劇的効果

 簡単にできて腰痛を予防し、さらには改善にも導いてくれる体操をご紹介します。私は「これだけ体操(R)」と名付けました。皆さん運動や体操はなかなか続かないので、まず「これだけはお願い!」という意味で名付けました。

 猫背や前かがみになった状態をリセットするための体操です。前かがみになることを、私は「腰痛の借金がたまる」と呼びますが、その“借金”を返す意味があります。ただご高齢の人に多い、神経症状がある腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)の人は注意してください。歩いていてお尻から足がしびれる人は、腰を反らすとその症状が誘発される可能性があるため注意が必要ですが、やってみて痛みやしびれが太もものほうへ響かなければ大丈夫です。

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図7 BS日テレ「深層NEWS」より

 まずウエストライン、ベルトのラインが一番腰の負担がかかる部分なので、そこを猫背になった後にリセットします。足は肩幅より少し広めで平行に開き、手はなるべく小指と小指をそろえると、胸が張って肩甲骨が寄ります(ただし、五十肩など肩が痛い人は無理しないでください)。腰を反らすというよりも、骨盤を前にぐっと押し出すイメージで、あごを引いたまま「ふー」と息を吐きながら数を「1、2、3」と数えます。

 介護職や看護師には腰痛が多いと言われますが、集団でこの体操に取り組むと、1年後にはかなり良い結果が出ています。痛みを取るのに重要な背中の血流を良くするというデータもあります。多くやろうとすると続かないので、デスクワークでも作業でも、猫背が続いてちょっと違和感がある時に、「借金がたまったな」と1回だけリセットすることです。ソファで座りっぱなしになったり重い物を持ったりした後に、1回か2回やればいいのです。

 一般的にデスクワークは猫背になりますが、座りっぱなしは「セデンタリー・ライフスタイル」といって、健康に害が大きいことが分かっているので、ときどき立ってこの体操をすることをお勧めしています。腰に違和感がある時に、よく腹筋運動をする人がいますが、雑に勢いよくやると、かえって腰痛を悪化してしまいます。腹筋運動をする場合は、その前後にこの体操をすると、いいのではないかと思っています。

腰を守る「ハリ胸プリけつ」

 また、ちょっと言葉にするのは恥ずかしいかもしれませんが、「ハリ胸プリけつ」が腰を守る姿勢のキーワードです。重量挙げがまさにそうですが、物を持つ時に無防備に前かがみになり、骨盤が後傾すると、背中や腰を痛めやすい。そこで胸を張り、お尻を突き出すのです。

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図8 BS日テレ「深層NEWS」より

 中指を鎖骨の部分に当てて、胸をしっかり開きます。足は肩幅よりやや広めで平行に、お尻を突き出して前へ倒れます。なるべく反ったイメージで、前に行く時に常にこのイメージを脳と体で覚えていただくと、これ自体が訓練になります。実際に物を持つ時は、この状態でひざを上手に使えば、ウェイトリフティングと同じポーズになります。

 坐骨神経痛の場合、主に狭窄症とヘルニアの2種類があります。「これだけ体操」は狭窄症の方では、先ほど言ったように症状を誘発してしまう可能性がありますが、ヘルニアタイプの場合は、「これだけ体操」で軽いヘルニアが引っ込み、痛みが取れる場合があります。一度やってみて、お尻からももに響かなければ、続けていただいて結構です。

 また、今はせき、くしゃみをしやすい時期ですが、その時には「ハリ胸」までいかなくても、前に手をつくだけでずいぶん腰の負担が減らせます。

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図9 BS日テレ「深層NEWS」より

 立ってテーブルに、あるいは座ったまま太ももに、ちょっとハリ胸で手をつくと、腰にかかる負担をずいぶん軽減できます。手をつくことが本当に、ちょっとしたぎっくり腰予防に役立つのです。

 くしゃみをすると、ウエストラインの椎間板には最大300キロ・グラム重、つまり相撲取り2人分ぐらいの負荷がかかります。負荷が340キロ・グラム重を超えると、ぎっくり腰やヘルニアが起こるとされますが、それが手をつく工夫で、実に半分以下まで椎間板への負荷を減らせるのです。

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図10 BS日テレ「深層NEWS」より

 テレビをソファでご覧になる場合、「ハリ胸プリけつ」とは逆の姿勢となり、腰の“借金”がたまります。これが積み重なると、朝ちょっと顔を洗う時などに、ぎっくり腰をやってしまう。ソファに座るなとは言いませんので、座る前に「これだけ体操」をまず1回。座っていて負担がかかってきたなと思ったら、その場でまたリセットすると、ずいぶん違うと思います。猫背など悪い姿勢をとっても結構ですが、ただし“借金”を貯めすぎない。そして物を持つ時は、「ハリ胸、プリけつ」を意識していただければと思います。

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松平浩

松平浩

東京大学医学部附属病院22世紀医療センター特任教授 (http://lbp4u.com/)。

整形外科医。日本腰痛学会評議員。著書に『3秒これだけ体操』『腰痛は「動かして」治しなさい』『腰痛は脳で治す!』『腰痛借金』など。

※1月11日放送のBS日テレ「深層NEWS」(月~金曜日の22~23時放送)を再構成しました。

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