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認知症で免許更新不可、来月から
「おそれあり」で医師の診断必要
75歳以上の高齢ドライバーの免許更新が大きく変わる改正道路交通法が3月12日に施行される。これまでの更新との違いや注意点、「認知症のおそれ」と判定された場合の対応についてまとめた。
◇予約は早めに
75歳以上の人の免許更新は現在、3年に1度行われる。免許有効期限の半年前から認知機能検査や高齢者講習などの手続きができる。
認知機能検査は、記憶力など3種類を問うもので、「問題なし」「認知機能が低下」「認知症のおそれ」の3段階で判定される。これは改正前・後とも同じ仕組みだ。
改正後の新制度で大きく変わるのが、検査結果を受けての手続きだ。免許の有効期限に関係なく、3月12日以降に自動車学校などで認知機能検査を受ける高齢ドライバーから適用される。「認知症のおそれ」と判定されると、医師の診断を受ける必要がある。受診する医療機関も原則、自身で探す必要がある。
名古屋市の緑ヶ丘自動車学校では「認知機能検査の予約はすでに3か月待ち。今後、予約する人は全員新制度が適用されるため、認知症のおそれと判定された場合は医師の診断が必要になる。免許の有効期限までに手続きが終わらない可能性もあるので、早めに予約してほしい」と呼びかける。
◇移行期間は半年
一方、検査に引き続いて行われる高齢者講習の内容は、免許の有効期限によって異なる。半年間の移行期間があるためだ。
9月11日までに有効期限を迎える人は、認知機能検査に続いて、2時間半の高齢者講習を受講することができる。
9月12日以降に有効期限を迎える人は、新制度での講習となり、多くが検査と講習を別の日に受けることになる。検査結果によって講習内容や時間、料金が異なるので、結果を受けて自分が受けるべき講習を予約する必要がある。
◇地域の支援拠点を活用
新制度で最も変わるのが「認知症のおそれ」と判定された場合だ。
まずは、かかりつけ医に相談する。いない場合には、各都道府県警の免許センターに相談する。運転に関する相談窓口で免許制度に詳しい職員が面談に応じてくれる。また、宮崎などでは保健師や看護師が応対するといい、茨城、山口両県などは専用電話や電子メールでも相談を受け付けている。
このほか、地域の高齢者向けの相談支援拠点「地域包括支援センター」でも相談できる。住所地で担当のセンターが決まっているので、主任介護支援専門員や保健師、看護師らが応対してくれる。
センターには、地域で認知症を専門としている医療機関の情報もある。また、免許を返納した場合の代替交通手段、買い物した商品を届けてくれるサービスなど、行政や企業、NPOが行う支援にも詳しい。
川崎市の「レストア川崎 地域包括支援センター」の明石光子センター長は「センターでは、地域事情をよく知る人がそろっているのでぜひ頼ってほしい」と話している。
警察は自主返納を推奨
運転免許証を自主返納すると「運転経歴証明書」の交付を受けることができる。
身分証の代わりに所持する人も多く、提示するとバスやタクシー料金の割引、購入した商品の無料配送サービスなどの特典が受けられる地域もある。割引制度を設けている温泉施設や飲食店、旅館なども多い。
2012年からは、発行後6か月過ぎても銀行口座の開設時などの身分証明としても利用できるなど利便性も高まっている。大きさは免許証と同じで、顔写真付きで生年月日や住所が記載されている。住所変更も可能だ。
自主返納は、運転手の自主性を尊重する制度だが、各警察は、運転が危うくなってきた高齢ドライバーに対して自主返納を勧める。
免許更新時などに認知症と診断されて免許が取り消されたり、更新手続きが遅れて免許が失効したりした場合には、証明書は交付されない。警察庁は「運転経歴証明書の交付ができない点に注意してほしい」としている。
(大広悠子)
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