予防医学研究者・石川善樹の「続けたくなる健康法」
yomiDr.記事アーカイブ
大統領になると寿命を縮める
こんにちは。
予防医学研究者の石川です。
少し前のことになりますが、アメリカで大統領選挙がありました。
普段から論文を読み過ぎているせいか、どんな事柄をみても、私の頭はそれと関連する何らかの研究がパッと出てくるようになっているのですが、その時に思い出した研究は以下のようなものでした。
「大統領になると、早く老化するか?:欧米17か国の首脳調査」
研究はコチラ→http://www.bmj.com/content/bmj/351/bmj.h6424.full.pdf
権威ある英国BMJ誌に掲載されたこの研究は、ハーバード大学のアヌパム・ジェナ准教授らによって行われました。1722~2015年の間に、欧米17か国で大統領や首相に選ばれた279人は、選ばれなかった261人と比べて寿命がどの程度違うのか調べたものです。
落選した人より2.7年短い寿命…研究結果

直感的には、一国の首脳に選ばれるということは、健康上はまったく異なる作用が同時に働きそうです。つまり、一般の人では受けることができない高度な医療を受けて長生きする作用と、多大なるストレスやプレッシャーから命を縮める作用です。
もちろん、両方とも働くのでしょうが、結果としてどちらの力が強く働くのでしょうか?研究によれば、次のような結論になったそうです。
「大統領や首相に選ばれた人たちは、その候補者たちより2.7年寿命が短くなった」
あまりに高い役職につくことは、不健康につながるといえます。でも、鋭い読者の方は、「それは話が違うじゃないか!?」とおっしゃるかもしれません。
はい、その通りです。私は以前のブログで、「地域で役割ある高齢者は長生き」という内容をご紹介させていただきました。たとえば老人会などで会長などの役職に就いた人は長生きするという内容だったのですが、この大統領の研究から推測するに、たとえ地域での役割であっても、あまりにストレスやプレッシャーが強い場合はむしろマイナスに働くかもしれませんね。
……でも、こうしてみていくと健康に関する情報は、本当にややこしいですね。あまりにケース・バイ・ケースすぎるというか、バランスが大事というか。どんなに薄い紙でも表と裏があるように、どんな健康法についても、おそらく必ず良い面と悪い面があるので、一概にこうと言い切ることが難しいです。
どんな健康法にも両面がある
例えば、老化やがんを引き起こすといわれる、活性酸素。テレビなどでもよく目にしますし、「活性酸素は体に悪い」ことは、もはや常識にすらなっているかもしれません。だからこそ、活性酸素から体を守ってくれる、ビタミンCやビタミンEが飛ぶように売れているのでしょう。
けれども、活性酸素は完全な悪者、ともいえないことが分かっています。一部の活性酸素は、がんの発生を抑える働きをしています。そのため、ビタミンEなどを飲んで活性酸素を抑え込んでしまうと、むしろ体に逆効果ということにすらなりかねないのです。
ビタミンEと前立腺がんの関係を調べた研究があるのですが、健康な男性約35,000人を対象に7~12年間追跡調査したところ、ビタミンEを摂取した男性は、そうでない男性に比べて、前立腺がんになる確率が17%高かったそうです。
研究はコチラ→https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4169010/
もちろん、この研究に対して突っ込むポイントはたくさんあるのですが、専門的な話になりすぎるのでここでやめます。どうしても知りたい方は、ぜひ疫学を学び、ご自身で判断してみてください。
うーん、なんだかまとまりのないブログになってしまいましたが、今後も懲りずにお付き合いいただけるとありがたいです。
それではまた次回!
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。