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宋美玄のママライフ実況中継

コラム

「赤ちゃんポスト」神戸にも その前にもやるべきことが

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 先日の報道です。

「赤ちゃんポスト」神戸で準備…国内2例目、助産院で

 親が育てられない子供を匿名で預かる「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」を関西にも設けることを目指している団体が9日、神戸市北区の「マナ助産院」(3床、永原郁子院長)で開設を準備することを決めた。ただ「ゆりかご」には医師がいなければならず、嘱託の医師と契約するなどして神戸市の理解を得たいとしている。

 団体は医師や弁護士らで作る「こうのとりのゆりかごin関西」(大阪府箕面市、理事長=人見滋樹・京都大名誉教授)。熊本市の慈恵病院に続く2番目の「ゆりかご」開設を目指している。(全文は こちら

(2017年2月10日 読売新聞)

 親が育てられない子供を匿名で預かる「赤ちゃんポスト」の二つ目が神戸市北区の助産院に開設されることになったという報道です。「赤ちゃんポスト」の1例目が熊本に作られた時にはかなり話題になり、親が育てられない場合や予定外の妊娠をした場合はどうするのがいいのか議論を呼びました。

様々な事情で育てられないことも

「赤ちゃんポスト」神戸にも その前にもやるべきことが

鳥羽水族館でクリオネに見入る息子です

 妊娠した場合、親が産んだ子供を育てられれば一番いいのですが、様々な事情でそれが難しいこともあります。その場合に、法律上、人工妊娠中絶が可能な妊娠週数であれば産まないという選択肢もありますが(女性が自主的に行える避妊法に、安価でアクセスしやすくなることが重要です。現状ではそうなっていないからです)、それを超えて育った場合には出産するという選択肢しかなくなります。

 こちらでも「 特別養子縁組あっせん法成立 子供の幸せを最優先に 」という記事で、産んでも自分で育てられない方に特別養子縁組という選択肢があることや、子供が実親のもとで育てられるように支援することが望ましいことなどを書きました。

 また、自分自身が今までに関わった症例でも、医療機関で出産したものの育てられないと申し出があったり、出産後に赤ちゃんだけを置いて母親がいなくなってしまったために乳児院へ送ったりしたことは何度もあります。

出自を知る権利は奪うかもしれませんが……

 「赤ちゃんポスト」の場合はこれらの方法と違って完全に匿名で、誰ともやりとりをせずに赤ちゃんを託すことができます。代わりに赤ちゃんは大きくなってから自分の出自を知ることはできません。その点で赤ちゃんの権利を奪っていると言えますが、予期せぬ妊娠をして誰にも相談できず、一人で産んでそのまま赤ちゃんを死なせてしまう、生後0日での虐待死を減らすという観点から見ると、赤ちゃんポストが拾える命というのはあるのだろうと思います(個人的に神戸市北区よりも行きやすいところの方が望ましいと思いますが……)。

相談窓口へのアクセス改善を

 赤ちゃんポストの利点は知名度が高いことにもあると思います。このように大きな新聞社やテレビのニュースに取り上げられるセンセーショナルさのために、多くの当事者に知られていることでしょう。困った時に思い出してもらえるということはとても重要なことだと思います。

 妊娠して困っている人の相談に乗ってくれるところは「 にんしんSOS 」や「 にんしんホットライン 」などがありますが、実際に困っている人が窓口にアクセスしてくれると良いと思います。

 先ほど「妊娠 産めない」「妊娠 困る」などのキーワードを検索エンジンに入れてみましたが、残念ながら有益なサイトは出てきませんでした(人工妊娠中絶の医療機関の広告は出てきました)。困った状況の人のために、検索で上の方に出てくるような対策や広告をすれば効果があるかもしれないと感じました(費用はクラウドファンディングなどで調達できないものでしょうか)。

 まずは、バースコントロール(妊娠・出産を自身でコントロールする術)の知識や方法を広く伝え、出産しか選択肢がない人については、できる限り妊娠中からコミュニケーションを始めて医療機関での出産につなげる。そして極力、生みの親が育てられるよう支援することが大事だと思います。必要な人に必要な情報が届けられるように私もできることをしたいと思います。

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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2件 のコメント

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産まれてくる命を消さない為に

レオン

先生が日記にも記載されているように、女性主体の避妊等の対策は必須だと考えます。 「望まれない命」を作らない為にも、男女ともに正しい避妊の知識をつ...

先生が日記にも記載されているように、女性主体の避妊等の対策は必須だと考えます。
「望まれない命」を作らない為にも、男女ともに正しい避妊の知識をつけて欲しいのが理想です。

赤ちゃんが産まれそうなのを止めることは出来ませんもんね。生後、虐待による悲劇が起こるよりは、あかちゃんポストに預けて、その命を救って欲しいと思います。

神戸より大阪市内の方がアクセスは良さそうですが…。

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地域の人口の維持と当該地域老人の老後

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

子供は迷惑なのか、宝なのか? 幼稚園や若者への老人の批判の記事と合わせて読むと、分かりよいと思います。 ほとんどの人は、メリットとデメリットのメ...

子供は迷惑なのか、宝なのか?
幼稚園や若者への老人の批判の記事と合わせて読むと、分かりよいと思います。

ほとんどの人は、メリットとデメリットのメリットだけが欲しい。
デメリットを押し殺してでもメリットに目を向けるのは、集団としての背景事情が整った地域でしょう。

少子高齢化や医療過疎の進んだ土地が未来を考えると、「血液上誰の子でもいいから、地域の子供が欲しい」になります。

それは、その地域の高齢者の一部は少々不便であろうとその地域で亡くなりたいからです。
阪神大災害の事例も徐々に明らかになっているそうですが、住み慣れた土地や見慣れた知人とともにあることは、便利な地域での生活よりも心と体にいい場合もあるそうです。

医療は高度医療を諦めればいいだけの話ですが、介護だけでなく、生活インフラの維持が地域でのほどほど快適な老後とその先に繋がります。

この赤ちゃんポストがベストとは思いませんが、「無いよりも良い」のかもしれませんね。

他の議題同様に、取り上げ続けることが、大事なことなのかもしれません。

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