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お手伝い、生活力育む
興味持ったことから始めて
お手伝いは、子どもの生活力を育む格好の機会だ。日々の生活の中でタイミングを捉え、積極的に取り組ませたい。
小学3年生の長男(9)、1年生の長女(7)、次女(3)の3人の子を持つ埼玉県の主婦(36)は、子どもに手伝いを頼んだことがないという。理由は「子どもも忙しいから」。長男と長女は複数の習い事を掛け持ちしている。学校、宿題、習い事、夕食、入浴……あっという間に就寝時間になる。「親としても、手伝ってもらわない方が時間も手間も掛からず楽」と話す。
東京ガス都市生活研究所が、子育て中の30~40歳代の親を対象に行った調査によると、1993年から2014年の約20年で、子どもの家事(手伝い)参加率は減少している。「ほとんどやらない」子の割合は14年、「買い物」66%、「料理」65%、「掃除」67%、「風呂掃除」68%。1993年に比べて、5~14ポイント増えた。
同研究所研究員の木村康代さんは「塾や部活動などで、子どもが家にいる時間が減った。多機能家電や宅配といった家事を手助けする製品やサービスが充実したことにより、家事の総量が減っていることも影響しているのでは」と分析する。
しかし、子どもの成長にとって手伝いの効用は大きい。東京学芸大学教授(発達心理学)の岩立京子さんは「知識や技術が身に付くだけでなく、生活力の基礎になる。達成感を得たり、人の役に立つ経験を重ねたりする中で、自主性や思いやりが培われる」と話す。
難しく考える必要はない。まず、子どもが興味を抱いたことからやらせてみよう。関心がなさそうな子には、「やってみる?」と声を掛け、誘いに乗ってきたことをさせればよい。「大事なのは、一緒にやること。見守られていることでやりがいも感じます」と岩立さん。お手本がそばにいれば上達も早い。
もちろん、失敗はつきものだ。幼児教育の専門家で子育てに関する著書も多い立石美津子さんは「叱り付けてやる気を失わせないように」と話す。「今度はこうやってやろうね」と少しずつできるようにさせる余裕を持ちたい。皿洗いなら、割れない樹脂製のものを渡すなど気を配ってあげよう。
終わったら「きれいになって快適」「助かったよ」「おかげでテレビが一緒に見られるね」などと感謝の言葉を伝えよう。「ママが喜んでくれた」「パパが助かった」と自信になる。
確かに、子どもに手伝いをさせると、かえって手間がかかることもある。しかし、新聞を取りに行くことや、花木に水をあげるといった簡単な作業なら短時間でできる。「面倒だと思うあまり、家事を身に付けさせる機会を逃さないで」と呼びかける。
手伝いは一連の作業の一部分をさせることから始め、段階的に作業量を増やしたり、難しいことをさせたりしていく。小学校中学年ぐらいになったら、「金曜日はお風呂当番」などと役割を決め、家族の一員としての責任感を持ってもらってもいい。
岩立さんは「お手伝いを続けていると段取りや計画性が身に付くので、学習にも役立つ。意識的に機会を設け、できることから始めてほしい」と話している。
■お手伝いは成長に応じて
・ 小学校低学年ぐらいまでは、遊びの延長でよい。子どもの興味を優先する
・ 最初の頃は親も一緒に取り組む。上達しやすく、子どもも楽しい
・ 褒めるだけでなく、「助かった」などと感謝の言葉を掛ける
・ 小学校中学年頃からは、役割として任せることも考える
(岩立さん、立石さんの話を基に作成)
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