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元記者・酒井麻里子の医学生日記

医療・健康・介護のコラム

大きな試験を終えて~ようやく私の新年スタートです!

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一緒に勉強した同級生と大学で

一緒に勉強した同級生と大学で

 新しい年も半月が過ぎました。今年はどんな1年にしようか……。例年なら新年を迎えると同時にそんなことを考えているのですが、今年は様子が違いました。

 年が明けてすぐの1月5日、病院での臨床実習を前に基本的な医学、医療の知識を問う試験「CBT(Computer Based Testing)」があり、年末年始も勉強だったからです。

 5年生から臨床実習が始まります。CBTは、医師の資格を持たない学生が、臨床実習に参加するために必要な知識を身につけているかどうかを問う意味があり、どこの医学部でも実施されます。CBTのほか、別の日程で基本的な診療技能、態度を評価する試験「OSCE(Objective Structured Clinical Examination)」もあり、両方あわせて臨床実習に参加できる要件を満たしているかが判断されます。

 CBTは、これまでに学んだほぼすべてが試験範囲となるため、特に秋以降、日々の定期試験の勉強とは別に、CBTに向けた専用の勉強をする必要がありました。このため、コラムを書こうと思いながらも、なかなか余裕を持てませんでした。

 勉強方法は人それぞれですが、私は問題集と教科書でインプットするとともに、定期的に同級生と勉強会を開いてアウトプットしたり、時に先輩に教えてもらったりしました。

 範囲が広く、最初の頃に覚えた内容の記憶が薄れては覚え直し、また忘れては覚え、の繰り返しでした。

 その過程で、少しずつ理解できることが増えるのが面白く感じました。

 一つを理解すれば、前に勉強した内容を別の角度から見ることができます。

 友人と勉強し、思いつかなかった視点を提供してもらうことで、さらに理解が深まり、新たな疑問も出てきます。

 友人とも「医学にはこれで終わり、という段階が全然来ない。本当に深いね」とよく話していました。大学の先生方が「医師は生涯勉強」とおっしゃっていますが、試験勉強を通じて、ほんの一端を体感したように思います。

 試験は朝から夕方まで1日がかりで、パソコンの画面に出された問題を見て解答する形式です。すべてを解き終えた後は、パソコンの画面を見続けた疲労感もあり、しばらく放心状態でした。

 病院での臨床実習では、実際に患者さんがおられるので、こうして一定の知識を身につける大切さを感じました。また、試験勉強を通じてこれまでに学んだ知識を整理しておくことは、実習でより理解を深めることにつながると思います。

 そして、一緒に勉強し、試験を乗り越えることのできる仲間に恵まれたことはとてもありがたかったです。

 試験前は緊張から不安になることもありましたが、日々の勉強が、いつか出会う患者さんのためだと思うと、まだ見ぬ誰かのために努力できる立場にいられることを、とても幸せだと感じます。

 今月末には基本的な診療技能、態度を評価する試験「OSCE」が控えていますが、CBTが終わり、少しほっとしています。

 ようやく、今年はどんな気持ちで過ごそうかと、新年を迎えるいつもの気持ちになってきました。穏やかな1年になりますよう。例年より少し遅めの新年のスタートを切ろうと思います。

 今年もどうぞよろしくお願いします。

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酒井麻里子(さかい まりこ)
 2003年、慶應義塾大法学部卒、同年読売新聞東京本社入社。北海道支社、東京本社社会部、医療部を経て、2015年3月末に退社。同年4月、島根大医学部に3年次編入学。医療部で患者さんを取材したことがきっかけで医学部を目指した。著書に『限界自治 夕張検証』(2008年)

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2件 のコメント

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実習とテストで適性とキャリアパスを考える

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

外科系教授3人の対談を雑誌で見て、アイデアや手先の問題よりも、意思の強さや人間関係の問題を考えさせられました。 医療社会も一般社会も成熟社会であ...

外科系教授3人の対談を雑誌で見て、アイデアや手先の問題よりも、意思の強さや人間関係の問題を考えさせられました。

医療社会も一般社会も成熟社会でありつつ、インフラ発達やIT化による改編の過渡期なので、既に名を成した先生方とは違うキャリアになっていく人が多いと思います。
有名な上司とチャンスをくれる上司のどちらがいいのかは相性次第です。

大外科はコア業務ゆえに制度の変化がやりにくいものですが、周辺から変わるでしょう。
(高すぎる意識の先生が理解を示せば、一般の医師との住み分けも良好に。)

微塵も妥協しないのは無理ですが、10年単位でキャリアパスや家庭とのバランスを考える必要があると思います。
勉強に終わりがないとはそういうことです。

さて、仕事の好き嫌いや、嫌いな仕事へのスタンスは、テストや部活に現れます。

70点を目安に勉強すると、たいていの試験は落ちません。

そこから先の上積みの勉強をするのか、他分野の学習や部活や社会勉強に勤しむのか?

スポーツ選手同様に、秀才や天才が多い業界ですが、独特な人をマネしていい場合としてはいけない場合があります。

OSCEもそういう側面がありますが、テストの合否だけでなく、副次的なものに目を向けられるといいと思います。
欠点がそのまま長所ということもよくあります。

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試験と職業適性 デットマール・クラマー

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

実はCBT初年度の学年でした。 成績が良くなかったので、たぶん追試と思っていたら、受かったのを覚えています。 (4年の消化器内科とOSCEの脳外...

実はCBT初年度の学年でした。
成績が良くなかったので、たぶん追試と思っていたら、受かったのを覚えています。
(4年の消化器内科とOSCEの脳外のテストは落ちて、のちに神経内科の研修や、放射線科で胃癌の診断に従事するとは思いませんでした。)

各科の試験内容に集中することと、全科の最低限以上の知識を保持することは別物で、それをテストにぶつけることはまた別物です。
そして、それからもっと掘り下げて学ぶことも。
だから国家試験のリハーサルや各科適性の確認の側面もあります。

CBTや国家試験を受ける後輩には「インフルエンザにかかっても受かる準備はできているか?」といつも言います。

問題の詳細は分からなくても、試験のだいたいのシステムと出題範囲は変わらないので、勉強の仕方と試験でのスタンスが問われます。

こういう時に、運動部の一部の開き直りスタンスと危機管理能力は効くことがあります。

どんなに個人やチームが準備しても負ける時は負けるし、準備不足でも試合なりにベターを考えられるしたたかさが勝機を産む。

国家試験の会場では、テストの実力があってもプレッシャー負けしてしまう人もいます。
その中で、実力はなくても、精神力や戦略で原点を減らせる人もいます。

そういうのも、医師や医学研究者としての適性です。

受かっても、落ちてもラッキーと言える図太さが人生では必要になります。

「試合終了のホイッスルは、次の試合へのキックオフの笛である」
先日亡くなられた日本サッカーの父・デットマール・クラマーさんの言葉を最後に引用しておきます。

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