虹色百話~性的マイノリティーへの招待
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第70話 あれからどうなったの? ニュースのその後
新聞・ネットにLGBT関連ニュースが流れない日がないような時代になりましたね。この連載では、次々起こる新しい出来事(まさにNEWS)を紹介もしながら、「あれからどうなった?」という後追い報道や、過去にご紹介したことを深めるような情報も大事にしたいと思っています。
今週はそんな「ネタ」の3本立てです。
同性パートナーは「婚姻と同様の事情にあるもの」かが問われる
名古屋で、20年来の同性パートナーを殺害された男性が、国の犯罪被害者給付制度による遺族給付金を愛知県公安委員会に申請したことが報じられました。同性パートナーが配偶者として遺族給付金の申請をしたのは全国初とみられるということです。
報道によれば、この殺害事件の裁判の中で、2人は「夫婦同然の関係にあった」と認定しており、代理人弁護士も申立人はパートナーである「被害者と20年余り同居し、給料を被害者の口座に入金。家事や家計管理は被害者が担うなど生活は一体だった」「今回のケースは同性同士でも事実上の内縁関係」としています。
これに対して、制度を所管する警察庁は、「同性愛の同居者は制度上の遺族、配偶者には入らず、事実上の婚姻関係にあったとも認められないと考えられる」と説明しています。
この犯罪被害給付制度では、支給を受けられる遺族の第1位に、「配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にあった人を含む。)」をあげています( 警察庁パンフレット )。
法令――とくに社会保険や社会福祉関連の――における配偶者の定義に、「事実上婚姻関係と同様の事情にある人を含む」という表現がしばしば加えられていることを、 第63話 でご紹介しました。この「事実上婚姻関係と同様の事情にある人」に同性のパートナーを含むかどうかは、まだ問われたことがない(ぜひ、誰か裁判などの形で問うてみてほしい)と書きました。
今回、大変悲しい事態が契機とはいえ、それがいよいよ問われるときが来たようです。
担当する愛知県公安委員会の英断を望みたいですし、もし不支給となれば、( 辛 いでしょうが)ぜひ裁判所で争うなど、手続きを尽くしていただけたらと願っています。この判例ができれば、他の法令の解釈にも当然、及んでゆき、社会保障領域で事実上、同性婚が達成される可能性があります(税制や相続には、この規定は含まれていません)。
札幌でのパートナーシップ証明制度、4月にスタートか
2015年来、東京都渋谷区や世田谷区など、自治体による同性パートナーシップ制度がメディアに躍る一方、北の国・札幌という町には当事者たちによって、1980年代から、小さくとも着実なムーブメントが息づいてきたことを、 第40話 でご紹介しました。
その札幌市が、同性のカップルも「結婚に相当する関係」と認めるパートナー制度を今年の4月から導入する方針を固めたことが、昨年12月に報道されました。40話の終節で触れた当事者らによる活動がようやく実ったもので、私も友人・知人がかかわっているだけに 嬉 しい思いを噛みしめました。政令市では初めてとのことです。また、戸籍上の性別を変更していないトランスジェンダーの人にも配慮し、性的マイノリティーであれば、利用を同性に限らないとのことです。/p>
ところが、この件が報道されると、札幌市役所へ制度導入に反対するファクスが大量に送りつけられるという事態が生じているとのこと。また、市議会の一部にも、「札幌市の現状を把握せず、制度をスタートさせるのは拙速だ」という声があるとか。
渋谷区でいわゆる「パートナーシップ条例」が提起されたときも、市役所に同一文の反対ファクスが大量に送りつけられ、区役所外で反対のピケを張る人たちもいました。 第62話 で紹介したように、当時の区役所担当者によれば、「こうした組織的反対が起こる状況こそが、性的マイノリティーの人たちのためにこの条例が必要とされている証拠だと確信した」とのことです。
札幌の制度は市議会の議決が必要な「条例」ではなく、市の要綱で行われますが、市長は1月31日、市議会の財政市民委員会で市議に初めて説明をしました。またこの日に合わせLGBTコミュニティー内外からも札幌市宛てに制度の実施やそれに込めた自分たちの思いを伝えるアクションが呼びかけられ、メールやファクスが続々と札幌市へ届けられました。
財政市民委員会は地元当事者らがびっしりと傍聴に詰めかけ、その人たちが発したツイッターによれば、民進、公明、共産の各会派は市の取り組みを高く評価、自民党はもう少し慎重にとの意見ながら、反対を言う会派はなかった模様です。
市は2月に開かれる定例市議会の議論を経て、4月にも制度を導入する方針です。本件、まだまだ声を届ける余地はあります。札幌市(市長)への ご意見フォーム から、道内外のみなさんの思いを届けてみてはいかがでしょうか。
「LGBTフレンドリー」なら企業はいいのか?
