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医療部発

コラム

体調を崩しがちなホームレス支援 重症化予防にも

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体調を崩しがちなホームレス支援 重症化予防にも

 ホームレスの男性(50歳代)は昨年末の寒空の下、東京都庁近くで途方に暮れていました。ボランティアによる炊き出しを受けようとやってきましたが、炊き出しは開かれていませんでした。所持金は500円。そんな時、通りかかった別のボランティアから「大丈夫ですか?」と声をかけられました。寝床の提供を受けられると聞き、救いを求めました。

 男性は高校を中退し、建設作業員として働いてきましたが、1997年に職を失いました。バブル崩壊で仕事が減っていました。以来、路上での生活を続けてきました。深夜と早朝に都内を歩き回って空き缶を拾い集め、1日2000円程度を得て食いつないできました。激しい 動悸どうき に襲われ、「死ぬのか」と思ったこともあります。それでもお金がなく、病院には行けませんでした。

 昨年末に出会ったのは、「ふとんで年越しプロジェクト」のメンバーでした。生活困窮者らを支援するNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」(東京)などが、役所の窓口が閉まる年末年始、ホームレスの人たちに、ホテルの部屋を借りて提供する活動です。男性は久々に布団に入り、ぐっすりと寝ました。

 プロジェクトでは、医師が部屋を訪れ健康相談に乗りました。男性の血圧を測ると、収縮期血圧は250近くに達しました。高血圧は心筋梗塞や脳卒中を引き起こします。降圧剤を処方され、160程度に下がりました。

 男性は生活保護を申請し、プロジェクトのメンバーに紹介された集合住宅の一室に移りました。今は個室で落ち着いて暮らしています。「まずは身分証明書と携帯電話を持ちたい。いずれは働かないと」と将来に思いを巡らしています。

 プロジェクトでは男性を含め25~97歳の25人を支援しました。半数強の人に対し生活保護の申請を手伝いました。自ら建設作業などの仕事へ戻った人もいます。まとめ役で、もやい理事長の大西連さんは「ホテルの部屋でゆっくりして、次へのステップを考えてもらいたい。行政の支援制度を知らない人も多いので、必要に応じて伝えている」と話しています。

 ただ、自らの力で生計を立てるのが難しいホームレスの人が生活保護を受けられても安泰ではないといいます。自治体が住まいとして紹介する宿泊所の多くは相部屋です。同居人ともめて失踪してしまうケースは少なくありません。長く滞在しても健康管理はしてもらえません。

 厚生労働省の調査でホームレスは全国約6200人で近年減っていますが、インターネットカフェなどで寝泊まりするネットカフェ難民などを加えると、家のない人の数は万単位になるとみられます。重い糖尿病や精神疾患を抱えた人もいます。

 納税者ではないことなどを背景に、進みにくいホームレス対策。首都大学東京教授の岡部卓さん(社会福祉学)は「働くようになれば経済活性化につながり、重症化の予防で医療費を減らせる。住宅や健康管理、生活相談の支援を手厚くし、彼らが社会に参画する仕組みを真剣に考える必要がある」と訴えています。広い視野に立った支援が求められています。

 ご愛読いただいている「医療ルネサンス」の今年の年間テーマは「いのちの値段」です。「高齢世代の医療とお金」の現状、課題を取り上げるにあたり、体験談を募集しております(詳しくは こちら )。

 ぜひ生の声を寄せていただければ幸いです。よろしくお願い致します。

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 米山粛彦(よねやま・きよひこ)

 2001年入社。盛岡支局、科学部、東北総局などを経て、13年から医療部。同部では医療政策や先端医療などを取材

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医療部発12最終300-300

読売新聞東京本社編集局 医療部

1997年に、医療分野を専門に取材する部署としてスタート。2013年4月に部の名称が「医療情報部」から「医療部」に変りました。長期連載「医療ルネサンス」の反響などについて、医療部の記者が交替で執筆します。

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