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知って安心!今村先生の感染症塾

コラム

すご~く身近な「ヘルペス」のお話

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すご~く身近な「ヘルペス」のお話

厚生労働省の性感染症啓発ポスター

 ヘルペスって知っていますか?

 きっと、これを読んでいる人の中にも、すでに 口唇こうしん ヘルペスや性器ヘルペスになった人がいるはずです。ヘルペスは、多くの人がかかっているウイルスによる感染症です。ヘルペスのウイルスは、感染しても全く症状の出ない人が多くいます。まだヘルペスになっていないという人の体の中にも、すでにウイルスが入っているかもしれないのです。今回は、すご~く身近な「ヘルペス」のお話です。

ヘルペスの長男と次男

 実は、口唇ヘルペスと性器ヘルペスでは、その原因となるウイルスが異なります。そして、この2つのウイルスは兄弟のような関係にあり、口唇ヘルペスが長男で、性器ヘルペスが次男にあたります。この兄弟のウイルスは、まとめて単純ヘルペスと呼ばれています。そして、長男は単純ヘルペス1型、次男は単純ヘルペス2型というのが正式な名前です。

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 長男→口唇ヘルペス=単純ヘルペス1型(HSV-1)
 次男→性器ヘルペス=単純ヘルペス2型(HSV-2)
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超メジャーなヘルペス

 ヘルペスは、世界でも「超メジャー」な感染症のひとつです。WHO(世界保健機関)の報告によると、50歳未満では約37億人が口唇ヘルペスの原因となるウイルスに感染していると考えられています。この人数は、世界における50歳未満の人口の67%にもおよびます。また、性器ヘルペスの原因となるウイルスには、15歳から49歳までの約11%が感染しているとされています。

 Herpes simplex virus(WHO)より
  http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs400/en/

口唇ヘルペス

 口唇ヘルペスでは、くちびる、歯ぐき、口の中などに、水疱(すいほう:水ぶくれ)や潰瘍(かいよう:ただれ)ができるのが一般的です。このウイルスは、唾液の中に含まれることが多いため、お母さんが、子どもにチュッ……なんてことで感染することもあります。日常生活の中で、乳幼児の時期に初感染することが多く、この場合には症状がないか、ごく軽度のことがほとんどです(まれに重症化します)。しかし、大人が初めて感染すると、発熱することが多くなるなど、症状が少し重くなる傾向があります。

性器ヘルペス

 性器ヘルペスは、ウイルスに感染した性器に、水疱や潰瘍などができるのが典型的です。特に女性の重症例では、外陰部が腫れて、歩けないほどの痛み(焼けつくような激痛となることもある)や排尿困難、発熱などを伴うこともあります。破れた水疱や潰瘍の部分には多くのウイルスがいるため、性行為によって感染することが多くなります。

あなたにも潜んでいるかも

 ヘルペスウイルスは、自然に良くなっても、薬で治療をして良くなっても、神経の根っこの部分に残ってしまうという特徴があります。そして一度感染すると、こっそり体の中に隠れながら、次の出番を待っているのです。

 この潜んでいるウイルスは、普段は悪さをせずにじっとしています。しかし、風邪や疲労、ストレスなどで免疫力が下がった時などに、急に暴れ出したりすることがあります。この時の症状は、初めて感染した時よりは軽くなることが一般的です。しかし、何回も繰り返したりして、かなりやっかいなヤツでもあるのです。

ヘルペスの縄張り争い

 この兄弟ウイルスは、口唇ヘルペス、性器ヘルペスという名前がついていますが、初めて感染する時には必ずしも決まった場所に感染するとは限りません。オーラルセックス( 口腔こうくう 性交)などによって、性器ヘルペスが口唇にできたり、口唇ヘルペスが性器にできることもあるのです。

 しかし兄弟ウイルスたちは、初めて感染した後に体の中に潜む時には、それぞれの縄張りを守ろうとします。単純ヘルペス1型は頭側の神経に、単純ヘルペス2型は腰の神経に、ちゃんと む場所を分けて潜む傾向があるのです。そして再発の時には、本来の縄張りである口唇と性器に発症するのです。

ヘルペスの治療

 ヘルペスのウイルスを治療する薬には、塗り薬、内服薬、点滴薬のタイプがあります。ヘルペスは、ごく軽症の場合には、特に治療をしなくても自然に良くなります。しかし、深い潰瘍となったり、痛みが強かったりする場合などには、ウイルスを抑える治療が必要となります。また、 まれ に目や脳に感染して重症となることがあり、この場合にもしっかりと治療をしなければいけません。

 ヘルペスは、治療をしてもウイルスを完全に消すことはできないので、繰り返し発症するかもしれません。そして、頻回に繰り返して日常生活に支障があるような場合には、予防的な内服を続けることもあります。

完全な予防は難しい

 口唇ヘルペスの原因となる単純ヘルペス1型を、日常生活の中で予防するのは困難です。一方、性感染症のひとつである性器ヘルペスは、ある程度は防ぐことができます。性器ヘルペスは、性器に病変がある時にうつりやすくなります。したがって、性器ヘルペスを疑う症状がある時には、性行為を避けることが必要です。コンドームは、ゴムによって覆われている部分については感染を防ぐ効果があります。しかし、それ以外の部分の感染まで予防することはできません。また、オーラルセックス(口腔性交)も、ヘルペスウイルスが感染する原因となることを知っておきましょう。

人類とヘルペス兄弟

 ヘルペス兄弟は、一度感染すると消すことができず、人の体の中に潜み続けます。そして、また他の人に感染できる機会をうかがっています。完全に予防することも難しく、巧妙に人から人へと感染していくのです。人類とヘルペスの共存は、まだまだ続きそうですね。

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知って安心!今村先生の感染症塾_201511_120px

今村顕史(いまむら・あきふみ)

がん・感染症センター都立駒込病院感染症科部長

石川県出身。1992年、浜松医大卒。駒込病院で日々診療を続けながら、病院内だけでなく、東京都や国の感染症対策などにも従事している。日本エイズ学会理事などの様々な要職を務め、感染症に関する社会的な啓発活動も積極的に行っている。著書に『図解 知っておくべき感染症33』(東西社)、『知りたいことがここにある HIV感染症診療マネジメント』(医薬ジャーナル社)などがある。また、いろいろな流行感染症などの情報を公開している自身のFacebookページ「あれどこ感染症」も人気。

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