同性カップルへの福利厚生の導入や、トランスジェンダー当事者に配慮した就労体制など、企業の「LGBTフレンドリー」がとかく話題になっています。電話会社や保険会社などの同性カップル顧客への対応や、LGBTイベントへの広告出稿なども、「フレンドリー」の指標とされます。
ところで、某ホテルチェーンで経営者が執筆した中国や韓国に関する歴史認識本が「歴史修正主義」「ヘイトスピーチ」などと話題になっていますが、それに続けて掘り起こされ、ネットニュース等で評判になっているのが、化粧品・サプリメント大手の DHC・吉田嘉明会長のメッセージ です。
このメッセージで吉田会長は、在日韓国・朝鮮人の人たちへ根拠のない言説を浴びせかけていることが、やはり「ヘイトスピーチ」「陰謀論」だと批判されています。
ところで、DHCは昨年の東京レインボープライドパレードにブース出展や広告出稿をして協賛しています。広告で紹介されている「DHC MEN」シリーズの「オールインワン ディープクレンジングウォッシュ(全身洗浄料)」は一本1600円(本体、500ml)し、一般的な品物はもちろん、同社の「薬用マイルドボディシャンプー」(780円、600ml)と比べてもかなりの高価格品です。
広告には 精悍 な顔・裸体の男性が起用され、明らかにゲイの購買層をターゲットに設定しているようです。
こうした商品開発や広告出稿など、「ゲイフレンドリー」の呼び名にふさわしい企業と思いきや、会長さんのあのようなメッセージには、私は正直がっかりさせられました。
「フレンドリー」と在日外国人への根拠のない発言とは、両立するものなのでしょうか? フレンドリーとは一体なんなのでしょうか? LGBT 界隈 ではとかく「フレンドリー」という呼称が多用されますが、私はだんだんわからなくなってきました。
なかなか事前規制は難しいのかもしれませんが、プライドイベントは単なる広告媒体ではない、かりにも人権啓発の側面もある場なので、主催団体には、たんに「LGBTフレンドリー」を言うだけでなく、企業や経営者の社会的姿勢がどうなのかも加味して総合的に協賛の可否を判断することができないか、研究してほしいと願っています。
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確かオバマ政権時代の連邦政府の雇用や指定公共事業を担う業者に差別禁止を義務付けた政策を受け継ぐとしていますが、イスラム信者多数の国の人の入国は禁...
確かオバマ政権時代の連邦政府の雇用や指定公共事業を担う業者に差別禁止を義務付けた政策を受け継ぐとしていますが、イスラム信者多数の国の人の入国は禁止。
それは放置していいのかと同じことですね。
最高裁判所判事の任命では、同性カップル結婚反対派を任命するから、結局、LGBTには脅威でしかないですよね。
ナチスの時代も似たようにユダヤ人迫害は自分とは関係ないと思っていたら、気が付いたら自分もとなってしまったことが教訓になっています。人権全般に配慮が必要です。
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