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[認知症のはてな](9)グループホーム、家庭的雰囲気

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入院、重度の要介護で退去も

[認知症のはてな](9)グループホーム、家庭的雰囲気
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 認知症になり、自宅で暮らすのが不安な場合の選択肢の一つに、グループホームがある。認知症の人たちが職員の支援を受けながら一緒に暮らす場だ。家庭的な雰囲気が魅力だが、 看取みと りへの対応などにはばらつきがある。

 東京都豊島区の住宅街の一角にあるグループホーム「四丁目の家」。ここでは、認知症のお年寄り18人が、2階と3階の二つに分かれて暮らしている。

 お昼時、入居者が居間に集まり、テレビを見たり、お茶を入れたりしてくつろいでいると、台所からみそ汁の香りがただよってきた。「ご飯ですよ」。職員が声をかけると、歩ける人はお盆に載った食事をテーブルまで運んだ。食後は食器を拭くなどの片づけもする。

 ■ 少人数で生活

 認知症の人のグループホームは、北欧で始まった形態で、国内では1990年代から開設が進んだ。今年8月現在、全国に約1万3000か所あり、約19万人が暮らしている。

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食後に食器を拭く入居者と職員(右)=東京都豊島区のグループホーム「四丁目の家」で

 少人数で顔を覚えられる環境の方が症状が落ち着く傾向があることから、5~9人ごとに共同生活を送る。寝るのは個室で、台所や居間、風呂などは共有。日中は、入居者3人に対し1人以上の職員がいる。自立した暮らしができるよう手助けするのが特徴で、掃除、洗濯などはなるべく入居者にしてもらい、職員は手伝いや見守りに努める。

 四丁目の家でも、入居者は毎日、職員と2人で買い物などに出かけているほか、要介護4と重度の人も、職員に両手を取ってもらいながら、ゆっくり自分でトイレに行く。宮川さやか施設長(38)は、「大規模な介護施設には車イスでトイレに連れて行ったり、オムツにしたりするところもある。ここには、少人数ならではの良さがある」と話す。

 入居者に暴言などの症状が出たら、前後の出来事を記録し、兆候はなかったか探る。例えば、症状の前に「1人で30分以上部屋にこもる」といった兆候があれば、居間に誘い出すなどの予防策を取る。こうした対処ができるのも認知症に詳しい職員がいるからだ。

 住み慣れた地域で暮らすため、グループホームの入居者は原則、同じ市区町村の住民に限られる。

 2年前に四丁目の家に入った男性(81)は、近くのアパートで一人暮らしをしていたところ、大家が認知症に気付いた。入居した当初は暴力的になるなどの症状がみられたが、近所の親しい人に老人会へ誘ってもらったり、備品の修理など得意な大工仕事を生かす機会を設けたりするうちに、次第に落ち着いていった。男性は「散歩すると、昔なじみの人と話せて楽しい」と穏やかな笑みを浮かべる。

 ■ 看取りが課題

 ただし、グループホームに入居する場合には、一般的に注意しておくべき点もある。重度の要介護状態になったり、医療が常時必要になったりした場合は、退去を求められるケースがあることだ。

 日本認知症グループホーム協会の昨年度の調査では、退去時の理由の半数が「入院」で、グループホームで亡くなった人は2割しかいなかった。特別養護老人ホームとは違って看護師の配置は義務でないため、たんの吸引などに対応できないところが多い。看取りへの対応は今後の課題だ。

 利用料は個別に設定されるが、介護保険によるサービスの自己負担(原則1割)と、家賃や食材料費、光熱費などを合わせると月15万円前後が一般的だ。一部に、入居時に敷金がかかるところもある。

 同協会は「入居を決める前には本人と家族で見学し、希望するケアが受けられるかどうかを確かめてほしい」としている。(田中ひろみ)

 (2016年12月25日 読売新聞朝刊掲載)

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