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レモン、加工品も人気…広島県尾道市
爽やかな香りと酸味が魅力のレモン。露地物の旬は秋から春にかけてだ。国内で収穫されるレモンの約6割は広島県産。中でも、尾道市の瀬戸田町地区は生産量が多い。
瀬戸田町地区は、瀬戸内海に浮かぶ
生口島で、かんきつ農家、原田悟さん(64)のレモン園を訪ねた。約140本の木に、緑から黄色へと変化し始めたレモンがたくさんの実をつけ、枝がたわむほどだ。「12月に入ると、どんどん黄色みが強くなる」と原田さん。収穫は手摘みで、枝には鋭いトゲがあるため、丈夫な牛革の手袋が手放せない。
広島県で栽培されているレモンの大半は、実の先端が少し突き出た品種「リスボン」だ。6月頃に実がなり始め、直径5~6・5センチほどに成長。まだ青々とした10月頃から出荷される。その時期は若々しい香りが特徴で、グリーンレモンとして人気という。
JA三原では、農薬の使用量を控えたレモンを「せとだエコレモン」としてブランド化し、原田さんら約200軒の農家が栽培に取り組む。一口かじってみると、果汁がこぼれ落ちるほどあふれた。酸っぱいが、思ったよりも優しい味わい。「黄色く熟すにつれ、果汁が増えていくんですよ」と、JA三原せとだ
地区でのレモン栽培の歴史は古く、1926年に商業栽培が始まったが、64年のレモンの輸入自由化で壊滅的な打撃を受けた。「島のレモンの木が次々に伐採された」と原田さんは振り返る。しかし、農家は農園の一角だけでもレモンの木を残しておこうと、「1アール運動」と名付け、栽培を続けていたという。
その後、輸入品の農薬等に消費者の厳しい目が注がれるようになり、国産品が見直された。75年頃から、再び栽培量が増えだした。2012年以降は、県が生産量日本一をアピールし、産地も断面が星やハート形のレモンを作るなどPRに力を入れた。
最近は、レモンを塩に漬け込んだ調味料「塩レモン」やレモン味の食品ブームで、需要が急増している。植えてから実るまで約7年かかるため、増産はたやすくはなく、「今や供給が追いつかないほど」と土井さん。
栽培には病気や害虫への注意と、こまめな除草が欠かせない。原田さんは、「安心して皮まで味わってほしい」と、いとおしそうにレモンを見つめた。
メモ レモンは、ずっしり重みのある方が果汁もたっぷりだ。保存は新聞紙などでくるみ、冷蔵庫へ。地元では、塩などあっさりした味付けの鍋料理に、具材を覆うほど大量の薄切りをのせた「レモン鍋」も親しまれている。
JA三原は、加工品も多く手がける。缶ジュースや粉末ジュースは、30年を超えるロングセラー商品。「塩レモン」や、地元の大学と共同開発した皮の砂糖漬けなどもある。
広島県産のレモンは全国に流通している。「せとだエコレモン」は、一部生協や大手スーパーなどが取り扱うほか、JA三原せとだ直販センター(0120・26・3051)から取り寄せできる。(二谷小百合)
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