はつらつ健康指南
yomiDr.記事アーカイブ
日本一早い白タマネギ…浜松市
皮も実も白い「白タマネギ」はみずみずしい甘みが特徴で、静岡県浜松市の特産品だ。年が明け、収穫・出荷が始まっている。「日本一早い」タマネギの出荷で知られる産地を訪ねた。
太平洋・遠州灘に面した浜松市は温暖な気候で、年間を通じて日照時間が長い。豊かな日差しが光合成を促進し、タマネギの甘みを生み出す。砂地の土壌は水はけが良く、白タマネギのほか一般的な黄タマネギや赤タマネギなどの栽培も盛んだ。ただし白タマネギはこの地域以外では、国内ではほとんど栽培されていない。
同市南部の篠原地区は、住宅地の中に畑が広がる。栽培農家の鈴木光之さん(72)の畑は、細長く青いタマネギの葉で覆われ、ネギ特有の青い香りが漂う。「昨年11、12月に雨が適度に降って暖かかったので、育ちが早い。年明けも暖かいため、さらに大きくなった。年始早々から忙しいですね」と笑いながら言う。
白タマネギは軟らかくて傷つきやすいため、手作業で収穫する。葉をつかんで引き抜くと、丸々と艶やかな姿が現れた。黄タマネギよりやや
タマネギは葉の成長が止まると辛みが増す作物だ。白タマネギはもともと辛みが少ないうえ、葉が伸びきらない成長の途中で収穫する。このため、辛みの少ない状態で食べることができる。実が直径8~10cmの大きさになったころが収穫の目安だ。「おいしいものが出回っているのが、まさに今。いい時期に食べてもらいたい」と鈴木さん。
白タマネギは寒暖差や水分量の変化に弱く、病気にもかかりやすい。園芸作物用の種が市販されていないため、各農家が自家栽培し、採取しなければならない。種作りから収穫までに3年かかるそうだ。
まず種を取るための実を選別して生育させ、翌春に花を咲かせて種を取る。その種を秋に植え付け、翌年の1月、ようやく収穫できる。浜松市ではこうした栽培方法が確立しているが、他の地域に白タマネギの農家が少ないのは、こうした手間がかかることも理由のようだ。
収穫後、新鮮なうちに食べてほしいと鈴木さん。「薄くスライスして生で食べるのが一番うまい。でも、コンソメスープで煮てもおいしいし、かき揚げもいいでしょう」
収穫したての白タマネギを、サラダとスープ煮にしてみた。実は生タマネギは苦手だが、水にさらさなくても辛み・苦みを感じず、箸が進む。丸のまま煮たスープ煮は、野菜とは思えない甘みで、とろみが存分に楽しめる。季節はまだ寒の内だが、優しい味に春の気配を感じた。
メモ 白タマネギは明治時代後期から大正時代の初めに、愛知県・知多半島から浜松市に伝わったという。篠原地区では気候や土壌の利点を生かしながら品種改良を重ね、年明け早々に出荷できる品種に育て上げた。
現在は「サラダオニオン」という商品名で出荷されており、首都圏を中心に販売されている。現地ならJAとぴあ浜松の農産物直売所「ファーマーズマーケット」で購入できるほか、JAグループの通信販売「JAタウン」( http://www.ja-town.com/ )でも購入できる。(上原三和、写真も)
【関連記事】