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宋美玄のママライフ実況中継

医療・健康・介護のコラム

特別養子縁組あっせん法成立 子供の幸せを最優先に

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特別養子縁組あっせん法成立 子供の幸せを最優先に

平穏なシルバニア家を破壊するゴジラ息子です

 娘の幼稚園が冬休みに入り、仕事の日は息子と同じ保育園に行ってもらっています。娘に「大人になったらどうして仕事をするの?」と聞かれたので、「仕事をしてお金をもらって食べ物やお洋服を買うんだよ。仕事をして自分でお金をもらえることで、言うことをきかないとお金をあげないぞって誰かに言われずにすんで自由なんだよ。あなたも大きくなったら、どうやってみんなの役に立つお仕事ができるか考えようね」と娘を保育園につれて行くことを思い切り正当化しておきました。社会が少しずつ見えてきているので、ごまかしが利かなくなってきているのを感じます。

マッチングのスピードは大事ですが……

 先日「特別養子縁組あっせん法」が成立しました。 今まで届け出制だった特別養子縁組のあっせんが、許可制になったというものです。

 予期せぬ妊娠をした人に多額のお金を渡して産んでもらい、子供を欲しがっている人の養子にするというNPOが人身売買のようだと批判されたことがあっせん法の成立を後押ししました。訳あって実の親が子供を育てられないケースの養子縁組は行政も行っていますが、マッチングがスピーディーではないということを不満に思っている人がいることもNPOの需要となっているようです。

 早く赤ちゃんが欲しいという人にとってはスピーディーさは大切なのだと思いますが、行政は親になりたいという人の適性を慎重に判断しているため、あまり適性でないと判断された人にはなかなか回ってこないという背景もあるようです。望んで養子縁組をしたものの、障害があったり育てにくかったりして子供を返してくる人も一定数いますので、子供のためを考えれば、望む人が誰でもすぐに縁組できるということが良いこととは言えず、慎重さが重要だと思います(実際にあっせんを行っている人に聞くと、「性別は選べるんですよね?」「病気があったら返せるんですよね?」と平気で聞いてくる人は決して珍しくないそうです)。

施設を悪者にした誘導は問題

 特別養子縁組を普及させようとしている人たちの中には、児童養護施設の悪い点を強調することで特別養子縁組に誘導しようという論調で話されている方を見かけます。愛着形成の観点から、一般的に子供は家庭で育つのが望ましいということには同意しますが、先述のように親になる人たちや家庭が理想的とは限りませんし、施設出身で立派に育った方を私は何人も知っています。いろんな事情の患者さんや妊婦さんに臨床で接しますので、個人的にはもっと眠っているマッチングはあると思っていますが、特別養子縁組を普及させたいがために児童養護施設を悪者にするのは軽率なのではないかと思っています。また、子供を望んで不妊治療することの延長線上の選択肢として特別養子縁組が語られることも多いようです。特別養子縁組にはそのような側面も実際にありますが、本来は子供が欲しい人を主体に考えるよりも、まずは子供自身の幸せと実の親がどうすれば育てていくことができるかということを主眼に考えるべきだと思います。

最後の手段に

 どうしても実親が育てられないケースや、生後すぐに虐待死してしまう赤ちゃんを救うために、特別養子縁組が普及することは望ましいと思いますが、子供を数でしか見ない「少子化対策」や、子供が欲しい人の選択肢を広げるために推進するということには違和感を覚えます。まずは、子供が実親の元で育てられるように支援を考え、最後の手段として特別養子縁組を普及させてほしいと願っています。

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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