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宋美玄のママライフ実況中継

医療・健康・介護のコラム

子ども施設は迷惑? トラブル回避の手引書にがっかり

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ハイハイしてもねえねに引き戻される息子です

 今週はものすごく寒いですね。子どもというのはどうして、布団をかけてもかけても蹴るのでしょう。「着せる布団」みたいなものを着せて寝かせていますが、それでも寒そうなので、オイルヒーターをつけました。冬は乾燥と寒さとの闘いですね。

 先週の報道です。


 保育所の音問題対策を“指南”、大阪府が手引書

 保育所や幼稚園の子供らが出す音や声への苦情が近隣から相次いでいることを受け、大阪府はトラブル回避のための手引書を初めて作成した。実際の苦情事例をもとに、園庭を住宅側に配置しないことや、行事予定を住民らに事前周知するなどの方法を紹介している。府によると、自治体がこうしたマニュアルを作るのは珍しいという。

 府が昨年7月に行った全43市町村へのアンケート調査では、37自治体で2013~15年度の間に苦情やトラブルがあったと回答。その原因では、園児の声など「日常的な音」が最も多く、保護者の送迎時の路上駐車など「交通に関すること」、楽器の演奏など「イベント時の音」も目立った。

 手引書(90ページ)では、50~60人の子供が園庭で遊んでいる場合、音の大きさは主要道路周辺に匹敵する70デシベル前後になるとし、「(施設に)反対する住民は特別な存在ではない」と、近隣に配慮するよう求めた。

(記事全文は こちら

(2017年1月12日 読売新聞)

 大阪府が、保育所や幼稚園の近隣とのトラブルを回避するための「子ども施設環境配慮手引書」を作成したというニュースです。大阪府が昨年7月に府下の全43市町村に対しアンケートを行ったところ、37市町村が過去3年間に苦情やトラブルがあったと答えており、日常的な音に関することが合計102件、イベント時の音に関することが合計71件、交通に関することが合計74件、臭いなどを含むその他の苦情が24件あったとのことです。

 手引書では音に関する基礎知識から、新築・建て替え時の設計段階での取り組み、開設後でも対応可能な取り組み、運営での取り組みに分けて対応策が書かれています。この手引書は こちら で読むことができますが、大阪府の方がかなり気合を入れて作られたものであることがうかがい知れます。

 実際に苦情があった事例をもとに作成されているため、なんだか世知辛さがにじみ出る手引書となっていますが、「大人の声も気になるため職員の呼び出しにトランシーバーを使っているところもあります」とか、「太鼓を叩くときに布をかぶせると音が小さくなります」などと書かれていて、子どものための施設内ですらのびのびと過ごすことが許されないのか、と少し切なくなりました。

いったい苦情回避は可能なのか?

 手引書には騒音の目安が音の大きさの単位のデシベルで書かれています。民事訴訟になった場合などは確かに客観的に測定した値が重要になってきますが、近隣住民との感情を伴うトラブルにおいては音量の計測値にどこまで意味があるのかは疑問です。手引書にあるような対策をして音の漏れる量を少なくしても、「子どもがいる」「音がする」というだけで不満に思う人は思うので、逆にギスギスする例もあるのではないかと想像します(実は私はご近所と騒音トラブルの経験があるのです……)。

 また、トラブル経験の件数が一番多かった、送り迎えの時の駐車駐輪など、交通の問題については、息子の保育園でも度々問題になっているので、近隣の方たちの迷惑は想像に難くありません。私は、「もう送迎バスしかないんじゃないかな」と思ったのですが、手引書にはバス停で保護者たちがおしゃべりをしていることに苦情が来てバス停を廃止した例が載っており、「もう苦情がないという状態は無理だ」と絶望しました。

委縮せずに子育てできる環境づくりを期待

 保育所不足が社会問題になる中、子ども施設と近隣住民とのトラブル回避は重要ですが、苦情に 真摯しんし に対応すればするほど、子ども施設が存在することすらできなくなることが手引書から予想されて、とても悲しくなりました。むしろ、行政の方ではある程度住民に許容してもらうように働きかけてほしかったです。

