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アルツハイマー型認知症の新薬開発…原因物質除去、失敗続く

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アルツハイマー型認知症の新薬開発…原因物質除去、失敗続く

 世界中で増加の一途をたどるアルツハイマー型認知症。根治を目指し、製薬会社が新薬の開発にしのぎを削っているが、実際に患者に使って効果を見る治験では、いまだに芳しい成果は得られていない。「治る」病気になる日は、いつ来るのか。

 「認知機能の低下を抑える傾向もわずかにみられたが、目標とした明確な効果は認められなかった」。2016年11月、米製薬大手のイーライリリーは、アルツハイマー型認知症の新薬「ソラネズマブ」の承認申請を断念したと発表した。

 ソラネズマブの断念は今回で2回目。最初の治験では、アルツハイマー型認知症患者全体には明確な効果が出なかったが、比較的軽症の患者のデータだけを分析したところ、効果がある可能性が浮上。改めて軽症患者だけに絞った今回の治験を開始した。それも失敗に終わってしまい、世界中から落胆の声が上がった。

 アルツハイマー型認知症では、症状が表れる20年ほど前から脳に「アミロイド βベータ 」というたんぱく質が蓄積。続いて「タウ」というたんぱく質が集まってくる。アリセプトなど、現在使われている薬は、残された神経の情報伝達力を高め、記憶や学習を助ける効果はあるが、認知症を治すことはできない。アミロイドβやタウを除去すれば、根治につながるのではないか――。そんな仮説に基づき、新薬の開発が進められている。ソラネズマブもアミロイドβを標的にする物質だ。

 だが、開発は失敗が続いている。12年には、米ファイザーが、アミロイドβを除去する「バピネオズマブ」の製品化を断念。16年には、シンガポールの企業が、タウを標的とする「TRx0237」の研究で挫折した。双方とも、多数の患者に投与して、効果や副作用を調べる最後の臨床試験まで進んだが、最終的に明確な効果を示せなかった。

 根本治療薬の苦戦が続く中、注目されているのが、米バイオジェンの「アデュカヌマブ」だ。少数の患者の臨床試験では、脳内のアミロイドβが大幅に減少し、認知機能低下を抑制する働きがみられた。失敗した薬の多くが、動物から得た物質がもとになっているのに対し、アデュカヌマブは、高齢になっても認知症になっていない人が持っている抗体を利用しており、効果が期待されている。

 この他、米メルクの「ベルベセスタット」や、スイス・ロシュの「ガンテネルマブ」、イーライリリーなどの「AZD3293」などが、最終段階の臨床試験に進んでいる。

 認知症の人が参加する日本認知症ワーキンググループ共同代表で、アルツハイマー型認知症の藤田和子さん(55)は、「将来、認知症になる人たちのためにも、根本的な治療薬の誕生に期待しています。同時に、既に発症した人が脳の機能を維持し、生活しやすくなる薬の開発にも力を入れてほしい」と話している。

予防薬研究も進む…東大が参加

 

 アルツハイマー型認知症の根治に向けた、もう一つの戦略は、治療時期を早めることだ。

 アミロイドβやタウは、時間をかけて徐々に脳に蓄積していく。認知症を発症した時点では神経細胞が既に死滅しており、この段階で除去しても遅いという考えからだ。

 米国を中心とした国際共同研究「A4」では、画像検査で脳にアミロイドβの蓄積がみられるが、まだ症状はない高齢者にソラネズマブを使ってもらい、発症予防効果を調べる。

 国内では東京大が参加。研究責任医師の岩坪威教授(神経病理学)は「アミロイドが原因となる他の病気でも、治療は早いほど有効であることが分かってきた。ソラネズマブは、治験では重大な副作用はみられず、発症予防薬として期待できる」と話す。

 (飯田祐子)

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