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小泉記者のボストン便り

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日本の医療制度を海外に発信! 学生たちが奮闘中

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 今回は、ハーバード大学公衆衛生大学院で、学生から人気の日本ツアー「ジャパン・トリップ」についてご紹介します。約1週間かけて日本各地を巡り、医療や公衆衛生、文化などについて学ぶツアーは、日本の医療を世界にアピールすることや、日本で公衆衛生の分野に携わる若者を増やすことを目標に2006年に始まりました。開始から10年がたち、これまでに日本を訪れた外国人の学生は、200人以上にも上ります。来年3月に予定されている次回のトリップに向け、忙しい勉強の合間をぬって同大学院で学ぶ日本人学生たちが準備を進めています。

iPS細胞の臨床研究、周産期医療など盛りだくさん

 「このトリップでは、京都や箱根などで伝統的な日本の文化に親しみつつ、最先端の研究施設や、新生児死亡率が世界でも極めて低い日本の母子保健の仕組みを視察できる病院などを訪問して日本の公衆衛生について学ぶことができます」。11月29日に同大学院で行われた「ジャパントリップ」の説明会には約20人の学生が集まりました。

日本の医療制度を海外に発信! 学生たちが奮闘中

来年のトリップの説明会には、たくさんの学生が集まった

 今年度は、来年3月11日から約1週間の日程で、iPS細胞の臨床研究が行われている神戸市の理化学研究所や、大阪府立母子保健総合医療センター、厚生労働省、箱根の温泉街や京都など各地を巡る予定です。バランスのとれた日本食に興味を持つ学生も多いことから、学校給食を見る機会を設けたり、3月17日には公衆衛生に興味がある日本の学生らも参加できる公開シンポジウムを開催したりするなど盛りだくさんの内容です。準備を進める日本人学生たちは医師や行政職員など所属も様々で、それぞれの専門分野を生かしながら関係機関と調整をして視察地を決めています。

 説明会に参加したカナダ人の学生は、「日本の長寿の秘訣が知りたい。日本料理を味わうのもとても楽しみ」と話していました。今年度のトリップの代表を務めている同大学院修士課程、厚生労働省課長補佐の松本晴樹さんは、「日本の公衆衛生を世界に知ってもらうのはもちろん、日本の今後を考える若者にもたくさん参加してほしい」と意気込みます。

世界に誇れる日本の医療や公衆衛生

 ジャパントリップは、「世界に誇れる日本の医療や公衆衛生について色々な国の人に知ってもらいたい」という日本人学生の思いから生まれました。世界保健機関(WHO)によると、2015年の日本人の平均寿命は83.7歳、健康上支障なく日常を送ることができる期間を示す「健康寿命」も74.9歳といずれも世界一でした。新生児死亡率も出産1000人当たり0.9人と世界2位の水準でした。世界の平均寿命は71.4歳、健康寿命は63.1歳、新生児死亡率は19.2人だったことを考えると、日本の高い医療技術や、国民皆保険などの仕組みが日本の長寿を支えてきたといえると思います。

 日本政府も、日本の経験を通じて世界に貢献できるとして、健康や医療の分野を外交の重要な柱の一つを位置づけています。2015年には「平和と健康のための基本方針」を発表し、途上国を中心に、日本の皆保険システムのように全ての人が基礎的な保健医療サービスを受けられる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」の普及支援に力をいれる方針を示しました。UHCについては、国連が昨年採択した「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」にも目標の一つとして盛り込まれています。アジェンダは、貧困を撲滅し,持続可能な世界を実現するために「すべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」など2030年までに達成を目指す17のゴールを定めており、その手段の一つとして、UHCの普及が重要であることが指摘されています。今年、日本が議長国となった主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でも、UHCや高齢化などの保健医療分野が大きく取り上げられました。医療や健康は、日本が世界のお手本となって存在感を発揮する分野として期待されています。

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koizumi

小泉 朋子(こいずみ・ともこ)
2003年読売新聞東京本社入社。金沢支局、編成部を経て、2009年から社会部。10年から厚労省担当となり、生活保護受給者の増加の背景を探る「連載・生活保護」や認知症の人を取り巻く状況を取り上げた「認知症」などの連載を担当。13年から司法クラブで東京地・高裁、最高裁を取材し、「認知症と賠償 最高裁判決へ」「隔離の後に ハンセン病の20年」の連載など担当。2016年7月からハーバード大学公衆衛生大学院に研究員として留学中。

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