医療ルネサンス秋田フォーラム「家族が認知症になったら」
イベント・フォーラム
[医療ルネサンス秋田フォーラム「家族が認知症になったら」](1)「お互いさま」の精神で
「家族が認知症になったら」をテーマにした「医療ルネサンス 秋田フォーラム」が11月16日、秋田市の秋田市文化会館で開かれた。
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(愛知県 大府 市)の鳥羽研二理事長が「予防・治療から介護まで 最新情報」と題して基調講演を行った。その後、秋田県立リハビリテーション・精神医療センターの下村辰雄副センター長と、介護する家族の心構えや対応方法などについて話し合った。
主催 読売新聞社
後援 秋田県、秋田市、秋田県医師会、AKT秋田テレビ
コーディネーター 読売新聞東京本社医療部編集委員・館林牧子
予防、頭使って運動
■基調講演…国立研究開発法人国立長寿医療研究センター理事長・鳥羽研二氏
認知症は、とてもありふれた病気です。生涯で認知症になる確率は55%という研究結果もあります。昔のように特別な病気と考えるのでなく、お互いさまの精神で、認知症の人の気持ちをよく理解して、その上で予防に努めることが最も重要なことです。
症状には記憶力の衰えや日常生活が不便になるなどの「中核症状」と、暴言や 徘徊 といった「周辺症状」があります。今までできたことができなくなり、いらだちや羞恥心が起きます。家族の言葉で自尊心を傷つけられ、周囲の無理解への怒りもあります。家族はこうした患者の気持ちに早く気づくことで、やさしく接することができます。
予兆は、同じ話をしたり、探し物が増えたりすることなどです。年齢相応の物忘れと、軽い認知症は連続しています。放っておくと認知症になるケースは多く、早期発見が大切です。
認知症は一定程度、発症を遅くできることがわかってきました。運動不足や喫煙、知的活動が少ないことなどが危険性を高めるため、予防には頭を使いながら運動することが効果的。高齢者の人も今からでも遅くありません。週2~3回、30分~1時間でいい。テニスでもゲートボールでも、若いうちから頭を使いながら体を動かすような趣味に取り組むとよいでしょう。
薬には妄想などの症状がなくなる効果がある一方、転びやすくなるなどの副作用があります。発症してから良くなる薬の開発は難しいですが、発症を5~10年遅らせる薬が今後、出てくる可能性はあります。
大切なのはケアの方法です。認知症の人が約700万人になると見込まれる2025年度までの国の取り組みのひとつとして、専門医の指導を受けた看護師や保健師が自宅を訪問して相談や支援にあたる「初期集中支援チーム」が17年度末までに全市区町村に整備されます。お茶を飲んで顔なじみになって世間話から始めるわけです。介護負担が軽くなります。
昔話をすると脳が活性化されます。家族の場合、古い物を整理してひとつひとつ誰の物でいつ頃使ったか、何に使ったかお話ししましょう。家族が介護に疲れたら、高齢者が共同生活するグループホームで対応の良い所を選んで、任せればいいと思います。
認知症の人や家族を見守るボランティア「認知症サポーター」は800万人を超えました。認知症の人の話を、人間に代わってずっと聞いてあげる傾聴ロボットも期待されています。
症状が重くても、切り絵や習字など、その人が好きなことをやっている間は薬もいらず、穏やかです。その人の楽しいことを見つけてあげることが大切です。
新しい治療法の開発が進められています。地域や家庭では何とか工夫しながら踏ん張ってほしいと思います。
◇ とば・けんじ 65歳。長野県生まれ。東京大学医学部卒業後、杏林大学医学部高齢医学主任教授などを経て、2015年から現職。日本認知症学会理事なども務める。
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