 立場の違う人たちが共存する社会ですからお互いの配慮が欠かせませんが、子育て層は数から言うとマイノリティーなので、行政は声の大きい方により配慮したのかなあと感じました。保育所でなくともベビーカーなどのトラブルが話題になると、一部の非常識な親が一般化されたり、どうせ子育て層のマナーが悪いんでしょうというような世論になったりすることにはいつもうんざりさせられます。数は少ないですが、萎縮せず子育てできる環境づくりを行政に期待したいです。

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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6件 のコメント

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周辺地域にメリットを与えては

しろこ

おっしゃる通り、こういった問題になると異なる立場の方がそれぞれの主張をぶつけて代案も出さず平行線に終わるばかりで残念な気持ちになります。 非常識...

おっしゃる通り、こういった問題になると異なる立場の方がそれぞれの主張をぶつけて代案も出さず平行線に終わるばかりで残念な気持ちになります。

非常識な保護者については、保育園の存在が「きっかけ」だったとしても「原因」ではないため罰則の制定・適用があっていいと思います。また保育園周辺の地域は税の優遇を設けてはと、日ごろから感じています。税の優遇案が挙がれば地域内で意見が分かれるでしょうが、この問題は保育園×地域で争うような形になってしまうため発生する要因があるのではないでしょうか。地域×地域で向き合ってもらい、保育園を受け入れることによって得られるメリットについて自治体に要望していく形があってもいいのではと思います。

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困っていると言うのは悪ですか?

あや

保育園設立や子供の騒音問題がニュースになるり反対意見を言うと、必ずまるで子供が嫌いな冷たい人、極悪人のような扱いを受けます。 しかし、実際に被害...

保育園設立や子供の騒音問題がニュースになるり反対意見を言うと、必ずまるで子供が嫌いな冷たい人、極悪人のような扱いを受けます。
しかし、実際に被害や迷惑を被ってる人、これから被害を受けると予想される人達が反対意見を言うのがそんなに悪い、責められることですか?
私の家は実際に幼稚園から2分くらいの場所にあります。うちの敷地内には連日送り迎えの車や自転車が勝手に停められ、本人に注意しても「私だけじゃない、少しだけ、毎日やってる訳じゃない。子供がいるんですよ」とまるで子供がいれば何をしてもいいと言わんばかりの方々に迷惑しています。雨の日などは、何人かのお母さんがうちの敷地内で井戸端会議しながら園の門が開くのを待ってたり、帰りながら食べてるおやつのゴミを捨ててく子供も結構います。
幼稚園に相談しても「その方の名前が分からなければ対応できない。ビラで注意喚起してます」と相手にしてもらえません。
子供をのびのびと育てたいのは分かります。でもそれがマイノリティであり、完全な正義である、周囲は多少我慢すべきだ、みたいな意見を聞くと本当に残念ですし、腹立たしいです。確かに周りの目も昔に比べて子供の声や保育園、保護者に対して厳しくなってるかもしれません。しかし、それは保育園や保護者、子供の態度にも原因があるということを忘れないで下さい。一方的に被害者面しないでいただきたいです

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老人と大人だけの国

そして誰もいなくなった

公園ではボール遊び禁止、学校の運動場は放課後・土日の利用禁止(事故が起きたら自治体の費用が掛かる)、保育園で自由に声を出したり歌うのも迷惑。 こ...

公園ではボール遊び禁止、学校の運動場は放課後・土日の利用禁止(事故が起きたら自治体の費用が掛かる)、保育園で自由に声を出したり歌うのも迷惑。

この国は、いつから老人と大人だけのための国になったのでしょう。子供はどんどん減って1学年100万人を切りました。

そして誰もいなくなった・・・になりますね。その時になって、労働者がいない、介護の担い手がいないなんて言うのはなしですよ、騒音クレーマーの皆さん!

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